人工知能を応用しスポーツ動作の相違を高精度で判定 - PR TIMES|RBB TODAY
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人工知能を応用しスポーツ動作の相違を高精度で判定

人工知能(AI)の物体認識技術を応用したスポーツのパフォーマンス分析法を開発しました。この方法を2名のテニスのサービス動作に対して用いたところ、一定の精度で、動作の類似性や相違性を判定できることが確認されました。

スポーツにおける動作の分析(パフォーマンス分析)は、選手や指導者が目視で行うことができますが、このような分析結果は、主観や経験に左右される可能性があります。そこで本研究グループは、人工知能(AI)の物体認識技術の応用を着想しました。近年、動画上の人の動作の奥行まで推定できる技術が開発されています。これにより動作間の類似、相違点を抽出し、コーチングに役立つ情報をフィードバックできる可能性がありますが、これまで、そのような報告は見当たりませんでした。
本研究では、AIによるパフォーマンス分析法を開発し、テニスのサービス動作を例に、分析の精度を調べました。この分析法は、対象とする動画をAI技術の実行環境に取り込み、類似した局面の抽出と動作が相違している骨格部位の評価を行うものです。
分析対象の動画として、テニス経験者2名を対象に、サービスの位置や打ち方の組み合わせによる4条件を撮影しました。これらを掛け合わせて、同一選手の動作および異なる選手間の動作の比較を行いました。その結果、70%以上の精度で動作の類似性を抽出できることが分かりました。また、選手間で動作が異なる骨格部位の評価は、日本スポーツ協会公認コーチによる評価とよく合致していました。
本分析法により、選手や指導者が着目すべき点が明確になり、技能向上につながると期待されます。

研究代表者 
筑波大学体育系
 三橋 大輔 准教授
株式会社電通総研
 里中 裕輔
大阪教育大学表現活動教育系
 神藤 隆志 特任講師(研究当時:筑波大学体育系 特任助教)
研究の背景
スポーツにおける動作の分析(パフォーマンス分析)は、技能向上のために重要です。理想的な動作と自身とを比べ、どこが類似、相違しているのかを知ることで、改善すべきポイントを把握することができます。
パフォーマンス分析は、選手や指導者が目視で行うことができますが、そのような分析結果は主観や経験に左右される可能性があります。そこで本研究グループは、人工知能(AI)の物体認識技術の応用を着想しました。AIによる分析では、人の骨格位置を推定し、その動きを明らかにします。近年、動画上の人の動作の奥行まで推定できる技術が開発されています。この技術により、動作間の類似、相違点を抽出し、コーチングに役立つ情報をフィードバックできる可能性がありますが、これまでの研究では、ショットがサービスかストロークであるかという分類に留まっており、コーチングに役立つ分析法は提案されていませんでした。そこで今回、同じショット内でどの骨格部位の動作が異なるかという、コーチングに役立つパフォーマンス分析法の開発を試みました。
研究内容と成果
本研究では、AIによるパフォーマンス分析法を開発し、テニスのサービス動作を例に、分析の精度を調べました。テニスのように動作の試行回数が多いスポーツでは、まず動画全体から関心のある動作の局面を抽出し、その上で、動作が相違している骨格部位を評価できる分析法が有用であることを踏まえて、分析法とその活用の流れを立案しました(図1)。
本分析法では、分析対象の動画を2本用意します。1つは基準となる動画で、対象のショットの理想的な動作の局面などを想定しています。もう1つは比較動画で、動作を評価したいショットの複数回の試行を含むものです。これらの動画をAI技術を実行するプログラミングコードの実行環境に取り込み、類似した局面の抽出と動作が相違している骨格部位の評価を行います。
分析対象の動画として、テニス経験が10年以上ある2名を対象に、デュース(右)およびアドバンテージ(左)サイドからのファーストおよびセカンドサービスの4条件について、各選手5試行ずつを撮影しました。これらを掛け合わせて、同一選手の同一条件および異なる条件間の比較と、異なる選手間の比較を行いました。その結果、類似局面(動作の類似性)の抽出では一定の精度(70%以上)が確認されました。さらに、本分析法による動作が相違している骨格部位の評価は、12条件中8条件で、日本スポーツ協会公認コーチの評価とよく合致していました(図2)。
このように、本研究で開発したAIによるパフォーマンス分析法は、一定の精度で、選手間の類似および相違した動作を判定できることが示唆されました。これにより、選手やコーチが着目すべき点を明確にし、技能向上につながると期待されます。
今後の展開
今回開発した分析法では、精度が低い条件もあったため、今後、さまざまな場面を対象に、さらに試行錯誤を繰り返していく必要があります。これにより、テニスのみならず、他のスポーツや、体育授業におけるICTの活用にも貢献することが期待されます。

ご参考資料
参考図

図1 本研究で開発したパフォーマンス分析法の概要図

この分析法では、基準動画と比較動画の2本をプログラミング言語pythonのプログラミングコードのオンライン上の実行環境に取り込み、類似した局面の抽出と動作が相違している骨格部位の評価を行います。このプログラミングコードは下記よりダウンロード可能です。
https://drive.google.com/drive/folders/11UG48uyxXfjIUTE6v5YGk9eZ109WRPdU?usp=sharing


図2 AIと人の評価の比較イメージ

研究資金
本研究は、筑波大学体育系ヒューマン・ハイ・パフォーマンス先端研究センター(ARIHHP)(2022(I)6)、科研費若手研究(22K17747)の助成を受けて実施されました。また本研究は、筑波大学と株式会社電通総研との共同研究契約に基づいて実施されました。
掲載論文


* 電通国際情報サービス(ISID)は、電通総研へ社名を変更しました。
* 本リリースに記載された会社名・商品名は、それぞれ各社の商標または登録商標です。

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