イー・アクセスのポイズンピルは「株主を守るもので、経営陣を守るものではない」 | RBB TODAY
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イー・アクセスのポイズンピルは「株主を守るもので、経営陣を守るものではない」

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 イー・アクセスは12日、2005年3月期の決算発表に合わせて、将来において同社への敵対的企業買収が行われた場合の対抗策となる「企業価値向上新株予約権(eAccess Rights Plan)」を発行する方針であることを明らかにした。同日午前の取締役会において、6月の株主総会に提案することが議決された。これは、最近良く聞くようになった「ポイズンピル(毒薬条項)」にあたるものだ。

 ポイズンピルとは、あらかじめ既存株主を対象として、敵対的買収が仕掛けられた場合に行使できるという条件つきの新株予約権を大量に発行しておくものだ。新株予約権を行使して株券を得るための価格は、一般的には市場価格より大幅に安価に設定される。実際に敵対的買収が仕掛けられた際にそれが行使されると、株式の発行総数が一気に増加するため、買収を企図する者の株式保有率(議決権割合)を下げられ、買収を企図する者が再び保有率を上げようとすると莫大な費用が必要になるという仕組みだ。

 敵対的買収に対抗しての新株予約権の発行というと、ニッポン放送がライブドアからの敵対的買収に対抗してフジテレビに新株予約権を付与しようとした事例が思い浮かぶが、あのケースでは買収を仕掛けられた事後策として対応したものであり、予め仕込んでおくポイズンピルには当たらない。またあの場合は、特定の相手にだけ大量の新株予約権を発行しようとしたことで、買収者はもちろん、それ以外の既存の株主にも希薄化(新株発行による既存株1株あたりの利益の低下)がおよぶ点が問題とされ、実施できなかった。

 あらかじめポイズンピルを仕込む場合にも、新株予約権を「誰に」割り当てるのかが難しい点と言える。たとえば決算期末時点での株主とした場合、それから買収が仕掛けられるまでの間に新たに株式を取得した株主には新株予約権が割り当てられず、不公平が生じる。だからといって、買収が仕掛けられた時点の株主を対象としてしまえば、買収を企図する者も含まれてしまい、ポイズンピルの実効を失う。

 eAccess Rights Planでは、こうした問題に対して、

・あらかじめ、買収者は行使できない規定としておく
・新株予約権の全量を信託銀行に信託譲渡して、実際には発動を決める際に定める基準日時点の(買収者以外の)株主に割り当てる

という独特の方法によって対処しているのが特色だ。

 なお、eAccess Rights Planにおいては、新株予約権は保有1株につき1個が付与され、発動した場合には新株予約権1個あたり1.5株を購入できる。購入価格は直前5日間の終値を平均したものの5分の1とされている。

 また、eAccess Rights Planでは、新株予約権の行使プロセスについても厳密に規定している。実際に買収などが仕掛けられた場合には、社外取締役のみによる委員会が組織され、買収の内容や影響を検討し、企業価値を毀損するようなものであれば発動し、そうでなければ、すなわち買収を受け入れることが既存株主にとっても利益になると判断した場合には、新株予約権を消却するというものだ。同社は現在10人の取締役がいるが、会長兼CEOの千本倖生氏、社長兼COOの種野晴夫氏、副社長兼CFOのエリック・ガン氏の3人だけが社内で、ほか7人は社外取締役となっている。

 こうしたことから、千本会長は「社外取締役は株主の利益を代表する立場。eAccess Rights Planは、あくまでも濫用的な買収から企業価値と既存株主を守るためのものであり、決して今の経営陣を守るためのものではない」と強調した。
《小笠原陽介》
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