富士通、Xeon 5500搭載・低価格サーバを発表——シェア30%を狙う新戦略とは
富士通の新しい戦略とはどんなものだろうか。プラットフォームビジネス推進本部 PRIMERGYビジネス推進統括部 統括部長の森下健作氏に聞いた。
まず、富士通のポートフォリオだが、利益での貢献度と成長での貢献度でみた場合、利益・成長ともに貢献度が低い領域については選択と集中を行い、利益に貢献している強い商品を持った「プロダクトビジネス」、成長に貢献できる(成長の余地がある)「海外ビジネス」、そして、利益・成長ともに貢献する「サービスビジネス」と分類している。
選択と集中については各種デバイス事業やHDD事業の譲渡などを断行している。プロダクトビジネスと海外ビジネスについては、これをさらに拡大、成長させるためにソリューションビジネスやインフラサービスといったサービスビジネスが、今後重要な役割を演じると見ている。実は、富士通シーメンス・コンピューターズの統合は、この変革プランの要となるものという。
このような事業戦略の見直しが必要な理由として、マクロ的なものにはクラウドコンピューティングや仮想化という、大きな「うねり」がビジネス全般に与えている影響がある。100%ではないにせよ、情報管理や業務システムの利用スタイルを変えており、サーバ市場では、WindowsやLinux搭載のIA(Intel Architecture)サーバ市場は確実に拡大を続けている。これに対してメインフレームやUNIXサーバの市場規模は横ばいか微減が続いている。これは、各種の市場調査や富士通のサーバビジネスの実績でも裏付けられているという。富士通は、メインフレームも金融機関や社会インフラでの需要は手堅い部分もあり、ユーザーの資産継承という側面からも製品のラインアップは重要としながらも、IAサーバ事業の強化が急務であるとの認識を持っている。
富士通テクノロジー・ソリューションズの創設は、PCサーバ(PRIMERGYシリーズ)の製品強化、グローバル展開の要となる。PCサーバの開発体制を1本化しグローバルに競争力のある製品を提供する重要な拠点となるわけだ。サプライチェーンの最適化も行い、リードタイムの短縮、コストダウンなどの効果が期待されている。開発や製造にかかわるリソースを集約することで、部品調達ではボリュームディスカウントも進み、製造・販売にかかわる各国拠点の重複機能も排除できるからだ。
以上のような富士通のIAサーバ市場に対する戦略を体現する製品として発表されたのが、インテルの最新プロセッサーXeon 5500番台を搭載した2ウェイ ラック型サーバ「RX300 S5」「RX200 S5」だ。5月には大規模ブレードサーバの投入も予定されており、プロダクトの強化はすでに始まっている。
Xeon 5500番台プロセッサーの特徴は、コアのクロックを最適制御するターボ・ブースト・テクノロジー(注1)やインテルQPI(QuickPathインターコネクト)(注2)といった高パフォーマンス、独自のアイドル時セーブモード搭載による低消費電力、仮想化を意識したアーキテクチャなどだ。かねてより「Nehalem-EP」というコードネームで開発が進められていたプロセッサーだが、これらの特徴は、企業のサーバ統合やデータセンター利用を強く意識したものといえる。
RX200 S5/RX300 S5は、富士通の世界戦略モデルとして価格競争力が高いものとなっている。つまりは値段が安いということだが、ヒューレット・パッカード(HP)並みの値段といえばわかりやすいだろう。国内サーバ市場では、HPのプライスリーダーとしての地位が定着しており、国内ベンダーは価格面での競争力で苦戦している現実があったが、RX200 S5(261,000円〜:税別)/RX300 S5(297,000円〜:税別)は、これに十分対抗できるものとなっている。
しかし、森下氏によれば、価格戦略は富士通のこれからのサーバ戦略のひとつではあるが、これが本流ではないという。価格改定の効果はいわば一時的なもので中長期の戦略にはなりえない。競争力という意味で企業努力は続けるが、長期的な視点では地味ながら、もっと重要なポイントがある。たとえば、大規模データセンターでの利用や大企業サーバでは無視できない「グリーンIT」への取り組みがそれだ。
グリーンITで重要となるキーワードはCO2削減だ。そのためにはプロセッサーだけでなく、サーバ本体の消費電力に意味がある。PRIMERGY RX200 S5/300 S5は、電源変換効率を従来機に比べ約5%向上させた国際エネルギースタープログラム(注3)基準を満たす電源ユニットを採用している。サーバ設計の細部について語るのは、富士通 プロダクトマーケティング本部 IAサーバビジネス統括部の木内一慶氏だ。
ほかにも、内部のケーブル類の最適化、ファンの位置、CPUとメモリスロットの配置の最適化により、冷却効率を改善している。前面の吸気のための開口面積を17.5%向上させ、ファンの直径を10ミリ大きくし、ファンの回転速度を下げることにより低消費電力や静音性を改善したという。
また、利便性の向上から、ラックサーバの奥行サイズをほぼ統一することで、背面のメンテナンス性を改善している。電源コードやコネクタ類の配置も工夫し、スロットに入るオプション製品も挿抜レバーの色を統一したり、システムIDカードと呼ばれる筐体の管理情報(番号、名前など)を書き込めるプラスティック製のタグを装備させた。システムIDカード(タグラベル)は、普段は本体に差し込まれている。
プロダクトビジネスと海外ビジネスを統合する土台は、FTSによってでき上がることになる。次のステップはこれをサービスビジネスへつなげることだ。手始めとして3月26日に、マイクロソフトとソリューションビジネスでのアライアンス強化を発表している。これはWindows Server製品とPRIMERGYを、両者が協力して販売、提案、システム構築などを行うというものだ。同様な動きとして、北米にFujitsu Americaを設立しコンサルティングやソリューションビジネスを展開する。欧州では富士通サービスとFTSの提携がそれに相当する。オーストラリアのITサービス企業KAZ社の買収が当局から承認されれば、アジア太平洋地域でもサービスとテクノロジーをワンストップで提供できるようになる。
富士通では、以上のようなサーバ戦略のいわば「ギアチェンジ」によって、2008年のx86サーバ市場の世界シェア4%(27万台、4位)を10%台まで拡大させたいとしている。シェア14%の国内市場(8万台、4位)については、2010年までに30%以上を目指す。非常に野心的なプランだが、硬軟あわせた新しい事業戦略によって達成したいという。
(注1)ターボ・ブースト・テクノロジー:一定の条件を満たす場合に、プロセッサーの周波数を上げることで、状況に合わせて処理速度を向上する新技術。
(注2)インテル QPI:プロセッサー、チップセットといったプラットフォームのコアとなるデバイス間を、リンクあたり最大25.6GB/秒の帯域で結ぶ技術。大規模で高帯域の共有メモリ・システムが実現できるため、特に浮動小数点演算やメモリ帯域幅を重視するアプリケーションなどで効果的。
(注3)国際エネルギースタープログラム:アメリカ環境保護局(EPA)が推進する、電気機器の省電力化プログラム。
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