韓国・釜山(プサン)で起きた女性転落死事件をめぐり、被害者遺族が韓国の公共放送KBSに対応を求めた。
その理由は、加害者の姉とされる女優が、現在KBSのドラマに出演しているためだ。
ただし、遺族が直接求めたのは「女優を降板させてほしい」ということではなかった。
遺族がKBSに問いかけたのは、加害者の姉とされる女優が同曲のドラマに出演している事実を把握していたのか、そして公共放送としてどのように対応するのかという点だった。
ところが、KBSが示した回答の軸は少し異なっていた。家族の問題を理由に、出演者本人へ不利益を与えることはできないという趣旨だった。

9月3日、韓国の公共放送KBSの視聴者請願掲示板には、「釜山オフィステル転落死の遺族です」という請願が投稿された。
遺族は、「無念にも愛する娘を失った。娘は、加害者の執拗なストーカー行為に悩まされ続けた末に、結局無念の死を遂げた」と訴えた。
続けて、加害者の姉が現在、KBSの夜の連続ドラマに重要な役で出演していると主張した。
遺族は「私たちの娘は無念の死を遂げたのに、加害者家族の娘は女優として順調に活躍している」とし、一方では娘を失った両親が崩れ落ちるような苦しみを味わっているなか、もう一方では日常が続いている現実がつらいと綴った。
しかし、請願文の最後まで「女優を降板させてほしい」という直接的な要求は確認できない。
この請願はわずか1日で回答基準となる1000人以上の同意を集め、最終的に1260人が賛同した。
KBSは9月16日、公式回答を発表。まず、故人と遺族に哀悼と慰めの意を示した。
そのうえで、番組のキャスティング過程では、出演者本人の犯罪歴や社会的問題の有無については確認するものの、出演者の家族に対する事前調査は行っておらず、現実的にも実施は難しいと説明した。
さらに、韓国憲法第13条第3項を根拠として挙げた。同項は、本人の行為ではない親族の行為を理由に不利益な処遇を受けないよう定めている。
KBSはこれを根拠に、出演者が加害者の家族だという理由だけで、別途措置を取ることは難しいとの立場を示した。
結果として、遺族の質問とKBSの回答の間には隔たりが生じている。遺族が尋ねたのは、加害者の姉とされる女優が出演している事実をKBSが把握していたのか、そして公共放送としてどう対応するのかという点だった。
一方、KBSは、家族であることを理由に出演者本人へ不利益を与えることはできないという原則を前面に示した。
そのため、その後の多くの報道では今回の請願が「女優の降板要求」「降板請願」などと表現された。しかし、KBSの公式請願原文には、女優の降板を直接求める文言は確認されていない。
なお、事件は2024年1月、釜山鎮(プサンジン)区のあるオフィステル(業務を主な目的としながら、賃貸区画の一部で生活できる建物)で発生した。
当時20代の女性が元交際相手のA氏と口論中にオフィステルから転落し、命を落とした。捜査の過程で、A氏が被害者に暴行やストーカー行為をしていたことが明らかになり、特殊脅迫、脅迫、器物損壊、退去拒否、ストーカー処罰法違反などの罪で起訴された。
一審では、A氏に懲役3年6カ月とストーカー行為治療プログラム40時間の履修を命じたが、控訴審では懲役3年2カ月に減刑された。



