【木暮祐一のモバイルウォッチ】第50回 Google Glassはブレイクするのか? Part3「Google Glassをめぐる課題を考える」 | RBB TODAY
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【木暮祐一のモバイルウォッチ】第50回 Google Glassはブレイクするのか? Part3「Google Glassをめぐる課題を考える」

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Google Glassを試す筆者
  • Google Glassを試す筆者
  • 端末の小型化と共に、技適マークは小型化し、さらに昨今では「電磁的表示」つまりディスプレイなどへ技適マーク表示することも可能となった。
  • iPhoneなど、グローバル端末では「電磁的表示」によりディスプレイ内に技適マークを表示させる事例も出てきた。
  • Google Glassの基本設定画面のキャプチャ。顔をわずかに上に上げるとスリープしていたGlassを自動的に起動させることができる。この状態でウィンクをすれば静止画撮影ができてしまう。
  • Google Glassのウィンク撮影機能のキャリブレーション画面のキャプチャ。画面の動画に合わせてウィンクを数回行う。
  • キャリブレーションによりユーザーのウィンクを記憶し、撮影などの動作を行う機能がONとなる。そのうち「ダブルウィンク」なんて機能もサポートするようになるのか?!
  • タクシー移動中に、ウィンクして風景撮影を楽しんだ。掲載画像では画像サイズが縮小されているが、オリジナル画像では標識やタクシー内に貼られたステッカーの文字も十分に判読が可能だ。
 筆者はこの連載で、日本では技術基準適合証明の取得が不明確だった「Google Glass」を韓国に持ち込み、現地でレビューを行った。というのは、日本においてはいわゆる“技適”と呼ばれる「技術基準適合証明」または「工事設計認証」を受けていない端末を使用すると電波法違反に問われることになり、起訴されれば懲役1年以下、または100万円以下の罰金に処される。Google Glassの場合、Wi-FiおよびBluetoothの電波を発するため、この“技適”がなければ合法的に国内で電源を入れることさえできなことになる。これまで国内で摘発例は聞いたことが無いにしても、公式のメディアにおいて国内で電源を入れてレビュー記事を書いたり、研究を目的とした実証実験を行うことは“大人の約束”として許されてこなかった。

 そんなわけで韓国まで飛んできたのだが、Googleはすでに国内の認定、検定機関にGoogle Glassの検査申請を行っていたようで、筆者が借用中のGoogle Glass XE-Cは4月10日付けで一般社団法人電気通信端末機器検査協会(JATE)の技術基準適合認定を通過している。さらに4月9日付けで“技適”認証機関の1つである(株)UL Japanによって「工事設計認証」を受けていることも、総務省による公表で6月4日になって明らかになった。(http://www.tele.soumu.go.jp/j/sys/equ/tech/tech/)

■ところがまだ“合法”という解釈に至らない

 このいわゆる“技適”と呼ばれるものは、無線LAN、テレメータ・テレコントロール用などの特定小電力機器、携帯電話、PHS、コードレス電話の小規模な無線局に使用するための無線設備(特定無線設備)について、電波法に定める技術基準に適合していることを証明することで、かつては1台1台の検査を行い、個体ごとに異なる技術基準適合証明番号を付与していたが、量産品にあたっては同一に作られる無線機について審査を行い、生産体制が申請された工事設計に合致する場合には「工事設計認証番号」を付与する制度もできた。現在、多くの携帯電話端末やスマートフォン端末もこの工事設計認証番号の取得によって技適を取得とする扱いにしているはず。

 Google Glassはすでに多数の端末が国内の関係者に手に渡っているようで、総務省による「技術基準適合証明等の公示」が行われた以降は国内でもGoogle Glassのレビュー記事がネット上で多数見られるようになってきた。しかし、念のため総務省の所轄部門に確認したところ、Google Glassに[R](□の中にR)で始まる証明番号が表示されていないければ、「同型式モデルが技適を受けているにしても日本国内では違法無線局には変わりない」という解釈であった。

 かつてこの証明番号の表示は、俗に「技適マーク」と呼ばれるロゴと共に端末にシールが貼られていたり、端末に印字(刻印)されていた。端末が小型化される一方で、こうした表示をさせるスペースの確保が難しくなったり、グローバル(国際共通)端末の普及により、端末OS等のアップデートで追加できるなどの利点から2010年4月からはディスプレイ内に技適マークを表示させる、いわゆる「電磁的表示」も可能となった。

 ところが、Google Glassには現状、ディスプレイ内にも技適マークを表示させるメニューが見つからない。今後、Google Glassのファームウェアアップデートで対応される可能性はあろうが、残念ながら筆者の借用しているGoogle Glassではこの技適マーク表示ができない以上、まだ日本国内では合法的に利用ができないようだ。

 Google Glass向けのアプリケーション試作や、ビジネス利用の検討のために合法的に国内で実証実験が行えないため、わざわざ海外まで出向いて検証を行っている事例は多い。たとえばJALと野村総研は「Google Glassを活用した業務スタイルの実証実験」をわざわざ米国ハワイで行っている。日本のこうした電波法に絡む問題は、国内でGoogle Glassの活用を考えたり、Glasswearの企画や開発を目指すエンジニアにとっても、世界から遅れを取ることになりかねない。日本はもともとモバイル活用先進国だったにも関わらず、スマホの普及によるグローバル化の波の中で、せっかくのノウハウを世界に対して活かしきれていないのが残念な限りだ。
《木暮祐一》
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