【IDF Fall 2006 Vol.2】「電力効率向上でリーダーシップを発揮していく」-インテル | RBB TODAY
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【IDF Fall 2006 Vol.2】「電力効率向上でリーダーシップを発揮していく」-インテル

エンタープライズ その他
Pat Gelsinger, Senior Vice President, General Manager, Digital Enterprise Group, Intel Corporation
  • Pat Gelsinger, Senior Vice President, General Manager, Digital Enterprise Group, Intel Corporation
  • 今年Intelが出荷したプロセッサおよび今後年内に出荷開始されるプロセッサの一覧
  • 各プロセッサのウェハーもステージ上に並べられた
  • 日立のItanium2(Montecito)サーバを見せるGelsinger氏
  • デモに使われた日立のItanium2サーバのソフトウェア構成。Linux仮想マシン上でバイナリトランスレータ(Transitive)を動作させ、SPARC/Solaris用バイナリをそのまま無変更で動作させている点が面白い
  • パフォーマンスと電力効率のバランスを評価するベンチマークテストも増えてきた
  • インストラクション・セットの拡張計画の詳細をまとめたホワイトペーパーの配布も開始された
  • シン・クライアントかシック・クライアント(PC)か、という従来の議論に加え、新たにWebアプリケーションの分野で始まった“SaaS”の動向を踏まえてIntelが提案するのが“SaaS Enabled Client”だ
 9月26〜28日の3日間、米国San FranciscoでIntel Developer Forum(IDF)Fall 2006が開催されている。2日目の27日午前の基調講演には、IntelのSenior Vice President, General Manager, Digital Enterprise GroupのPat Gelsinger氏が登壇した。

 同氏はまず、今年前半での成果を振り返るところから話を始めた。この半年で、サーバ向けプロセッサとして「Xeon LV」「Xeon 5000series」「Xeon 5100series」「Itanium2 9000series」「Xeon 7100series」などがリリースされた。また、クライアント向けでは、「Core 2 Extreme」「Core 2 Duo」なども登場。さらに、今後年内に出荷開始される新プロセッサとしては、サーバ用に「Xeon 3000series」とQuad-Coreプロセッサの「Clovertown(コード名)」、クライアントではエンタープライズ・クライアントとして「vProベースPC」とQuad-Coreプロセッサの「Core 2 Extreme QX6700」が控えている。同氏がこれらのプロセッサの名称とスペックの概要を紹介していく背後で、スタッフが次々と当該プロセッサのウェハーを持って登壇し、ラックに並べてディスプレイしていく、という趣向も凝らされた。

 同氏はまた、パフォーマンス当たりの電力消費効率を向上させる、という最近のIntelの中核的なメッセージを改めて強調した。Core 2 DuoをPentium 4と比較すると、SYSmark 2004 SEベンチマークのスコアで1.48倍、SPECint_int_base2000ベンチマークのスコアで2.11に性能が向上している一方で、消費電力量は84Wから65Wに低減していることを紹介した。同様に、Xeon 5100seriesについても、シングルコアのXeonプロセッサ比で性能は3倍、ワット当たりの性能では3.5倍に達していることを示した。

 また、競合としてAMDを取り上げ、直接の比較も行った。ほぼ同等のハードウェア構成のAMD Opteron 285 2.8GHz搭載機とXeon搭載機で同じベンチマーク・プログラムを走らせ、Xeonの方が処理が先に終わり、かつ消費電力量が低いことを示した。さらに、Xeon搭載機のプロセッサをQuad-Core Xeonに差し替えて同じベンチマークを実行するというデモも行い、新しいQuad-Coreプロセッサが従来のXeonと完全なピン互換性を維持していることをアピールした。

 Itanium2に関しては、日立のItanium2サーバを利用した印象的なデモも行っていた。新しいデュアルコア・プロセッサ(Montecito)×8CPU(16コア)という構成のサーバを仮想化技術によって12台の仮想サーバにパーティショニングした。仮想サーバの構成は、「Windows+SQL Server」×7、残る5つの仮想サーバはredhat Linuxで、(1)Oracle(IA64)、(2)Oracleクライアント(SPARC)、(3)IBM DB2/MQ(SPARC)、(4)DB2クライアント(SPARC)、(5)Apache(IA64)をそれぞれ実行していた。ここで注目されるのは、Linux仮想サーバのうちの3つでTransitive社の「QuickTransit for Solaris/SPARC-to-Linux/Itanium」を利用、SUNのSPARCプロセッサ/Solaris環境用のバイナリをそのままLinux/Itanium環境で実行している点だ。Gelsinger氏は「最高のパフォーマンスを誇るSPARCプラットフォームは、Itanium2だ」と紹介し、いまだに高いシェアを維持するRISC/UNIX陣営に対してアドバンテージを確かなものにしたことをアピールしていた。

 電力効率向上に関するもう1つの話題としてGelsinger氏は、9月25日付けでBAPCo(Business Applications Performance Corporation)が、ECMA Internationalと共同でEECoMark(エコマーク)という新しい指標に基づくベンチマークを開始することを発表したことを紹介した。さらに、2007年第1四半期には「SPECpower」という新しいベンチマークが開始されることも合わせて紹介した。いずれも、パフォーマンス当たりの電力消費効率を比較することで、エコロジーの観点から優れたサーバを選ぶ基準となりうるものだ。Intelもこれらのベンチマークを支持し、ベンチマーク・データを公開していく方針だという。

 このほか、Gelsinger氏はプロセッサのインストラクション・セットの拡張計画についても言及した。拡張されるのは、SSE4(Streaming SIMD Extensions 4)やApplication Targeted Acceleratorsと呼ばれる命令群だ。Application Targeted Acceleratorsには、CRC計算を行う命令や、パターン認識のため、大サイズのデータの中から“1”にセットされているビットの数を数える命令などが含まれるという。拡張されたインストラクション・セットが実装されるのは45nmプロセスで製造されるプロセッサからだということので、プロセッサの開発コード名で“Penryn”、マイクロアーキテクチャ名としては、同じく開発コード名で“Nehalem”からということになる。

 最後に同氏は、エンタープライズ・クライアントのモデルについて言及した。現在のエンタープライズ・クライアントは、セキュリティとTCOの面で有利で複雑性も軽減できる「シン・クライアント」か、生産性に優れ、リッチなユーザー経験を可能にし、モビリティも確保された「シック・クライアント」か、という二者択一の状態にあるように見える。しかし同氏は、新たな解として、ソフトウェアが“SaaS”(Software as a Service:サービスとしてのソフトウェア)の方向に移行していくことを前提に、“SaaS Enabled Client”というものが考えられるとした。ソフトウェアをクライアントにインストールすることなく、AJAXなどの技法を使ったリッチなアプリケーションをユーザーに提供するSaaSに対応するには、フル機能を備えたWebブラウザや、今後利用の拡大が想定されるストリーミング・メディアに対応できる処理能力を備えたPCの利用が有利だ。また、従来のPC(シック・クライアント)の弱点とされた管理の煩雑さやセキュリティの問題は、アプリケーションやデータをサーバ側で管理するSaaSのアプローチであれば解消されることになる。IntelがSaaSに言及するとは想定外ではあったが、クライアントPCの機能強化を続ける一方で企業が求めるTCO削減やセキュリティ向上を実現するために、クライアントPC側だけの改良ではなく、利用モデルの変化も必要となっているという認識を示したものと理解して良さそうだ。
《渡邉利和》
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