正しい評価を得るためにも広告モデルは採用しない— モブキャスト藪考樹氏インタビュー(後編) | RBB TODAY
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正しい評価を得るためにも広告モデルは採用しない— モブキャスト藪考樹氏インタビュー(後編)

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正しい評価を得るためにも広告モデルは採用しない— モブキャスト藪考樹氏インタビュー(後編)
  • 正しい評価を得るためにも広告モデルは採用しない— モブキャスト藪考樹氏インタビュー(後編)
 ブロードバンドと携帯電話向けに映像コンテンツを配信するモブキャストは、携帯電話向けゲームも手がける。ゲームと映像という二本柱を持つ意図はどこにあるのか。モブキャスト藪考樹氏インタビューの後編である。

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A:映画の著名・ベテラン監督に、ブロードバンド向けに本気で作ってもらうことに意義があるというのがあってですね。

Q:どっぷりの人に、あえて作ってもらう?

A:篠原(哲雄)さんはまさにそれに当てはまる人で、学校の階段2の企画段階で何度もブロードバンドの可能性やモバイルの可能性について説明し理解して頂きました。たぶん……(笑)
 クリエイタにとっては、作ったものをより多くの人に見てもらいたい。でも、ハリウッド映画はともかく、邦画を観に行く人はもう少ないですよね。100億かけて作った映画と10億かけて作った映画が同じ1,800円だったら、100億の方に行っちゃうわけで。そこをブロードバンド配信を機に変えていきたいという思いがすごくある。
 パソコン1台1台をスクリーンと考えたら、今でも10億スクリーン。マーケットはあるんです。日本映画は、アメリカ・ヨーロッパで映画館で流してもらう可能性よりも、ブロードバンドの方が可能性は断然高い。今は地道に1,000万円で作ってますけど、いずれ会員が増えていけば10億、100億のハリウッドに負けない映画を邦画から作れるようにしていきたいんです。

Q:出てもらいたい俳優さん、あるいは一緒に仕事をしてみたい監督さんというのはいますか?

A:テレビCMの監督に本気で参入してもらいたいですね。1分で切ってるということになると、CMというのがやっぱり共通なキーワードで浮かぶわけなんですけど。「ため息の理由」の井上春生監督はCM監督ですが、彼に限らず、テレビCMの監督にどんどん企画を出してもらいたい。スタイリッシュで印象的な映像を作らせたら、もう彼らはピカイチですね。
 あとは北村さん。もともと北村さんに手伝ってもらっていたのもあるんですが、本当に大好きなので。邦画ほとんど観なかったんですけど、北村さんと出会う1週間前に偶然、「VERSUS」という映画をDVDで観て、こんなの作れる監督が日本にいたのかって思ったんです。

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Q:モブキャストさんのもう一つの柱、携帯電話向けゲームについてはいかがでしょう?

A:ゲームの方はmobGameとして展開しています。auで12月に「早撃ちガンマン」というゲームをリリースしたんですが、何の宣伝もしていないのにauだけで5万ダウンロードを超えた、といったものもあります。
 今年度、全キャリア合わせて100コンテンツ、タイトル数でいうと大体30タイトル出す予定になっています。A企画とB企画という2つの流れがあって、A企画は、岡本さんを筆頭にゲーム業界のトップクリエーターが携帯向けに本当にゲームを本気で作ってもらうというものです。
 先日リリースした大型RPG「NIGHT HEAD」は、1,000万のコストをかけて大作で、岡本さんが飯田譲治監督原作の「NIGHT HEAD」をゲーム化したものです。次も同じような形で、大ヒットした日本映画のタイトルで、その世界観を拡充してゲーム化していきます。9月にリリースする予定です。A企画については、3か月に1本、こういったRPG系で出していく予定です。年内はあと1本ですね。
 もうひとつのB企画は、専門学校の学生1000人と開発会社が3社あって、毎月40〜50件の企画が上がってくる中から岡本さんや僕達が検証して、ゲーム化していくっていうスキームになっています。

Q:モブキャスト全体のビジネスにおいて、ゲームビジネスと映像ビジネスっていうのは一見別物に見えるけれども、実は両者の中で非常にシナジーが効いているという形ですね。

A:そうですね。

Q:参考というか、意識している企業というのはあるんですか?

A:よく言われるんですけど、特にないですね。

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Q:携帯のゲームサイトのmobGameのあたりと、min.Jamなり携帯映像配信の方を連動する企画はあるんでしょうか?

A:今後はしていきたいですね。本当は「山手線デス・ゲーム」もゲーム化しようと思っていたんですが、いくつかあった企画はモブキャストのクオリティチェックで落ちてしまったんです。無理やりゲーム版「山手線デス・ゲーム」を作るんではなくて、モブキャストらしさをちゃんと追及したゲームができれば良かったんですけど、それができなかった。非現実性のあるストーリーのmin.Jam作品であれば、ゲーム化は常に考えているところです。非現実性の作品じゃないとゲーム化ってできないじゃないですか。

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Q:収益の部分ですが、拡大あるいは変化させていくというような計画はありますか?

A:やっぱり今はブロードバンド、モバイル、セルDVDなんですけど、最終的には自社サイトを立ち上げて溜めていきたいですね。

Q:自社サイトで蓄積・配信して、自社サイトで課金していくわけですね。

A:そうです、課金したい。広告モデルにはしたくないんです。無料配信というのは、ユーザーからの正しい評価を得られないんですよ。それが何年も続いていってしまったら、テレビみたいになっちゃうと思うんですよ。無料だから見るかなというふうになってしまうと悲しいですからね。

Q:なるほど。テレビのビジネスモデルは、見る人から直接お金をもらわずに、制作して、まずタダで配ってしまう。

A:結局タダなんで、テレビ局の都合に合わせて仕事早く終わらせて9時に帰って“月9”見るだとか、そういう生活のスタイルまで決め付けられちゃう。ブロードバンドはいつでもどこでも楽しめるものであり、私たちはお金を払ってもらえるコンテンツを作り続けていくしかない、ということだと思っています。

Q:あえて課金にこだわっていきたい、と。これはいいですね。

A:書いてください、ぜひ皆そうして欲しいって(笑)

 映像を見る手段として広告を見るっていうのは、習慣化されちゃってるんで当り前になってると思うんですけど、ほんとは間違っていると思っています。他のビジネスではそんなことないですよね。薬屋さんに薬買いに行って、何か他のものを勧められることはない。映像を観るという目的と手段がちょっとずれてるっていうか、おかしな仕組になっているんですよね。

Q:おっしゃるとおりですね。ブロードバンドのコンテンツ業界にいらっしゃる方は勇気持つんじゃないかなと思います。ありがとうございました。

(聞き手はIRI-CT代表取締役 宮川洋)
《RBB TODAY》
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