【インタビュー】勝ち組になるための企業コミュニケーションとは?
——オフィスのモビリティーについて語られるようになって久しいですが、そのあり方に変化は見られますか?
2003〜2004年にかけて、NECではUNIVERGEソリューションというものを念頭に、ワークスタイルの変革やブロードバンドオフィスを打ち出していました。ブロードバンドや3G携帯が普及するなかで、それらの要素をオフィスに取り込んでいこうというもので、NEC自らが実践し、顧客と対話しながらソリューションを提供してくものでした。現在はユビキタスワークプレイスというメッセージを打ち出しています。オフィスのなかだけではなく、それをもっと現場に広げていこうというコンセプトですね。時代は、まさにそういうフェーズにあると考えています。
——具体的にはどういうことですか?
ブロードバンドオフィスではノートパソコンやFOMA 902iLのような機器をコアに置きながら、デスクトップパソコンを不要にしたり、「自分の席」を特定しないようにしたりといったことがメッセージとして存在していました。こうしたモビリティーは確かに重要ですが、実はそれだけでは面白くないんですね。いろんな事業者が展開しているサービスをもっと活用しながら自分たちの現場にリーチすることが大切です。
——現場にリーチすることの例として挙げられるのはどんなことですか?
広い視野で物事をとらえて、現場での具体的な活用方法をイメージするということです。社員証とFelicaのようなものの連携であるとか、Suicaとの連携であるとか……。そうすると会社の交通費精算がそこに連動してくることになったりということもでてきます。トリプルプレイという言葉をよく聞きますよね。でも、携帯電話をとってみると、電話だけなくカメラ付きは当り前ですし、インターネットにもつながる、ワンセグもついている……もうマルチプレイですよね。従来の現場では専用の端末を活用していたわけですが、これらマルチプレイ端末をもっと取り込んでいこうという流れが起きてきます。例えば、棚卸しの作業をしていておかしなところが見つかったら、センターのコンピュータと携帯電話が連携してアクションを起こせばいいわけですよ。そういう基盤はすでにできているんですね。ここは我々が取り組むべき領域です。コミュニケーションと業務という側面は、ひとつのテーマだと思っています
——モビリティーのデバイス関連では、シンクライアントが挙げられます。NECの社内では先行して実験されているところだと思うんですが
そうですね。実際に実験を行っていますし、面白いですよ(笑)。仮想PCというものを身近に使いこなせるようになったのはいいことですね。シンクライアントは、もともとはセキュアな環境に対するニーズから生まれたものですよね。でも、使う人は誰でもよくて、個人的にカスタマイズされた環境がいつでもどこでも提供されることがポイントです。個人環境を社員証で読みだせたりということもできます。
——平田さんは実際どんな風に使ってるんですか?
リモートデスクトップでシンクライアントを活用することが圧倒的に多いです。アプリケーションを立ち上げて作業を行っている時にセッションを中断し、次の現場に持って行くことが多いですね。メールも書きかけのまま保存もせずにほっておき、別の場所で続きを書くというのが当たり前になってます。また、メールの環境を一本化していくと、例えばアドレス帳が一本化されるじゃないですか。従来は、環境が違うとアドレスブックが異なったり、マークしたものが違うという状況だったんですが、今は統一されてますね。ただ、こういう話はデバイスの話だけではないんですね。
——デバイスの話だけではないと?
つまり人の要素を考えていかなければいけないんです。モビリティーの世界を見てみると、社内外を問わず、またデバイスを問わずにどこでも繋がる基盤は整ってきました。いろんな機能を安く活用できるインフラが整理されてきたからこそ、別々に利用していたもののをもう少しくっつけてやるいと、いろんな可能性が起きてくるのです。
——企業間のコミュニケーションについてはどうですか?
コミュニケーションの垣根が開放される方向にいくはずです。そこでは、機密性やリスクなどいろいろなことを考慮しなければいけないんですが、そういうものを含めて情報システムがきちんとサポートしてくれる方向になっていくと思いますね。これまでのテキストベースのコミュニケーションからリッチメディア化していくという流れが起きます。
——リッチメディア化していくというのはどういうことでしょうか?
今以上にハイビジョンが普及した時のことを想像してください。そこではビジュアルコミュニケーションのあり方も変わってくるはずです。例えば、モノの色や構造のコミュニケーションですね。「この製品のこの色やアールの付き方をもっとこうしたい」なんていうのは、ビジュアルのレベルが相当高くないと伝わらないものです。そこにHDを使うことで、コミュニケーションのあり方が変わってきます。オフショアリングなどの可能性も広げてくれますよね。例えば、タイなどでせっかく安く製造したのに、コミュニケーションがプアなために頻繁に出張しなければいけないという事態もなくなりますよね。
——NGNは企業のコミュニケーションにどのように影響を与えるのでしょうか?
最もミッションクリティカルなのはWEBベースの会議システムだと思います。たとえばボードミーティングなんかをやろうとした時には参加者と時間が設定されていて、その時間に全員が繋がってなきゃいけない。会議システムがうまくいかなくて成立しなければ、その人数×コスト分が無駄になってしまいます。重要なテレカンファレンスをやろうとした時は損失が大きいですよね。こういう機会は今後普通の現場で増えてくると思いますが、NGNで必要な場所に必要なコネクティビティーを保証してくれるようになるのは有難いですね。
——最近話題になっているSaaSの世界でも、SNSの世界でもそうですが、ひとつの環境を外部と共有するという流れがおきています。これは、先ほどおっしゃった外部への開放のひとつではないですか?
そうですね。ただ、プラットフォームの開放もコミュニティーの開放も、そのまま外に広げていくのは難しいでしょう。社内に対する発言と社外に対する発言などが、仕組み上で明示的に理解できるようになっていなければいけないし、オープンコラボレーションがよほどうまくできる仕組みがないといけないと思います。しかも、会社の利害とうまくつながりながらビジネスチャンスを生んでいかなければいけない。そういうシカケがちゃんとできていれば、参加できる人間が限られていた世界のことが、もっと広い範囲でできるようになります。
——最後に、1月25日に開催されるセミナー「モバイルビジネス 2008年以降の新展開」でのご講演のキーポイントを教えていただけますか?
デバイスも含めコミュニケーションの形は、今後もどんどん進化していくと思うんです。企業の人たちは、いかにそれらを上手に活用していくかを考えることが重要で、企業が現状のやり方でいいと思っていたら何も変わらないんですね。結局、今の時代は、生産性を上げるために努力して仕組みを作った人たち(企業)が勝ってるんです。そこには働く環境をより良くしていこうというダイナミズムというものがあります。会社が決めたルールや勤務体系がうまくいかなくなったら専門家がやってきてコンサルを行い、現場が新しい仕組みに慣れるまで生産性が下がってしまうなんていう時代ではないですよ。現場での工夫が必要なんですが、限りなく安くなってきたネット環境や、シンクライアントのようなデバイス、センター集中型の仕組みのなかで工夫が生かされ、WEB2.0的な情報交換やマッシュアップなどのしかけを活用していく会社が勝つと思います。今後はコミュニケーションと情報システムの連携拡大が確実に起こります。これがユニファイドコミュニケーションの流れを象徴しています。つまりコミュニケーションのユニファイド、フェデレート化があり、一方でアプリケーションのユニファイド、フェデレート化が起こります。それに、乗り遅れてはいけないということで、目指すべき方向をお話しできれば、と考えています。
——有難うございました。
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