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突然この世を去った元大統領を“ネタ化”、命日公演は中止に 韓国ラッパーが謝罪「ただ有名になるために」

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突然この世を去った元大統領を“ネタ化”、命日公演は中止に 韓国ラッパーが謝罪「ただ有名になるために」
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「ただ有名になるために、故人を嘲笑してきた」

韓国の若手ラッパーが、自筆の謝罪文でそう認めたことが、大きな波紋を呼んでいる。

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問題となったのは、ラッパーのリッチ・イギ(Rich Iggy)が5月23日に予定していた公演だ。5月23日は、盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領の命日である。

しかも、公演開始時刻は午後5時23分。チケット価格は5万2300ウォン。日付、時間、金額のすべてに「5・23」を連想させる数字が並んでいた。

韓国ではこれが、単なる偶然とは受け止められなかった。

なぜならリッチ・イギはこれまでも、自身の楽曲で盧元大統領の実名や、その死を連想させる表現を繰り返し使ってきたとされているからだ。

そして最終的に、今回の公演は中止された。本人は謝罪し、出演予定だった有名ラッパーたちも相次いで頭を下げる事態となった。

リッチ・イギ
(画像=リッチ・イギSNS)

なぜ「5月23日」がここまで重いのか

騒動の前に、まず盧武鉉元大統領という存在から説明する必要があるかもしれない。

盧武鉉氏は、韓国第16代大統領を務めた人物だ。庶民派、改革派の政治家として強い支持を集めた一方で、保守層からは激しく批判され、退任後も韓国政治の対立を象徴する存在であり続けた。

その盧元大統領は、2009年5月23日に突然この世を去った。享年62歳。その突然の死は支持者にとって大きな傷として残っている。

つまり5月23日は、盧元大統領を追悼する人々にとって、今も重い意味を持つ日だ。その日に合わせるように公演を開き、開始時刻やチケット価格まで「523」にそろえたように見える企画が出てきたことで、批判が爆発した。

盧武鉉元大統領
(写真=盧武鉉財団Instagram)盧武鉉元大統領

人々が怒ったのは、日付や金額だけではない。リッチ・イギは過去の楽曲で、「ノ・ムヒョンのようにjump」「フクロウ岩から落ちろ」といった、盧元大統領の死を直接連想させる表現を使っていたと報じられている。

そのため今回の公演は、単なる不謹慎な偶然ではなく、過去の故人嘲笑の延長線上にある企画と見なされたのだ。

この問題を理解するうえで、避けて通れないのが「イルベ」的な文脈だ。

「韓国の2ちゃんねる」とも呼ばれるイルベは、韓国の極右・嫌悪系ネットコミュニティとして知られる「日刊ベスト貯蔵所」の略称。韓国では長年、盧武鉉元大統領を嘲笑する隠語やミームが、この種のネット空間で消費されてきた。

盧元大統領の名前をもじる表現、死を連想させる言葉、特定の数字やしぐさ。そうしたものが、ネット上の“わかる人にはわかるネタ”として使われてきた経緯がある。

リッチ・イギという活動名についても、韓国ではイルベなどで盧元大統領を嘲笑する際に使われる語を連想させるとの見方が出ている。ただし本人は、米ミュージシャンのイギー・ポップに由来すると主張しているため、ここは断定できない。

今回の公演のポスターにも、韓国ネット上では「イルベ系のサインではないか」と疑う声が向けられた。人物が見せる不自然な手の形も、その文脈で見られた可能性がある。ただ、主要な問題は、日付、開始時間、チケット価格、過去の歌詞、そして命日公演という構図そのものだった。

リッチ・イギ公演のポスター
リッチ・イギ公演のポスター

ネットの片隅で消費されてきた故人嘲笑ミームが、実際の音楽公演という現実の場にまで出てきたことに、この騒動の深刻さがある。

盧武鉉財団が強硬対応

これに対し、盧元大統領の記念事業などを行う「人の住む世の中 盧武鉉財団」は、強く反発した。

同財団は、5月23日という命日、午後5時23分という開始時刻、5万2300ウォンというチケット価格などが、故人を侮辱する意図的な企画であると判断。主催側に対して、公演の即時中止、書面での説明、公式謝罪を求める公文を送った。

さらに、主催側が公演を取りやめない場合、ソウル中央地裁に公演禁止仮処分を申請する準備まで進めていたとされる。

公演会場であるソウルの延南(ヨンナム)スペース側も、最終的に公演不可を通告した。

会場側は、当初はミュージシャンたちの団体公演という内容だけを聞いて貸館契約を進めたが、盧武鉉財団からの情報提供を通じて、公演ポスターや出演者をめぐる論争を確認したと説明している。

そして、特定個人や集団への嫌悪・侮辱表現、社会的葛藤を助長する恐れのあるコンテンツは志向しないとして、公演中止の判断を下した。

こうして、リッチ・イギの公演は実現しなかった。

批判が広がると、リッチ・イギは自身のSNSに謝罪文を掲載した。彼は、「盧武鉉市民センター」を訪問し、謝罪文を届けたと明かしたうえで、財団や遺族に向けて謝罪した。

特に重かったのは、自筆の謝罪文の中で「デビュー初期から最近に至るまで、自分の音楽と歌詞を通じて故人を嘲笑し、侮辱する、大衆や遺族の方々から見れば眉をひそめざるを得ない言動を、ただ有名になるために繰り返してきた」と認めた点だ。

さらに、「分別がなく、ただ面白半分でやったという言葉は言い訳にすぎない」とし、今後は故人を嘲笑したり、名前をもじったり、誤った方向で言及したりしないと約束した。

問題は、リッチ・イギひとりで終わらなかった。

この公演には、韓国で名を知られたラッパーたちも出演予定者として並んでいた。そのため、批判は出演予定だった先輩ラッパーたちにも及んだ。

パロアルト(Paloalto)はSNSを通じて、故人を嘲笑したり、嫌悪的に受け止められたりする表現に同意しないとしたうえで、これまで音楽的交流の意味でリッチ・イギの作業に参加してきたが、表現の問題性や、それが誰かに与える傷について十分に考えられなかったと謝罪した。

パロアルト
(写真提供=OSEN)パロアルト

ディープフロー(Deepflow)も、「数字の意味をまったく知らなかった」と説明しながらも、プロとして、また業界の古参として、自分のナイーブさに大きな責任を感じていると述べた。

今回の騒動は、若手ラッパーひとりの炎上ではなく、韓国ヒップホップ界全体に「なぜ誰も止められなかったのか」という問いを突きつけるものになった。

表現の自由ではなく、故人への侮辱

今回の問題をめぐっては、「これはヒップホップの過激な表現なのか」「表現の自由なのか」という見方も出るかもしれない。

だが、韓国の反応はかなり厳しい。音楽評論家からも「このようなものを表現の自由やヒップホップの特性として受け入れることはできない」という趣旨の批判が出ている。

その理由は明確だ。政治家への批判と、故人の死を嘲笑することは違う。権力者を風刺することと、遺族や支持者の傷を何度もえぐることは同じではない。

しかも今回の場合、盧元大統領の命日を思わせる数字を公演の日時や価格に使用した。これは偶発的な歌詞の一節とは違い、企画全体が故人を連想させるよう設計されていたと受け止められても仕方がない。

盧武鉉財団も、今回の件を単なる個別の炎上とは見ていない。

財団は、最近起きたスポーツ中継の故人を侮辱するような字幕騒動や、企業の歴史認識をめぐるマーケティング論争にも触れながら、オンラインの嫌悪文化が社会全体に浸透している深刻な兆候だと指摘した。

つまり問題は、一人のラッパーが不謹慎だったというだけではない。ネット上で消費されてきた嫌悪や嘲笑が、音楽、広告、スポーツ中継、公演企画など、現実のコンテンツの中に入り込んでいることが問題視されているのだ。

今回の公演中止は、その境界線を韓国社会が引き直した出来事ともいえる。

元大統領の命日を数字でなぞり、過去の死をからかう歌詞と結びつけ、チケット価格や開始時刻にまで落とし込んだ。その露骨さが、多くの人に「これは表現ではなく、故人への侮辱だ」と受け止められたのだ。

表現の自由は、他者の尊厳を傷つける自由ではない。とりわけ、亡くなった人の死を笑いの材料にし、その遺族や支持者の傷を踏みにじるような企画が、公演として成立してよいのか。今回の中止劇は、韓国社会にその問いを突きつけた。

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《スポーツソウル日本版》
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