株式会社三菱総合研究所（代表取締役社長：籔田健二、以下 MRI）が特許庁の委託で実施した「令和６年度 中小企業におけるデザイン経営の効果・ニーズに関する調査」報告書が4月21日に公開されました。本調査では、デザイン経営支援プログラムに参加した中小企業90社超を対象に、デザイン経営の実践がもたらす変化や成果を明らかにし、実践する企業に共通して見られる3つの効果の発現プロセスを「デザイン経営の効果発現モデル」として体系化しました。
1. 背景
2018年に経済産業省と特許庁が「デザイン経営」宣言を発表して以降、全国各地で、経済産業局や地方自治体などの支援機関による、企業のデザイン経営を後押しする取り組みが広がっています。しかし、デザイン経営は成果が見えるまでに時間を要し、その価値を客観的に示すことが難しいため、支援現場では「説明力のある普及」が課題となってきました。また、デザイン経営とは具体的に何に取り組むものなのかが企業に十分に理解されず、その有効性に懐疑的な見方や、関心はあっても実践には至らないケースが多く見られます。
こうした背景を踏まえ、本調査では、デザイン経営が企業内部の変化を引き起こす非財務的な効果に注目し、それが企業の持続力向上につながるプロセスを「デザイン経営の効果発現モデル」として提示しました。本モデルは、企業における実践の後押しや、支援者による説明・評価の補助ツールとして活用されることを意図しています。
2. 概要
デザイン経営の効果発現モデル本調査では、経済産業局や地方自治体が提供するデザイン経営支援プログラムに参加した中小企業90社超を対象に、多くの企業に共通して見られた３つの効果が、どのような取り組みを通じて発現するのかを体系化し、「デザイン経営の効果発現モデル」として整理しました。
デザイン経営の効果発現モデル
出所：特許庁「令和６年度 中小企業におけるデザイン経営の効果・ニーズに関する調査」報告書より三菱総合研究所作成
デザイン経営の３つの効果
調査対象となった多くの企業において、共通して見られた主な効果は以下の3点です。
１. 自社らしさの明確化
経営者が自社の個性や強みを再認識し、「自社らしさ」を言語化して社内外に発信することで、企業変革の方向性が明確になり、組織内に共感やビジョンが共有される。
２. 人材の採用と定着化
経営者が自社の魅力を言葉で表現し、従業員が共感・主体的に行動することで、人材の採用や定着につながる組織文化が醸成される。
３. 新しい仕事の創出
自社の強みと意思が融合し、顧客やパートナーとのつながりが深まるなかで、新しい事業や商品コンセプトが自然と生まれてくるようになる。
加えて本報告書では、今後の支援制度設計や知財活用のあり方への示唆とすべく、デザイン経営と知的財産との関係性、デザイン経営を継続している経営者像や企業の状況、支援プログラムの詳細も整理し、実践促進に向けた包括的な知見を提供しています。
3. 今後の予定
MRIはこれまで、公益財団法人日本デザイン振興会との共同研究や各種委託調査を通じて、企業におけるデザイン経営の実践状況やその効果、支援のあり方に関する知見を蓄積してきました。これらの取り組みにより、デザイン経営が企業の共創力や競争力を高め、持続的な価値創出を実現する重要な経営手法であることを確認しています。今後は、こうした知見を、企業の経営ビジョンやパーパスの策定、中期経営計画の立案、ブランディング、新規事業開発といった経営コンサルティング領域へ横断的に活用し、より高い付加価値の提供を目指します。
今後も関係機関との連携や実践的な調査活動を通じて、企業が自社の個性や強みを起点に、顧客や地域との関係性を深めながら新たな価値を生み出すプロセスを支援し、日本の産業競争力強化と経済の持続的発展に貢献します。
参考
「令和６年度 中小企業におけるデザイン経営の効果・ニーズに関する調査」報告書
発行者： 特許庁
制作： 株式会社三菱総合研究所 DESIGN ×CREATIVE TEAM
山越理央、町田匠人、豊田陸
制作年月日： 2025 年3月21日
ＵＲＬ：中小企業におけるデザイン経営の効果に関する調査～見えてきた3つの効果～
https://www.jpo.go.jp/introduction/soshiki/design_keiei/kouka.html
本件に関するお問い合わせ先
株式会社三菱総合研究所〒100-8141 東京都千代田区永田町二丁目10番3号
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