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【ニュース解説】ネットのヘビーユーザに従量課金もしくは帯域制限は必要?

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P2Pトラフィックに関する分析資料
  • P2Pトラフィックに関する分析資料
 総務省は20日、「ネットワークの中立性に関する懇談会」の最終報告書を公開した。

 この懇談会は、インターネットのサービスや市場が複雑化、多様化することに伴い、ネットワークのインフラを受け持つ企業、サービスを提供する企業、サービスを受けるユーザーのそれぞれにとって中立な市場や競争ルールを検討するために設置された。第1回の会合は2006年11月に開催されている。

 最終報告書では、増え続けるネットワークトラフィックを処理するため、主にコスト負担という視点でのルールづくりの指標と、NGNにおいて競争原理を損なわないネットワークを構築するための提案がまとめられている。

 コスト負担というのは、通信事業者がサービスプロバイダへインフラを開放せず市場をコントロールしている、サービスプロバイダはユーザーからの収入をネットワークインフラの整備等に還元していない、一部のヘビーユーザーがトラフィックを過渡に消費している、といった問題をどう折り合いをつけるかということだ。その中で、問題視されているのは、ファイル交換ソフトによる個人ユーザーのトラフィックの消費だ。通信事業者やサービスプロバイダの問題については、この懇談会以外でも取り組みがなされているが、個人ユーザーの中立性はあまり論じられることが少なかった。報告書添付の資料によると、P2Pベースのファイル交換ソフトによるトラフィックは、日本全体の総トラフィックの半分を占めているという。このために必要な設備投資を事業者、提供者側に負担させるのは合理性に欠くというわけだ。

 だからといって、すぐにヘビーユーザーに課金するわけにはいかない。技術的にも、通信の秘密といった問題からも、特定アプリや特定ユーザーに相応の負担を強いることは現実的ではないと報告書でも述べている。また、従量課金だけにまかせると、プロバイダや通信事業者が、料金設定ごとのサービスや帯域を高額プランへの誘導のためにコントロールする恐れもある。そもそも、行政は市場に介入すべきではないとも述べている。

 ただし、緊急避難的な混雑時や異常なトラフィックについては、個人ユーザーにも帯域制限を課すことの妥当性は否定できないと、その可能性について報告書は言及している。公共の福祉に準じることなら、個人の権利はある程度制限されるのはやむをえないということだ。非常に難しい問題だが、携帯電話の端末奨励金に当てはめるとしたら、利用スタイルの違うユーザー間の不公平をなくすという考え方を安易に否定はできない。実際、一部のISPでは、独自の帯域規制についての規定を設けているところは少なくない。

 報告書でも、P2P技術やグリッドテクノロジーは、コンテンツ配信やQoSの伴う音声サービスなどのトラフィックをサーバーなどから分散させる技術として有効であるとしている。画一的なヘビーユーザーの規制は難しいし問題も多いとして、あくまで事例ごとの判断によるとしている。さらに、スカイプなどのソフトウェアやサービスは、スケーラブルなネットワークには欠かせない。だとしたら、むしろこれらのP2Pトラフィックも商用サービスとして積極的に増やしていく施策が必要だろう。

 問題は、P2Pトラフィックそのものではなく、違法コンテンツのやりとりやルールやマナーをわきまえないトラフィックなのだ。
《中尾真二》
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