【地震】国内IT産業、震災インパクト大きい自動車向けSoC……IDC Japan | RBB TODAY
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【地震】国内IT産業、震災インパクト大きい自動車向けSoC……IDC Japan

エンタープライズ 企業
IDC Japan リサーチバイスプレジデント 中村智明氏
  • IDC Japan リサーチバイスプレジデント 中村智明氏
  • ルネサスエレクトロニクス全体の状況。表は前工程の復旧状況を示したもので、茨木の那珂事業所の被害が大きいことが分かる
  • ルネサスエレクトロニクス全体の状況。表は前工程の復旧状況を示したもので、茨木の那珂事業所の被害が大きいことが分かる
 IDC Japanは14日、東日本大震災による国内IT関連事業所への影響と復旧見通し、および2011年の生産インパクトについてのレポートの発表会を実施した。

■DCモータ、自動車、印刷
工場が原発避難地域にある日立化成工業

 次に比較的インパクトの大きな分野について、中村氏が説明を加えた。日立化成工業(福島)のDCモータ用(鉄道向け)カーボンブラシのグローバルシェアは70%と高い。そして工場が福島・浪江市にあり、原発による避難地域に入っている。したがって、いまでも復旧できない状態にあるため、-10%とインパクトが大きい。「ただし、ユーザー側で半年ほど保守部品の在庫があるため、その間に拠点移管が行われれば影響も抑えられる」(中村氏)と見ている。とはいえ半年を越えても工場の移管が行われなければ、相当なインパクトになるかもしれない。

 また高濃度(30wt%)の超純過酸化水素を供給する三菱ガス化学(茨城)も鹿島工場が停止しており、インパクトも-14%と大きい。国内シェアが60%(WWでは30%)もあり、深刻な状況だ。超純過酸化水素は、ウェハーの洗浄や紙の漂白などに使われるものだが、劇薬で運搬に留意する必要があり、輸入も面倒だ。「ただし国内シェア2位(20%)の日本パーオキサイドがいち早く復興した。すでに生産を開始しているので、他メーカーの工場も含めて、残りの40%程度の供給で目処がついている」(中村氏)。また鹿島コンビナートも一部復旧を開始しており、復旧スピードが若干速まるかもしれないという。

●インパクトの大きい自動車向けのSoC、一部操業停止で生産高14%減少

 そのほかインパクトが大きいものとして、ルネサスエレクトロニクス(茨城)がある。同社はカーナビのプロセッサーで75%の世界シェアを持っている。さらに一部のHDDコントローラー部でも25%のシェアがある。「7月復旧を目処にして考えても、2011年の自動車向けSoC(System-On-a-Chip)の生産高は14%ほどの減少が見込まれる。5月下旬以降、6月末までは供給の見通しが立っておらず、多くの自動車メーカーで一時的な操業停止が避けられない見通しだ。ただし自動車業界で復旧の応援が入り、6月ぐらいまでに回復するとの情報もある。そうなれば少し数値の改善がみられるかもしれない」(中村氏)という。

 中村氏は、さらにルネサス全体の状況について詳細に説明した。ルネサスエレクトロニクスは茨城(那珂)、山梨(甲府)、群馬(高崎)に事業所があり、ルネサス山形セミコンダクタ、ルネサスハイコンポーネンツ(青森)といった関連会社もある。このうちルネサスエレクトロニクスで最も影響を受けているのは茨城県の那珂事業所だ。そのほかの山梨、群馬、山形などの工場は直接被害というより計画停電の関係が大きかったが、これが原則停止になったので改善する見込み。一方、問題の那珂事業所では、前出のようにSoC、32ビットMPU、自動車向け部品(ECU)、携帯電話向けアプリケーションプロセッサなどを製造しており、半導体製造の前工程で大きな影響を受けている。

 半導体製造工程は前工程と後工程に分けられ、前工程はリソグラフィ技術によって回路をウェハーに何度も刻んでいくプロセスが中心。一方、後工程はデバイスを製造するために配線したり、パッケージングやテスティングを行うプロセスで、こちらは比較的早く復旧できるという。前工程は通常投入してから製品ができるまでに2~3ヵ月はかかる(自動車向け部品の場合は、さらに足が長く、時間がかかる)。そのためルネサスでは、他社への製造委託も考えているそうだ。

 たとえば携帯電話向け部品の一部は、すでにTSMC(台湾)への製造委託を始めており、影響は軽微となる見込み。また自動車向け部品の一部は、海外ファウンドリング(シンガポール)へ生産を移転。したがって生産の半分は外部に委託できる。ただし残りの半分は、どうしても那珂事業所で内製せざるを得ない状況で、そこがネックになっているという。それでも自動車向け部品に関しては、走行のために本当に必要なものかを仕訳することで、影響を最小限にとどめているという。中村氏は「カーナビなどディーラーオプションで取り付けられるものは後からでも対応できる。工場オプションであっても、後から持ち込みで取り付ければよい。カーナビを付けないで出荷するなど、震災直後からできるだけ影響を与えないようにしている状況だ」と説明する。

●新聞印刷などにも影響

 さらに、いまかなり厳しい状況にあるのがインク溶剤(メチルエチルケトン)だ。新聞印刷やオフセット印刷用のインク溶剤が供給できないと懸念されている。千葉県・市原市で炎上したコスモ石油コンビナートに隣接する丸善石油化学が全壊しており、リカバリーまでに1年ぐらいかかる予定。国内生産の60%を占めており、対応策としてリサイクルや代替溶剤(酢酸ノルマルプロピン、酢酸エチル)も考えているとのこと。あるいはインドネシアからの緊急輸入も行って、なんとか影響がでないように努力しているところだが、まだどうなるか予断を許さない状況だ。

 IDCでは、今後も震災を加味したインパクトについての予測レポートを公開していく予定だという。
《井上猛雄》
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