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【木暮祐一のモバイルウォッチ】第46回 新たなモバイルキャリア、ヤフー傘下で「ワイモバイル」誕生

エンタープライズ モバイルBIZ
木暮祐一氏。青森公立大学 准教授/博士(工学)、モバイル研究家として活躍し、モバイル学会の副会長も務める。1000台を超える携帯コレクションを保有。
  • 木暮祐一氏。青森公立大学 准教授/博士(工学)、モバイル研究家として活躍し、モバイル学会の副会長も務める。1000台を超える携帯コレクションを保有。
  • ユーザーからの意見を募集している、ワイモバイルの特設サイト
  • 従来の通信キャリアとはサービスの主従関係を逆転させるというワイモバイルのコンセプト
  • スマートフォンやタブレットの普及率と実際のインターネット利用率(未使用率)は異なるとし、こうしたユーザーの底上げを目指したいとした
 ヤフーは、ソフトバンクからイー・アクセスの株式の99.68%(議決権比率33.29%)を3,240億円で取得することを発表した。現在、イー・アクセスとウィルコムはソフトバンク傘下にあり、両社を本年6月1日付けで合併させ、新ブランドで事業を展開する計画だった。すでにイー・アクセスとウィルコムの店舗で、それぞれお互いの製品やサービスの販売等を行っており、両社の合併による新ブランドがどのようなものになるか関心を抱いていたユーザーも少なくないはずだ。

 ところが、ここにきて突然のヤフーによる買収劇の一報が駆け巡った。当初の計画通り6月1日にイー・アクセスとウィルコムが合併した後、その翌日である6月2日にヤフーがこの存続会社の株式を取得する。新社名はワイモバイル(Y!mobile)となる。ソフトバンクからヤフーに渡るとはいえ、ソフトバンクはヤフーの株式を42.5%保有するグループ会社であり、ソフトバンクの抱える通信事業の一部をヤフーに譲渡するグループ間取引のようにも映る。

 そもそもソフトバンクが2012年にイー・アクセスを買収したのは、iPhone 5発売時にKDDIに対抗するネットワークを取得するために孫正義氏が考え出した奇策とも言われてきた。通信に利用する周波数は各キャリアごとに帯域が割り当てられており、ソフトバンクの場合は色々な制約から特に都心部でLTE帯域を十分に展開できていなかった。逆に都心部中心にiPhone 5でも利用可能だった1.7GHz帯のLTEサービスを展開していたイー・アクセスを取り込むことで、KDDIと互角に戦えると目論んだのだろう。一方ウィルコムは2009年に会社更生法を申請したが、この再建にソフトバンクが乗り出し、見事にその再生を果たした。現在、イー・アクセスとウィルコムを合わせ契約者数はおよそ1,000万人となっているが、これを取得することになったヤフー代表取締役社長の宮坂学氏は「2,000万契約まで倍増」させると意気込む。

 このところモバイル業界で話題になるのは既存の通信事業者(Mobile Network Operator = MNO)からネットワークを借り受け、独自のブランドで通信サービスを展開するMVNO(Mobile Virtual Network Operator)の躍進だ。独自の端末まで開発しているディズニー・モバイル・オン・ソフトバンクや、SIMカードの販売を中心とするb-mobile(日本通信)などがMVNOを代表する事業者である。今回のヤフーの場合は投資額も大きく、MVNOでもよかったのではないかという声も聞こえてくるが、宮坂氏はこれを否定。「MVNOではなく、サービスプラン、端末、販売チャネルまでフルコントロールできるMNOを目指した」と明言する。一方で、ネットワークは現状でも共有を図っているソフトバンクと引き続きシナジーを高めていくとしている。

 そもそも、なぜヤフーが通信キャリアを手がけようとしているのか。ヤフーはインターネットの会社(Internet Company)として君臨してきたが、かつて2001年にYahoo! BBを始めたときに、通信事業とインターネットの利用とが相乗効果をもたらしたことがあった。Yahoo! BBの展開によってブロードバンドを使うユーザーが増え、同時にヤフオク!をはじめとするヤフーの様々なインターネットサービスの利用率が高まっていった。ヤフーのサービスに限らず、多くの日本のユーザーがインターネットの利便性を知り、インターネットを通じて様々な情報にアクセスし、生活を豊かにしていった。今回、ヤフーが新たにモバイルキャリアを手がけることで、新たなインターネットの利活用を促進していこうと目論む。

 実際に、ヤフーにおけるインターネットを通じた売り上げの多くはスマートフォンからの利用にシフトしているという。宮坂氏は、そうであるなら私たち自身でスマートフォン事業も手がけたいと考えたという。
「すでに、86%の家庭にインターネットが届くようになっている。家庭には届いたインターネットだが、手元(手のひら=スマートフォン等)に届いているのかというと、実際にはまだほとんどの人の手元に届いていない。インターネットの生み出す楽しさ・便利さをみんなの手元に届けたい。電気や水道のように全ての人の手元にインターネットを届けようと考えている」(宮坂氏)

《木暮祐一》
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