6月13日(金)に、トークイベント「脱偏見シリーズ」第2回目が開催されました。
第2回のゲストは、「異彩を、放て。」を掲げ、知的障害のあるアーティストの作品を社会に届け続ける、株式会社ヘラルボニー代表取締役・松田文登さんにご登壇いただきました。
ヘラルボニー本社からライブ配信された本イベントは、多くの方が視聴しました。
※ issue+designは、認知症とともに幸せに生きるヒントを届けるため『認知症世界の歩き方』の実写映画化にチャレンジしています。映画についての詳細はこちら。
制作支援のため国内外8か国でクラウドファンディングを実施しています。

本イベントシリーズ「issue+design challenge 2025 脱偏見のために、デザインと映画は何が可能か」は、さまざまなフィールドで「脱偏見」に挑戦しているゲストをお招きし、認知症に関する偏見を乗り越え、より豊かな社会的理解を生み出すことを目的としたプロジェクトの一環です。
映画『認知症世界の歩き方』の制作背景や意義に触れながら、デザインや映画がどのように偏見を打破できるのかを共に考えていきます。
認知症に限らず、社会には気づかないうちに根強く残るさまざまな「偏見」や「誤解」があり、これらがしばしば私たちの行動や考え方に無意識の影響を与え、さまざまな生きづらさを生んでいます。
そこで、認知症に限らずさまざまなフィールドで「脱偏見」に挑戦しているゲストをお招きし、映画制作に向けた取り組みを通じて、認知症やその他の社会課題に対して新しい視点をどのように広めていけるのか、ゲストとともに議論していきます。
社会に根付くさまざまな偏見を解きほぐし、誰もが生きやすい社会を作るために、デザインや映画は何ができるのでしょうか?
第2回目のゲストは、株式会社ヘラルボニーの松田文登さん。
アート×福祉という領域で新たな文化の創造に挑み続ける松田さんが、これまでどのように偏見や誤解と向き合い、社会課題に挑んできたのか、またその背景にある思いやビジョンについてじっくりお話を伺いました。筧裕介氏(issue+design 代表)と対談を行い、ファシリテーションは但馬武氏(issue+design 理事)が務めました。
イベント概要
タイトル:「脱偏見のために、デザインと映画は何が可能か vol.2」日時: 2025年6月13日(金)15:00~17:00
会場:オンライン(YouTube Live)
ゲスト:松田文登(株式会社ヘラルボニー代表取締役Co-CEO)
ゼネコンにて、被災地の再建に従事、その後、双子の松田崇弥と共にへラルボニーを設立。
4歳上の兄・翔太が小学校時代に記していた謎の言葉「ヘラルボニー」を社名に、福祉を起点に新たな文化の創造に挑む。ヘラルボニーの国内事業、主に岩手での事業を統括。岩手在住。双子の兄。Forbes JAPAN「CULTURE-PRENEURS 30」選出、第75回芸術選奨(芸術振興部門)文部科学大臣新人賞 受賞。著書『異彩を、放て。―「ヘラルボニー」が福祉×アートで世界を変える―』。
ホスト:筧裕介(issue+design 代表)
ファシリテーター:但馬武(issue+design 理事)
アーカイブ動画のリンク先
イベントの様子はYouTubeにてアーカイブ公開中です。当日の様子
オープニングissue+design代表の筧より、これまでの取り組みや認知症をテーマとしたプロジェクト、そしてなぜ映画化に挑戦するのかについてお話ししました。
松田さんより、認知症の言葉が持つ偏見について聞かれた際には、「認知症という言葉も、かつては“痴呆”という偏見を含む表現でした。人生100年時代を生きる私たちにとって認知症がある世界は当たり前のことで、認知症という言葉に対して当然のことと捉えてもらえるよう変えていくことが大切だ」と話しました。

松田文登さんの登壇
“マイナスからゼロ”ではなく、“プラスをどう捉えるか”の福祉へ
知的障害のある4つ歳上の兄との原体験から、双子で株式会社へラルボニーを起業し、福祉×アートの領域で新たな価値観を提示してきました。代表の松田さんが語ったのは、障害のある人への“見方”そのものを変える挑戦でした。
ヘラルボニーの取り組みは、全国の福祉施設や作家とライセンス契約を結び、作品をプロダクトや空間に展開するもの。その本質は、「異才」ではなく「異彩」――つまり、才能ではなくその人の彩りそのものを尊重する姿勢にあります。
「既存の福祉は“マイナスをゼロにする”発想だった。でも、プラス1があるなら、それを社会がどう受け取るかで100にも1000にもなる」と語った松田さん。
また、「ヘラルボニーは、知的障害のある人を“初めて名前で呼ばせた会社”とも言われた」と語り、作家一人ひとりの人生や名前に向き合う姿勢が、偏見を変える力になると強調しました。
最近の事例では、ダウン症の原因となる染色体を除去できる可能性を示すというニュースについても触れました。ネット上で「可哀想な人が減ってよかった」という意見が多数を占め、当事者の声がかき消されたことに違和感を持ち、「いつか『偏見』も除去されますように」というコピーで、日本ダウン症協会と共同で広告を打ちました。実際に調査では「あなたは毎日幸せですか?」という問いに対し、ダウン症の8割以上が「はい」と答えた一方で、健常者では約5割という結果も。「何をもって“幸せ”とするか?」という問いが、社会の前提を揺さぶります。
「偏見は、障害のある本人ではなく“見る側”にある」。この視点は、認知症に対しても通じるものがあります。

対談の中でのお話し
へラルボニーは社会の価値観や考え方そのものを変えていく大きなアプローチを行う中で、ご本人たちにしっかりと向き合いながら、大きな世界を見ている。その姿勢に、非常に感銘を受けた筧は、
このような社会全体における知的障害への認識や意識を変えていくようなアプローチは、いつごろから感じていて、どんな経緯で今に至っているのかを問いました。
大学時代から双子で「福祉で起業しよう」とは思っていて、高校卒業の文集にも「就労支援施設を立ち上げたい」と書いてあったとのこと。
転機となったのは、24歳のときに訪れた「るんびにい美術館」で、障害のある方の作品に初めて触れた経験。自身の兄が半年に一度、10数点の作品を描いて個展で販売するような納期に縛られるビジネスには現実味を感じられなかったと言いますが、双子の弟が携わったくまモンの成功事例の経済効果から、たった一つの作品でも人を動かせるなら、アーカイブ化し、社会に広く届ける仕組みをつくれば、継続的な価値が生まれる、と気づいたと語りました。
社会の知的障害に対する認識が変わってきているという実感は?という問いに対しては、「まだ自分たちの周辺のみだと感じていますが」と答えた上で、「知的障害に対する認識を変えたいと感じたのは中学時代、『スペ』という差別的な言葉が流行り的に使われる中で、兄の存在を隠そうとしてしまった自身の原体験が、『スペをスペシャルに変える』ぐらいまでの会社になりたい」と話されていました。
これからについての展望についてお聞きしました。
松田さんが次に見据えているのは、「財団の設立」です。 スタートアップとして事業の拡大を目指す一方で、経済合理性だけでは拾いきれない価値を支えるために、ビジネスと福祉の間に“ちょうどいい塩梅”を築くことが必要だと考えています。
その拠点となるのが岩手。宮沢賢治が生きた地でもあり、「宮沢賢治×ヘラルボニー」という展示も実現。今後は、文化や地域に根ざしたインパクトの創出にも力を入れていきたいと語りました。
さらに、「1% for the Planet」のように、売上の一部を寄付できるような仕組みの福祉版を構想中とのこと。
財団を通じて、福祉に関わる多様な人やプロジェクトがつながり、誰もが異彩を放てる社会の基盤を築いていく――そんな新しい動きが始まっています。
今後の展開・お知らせ
日本を皮切りに、世界8カ国(フランス、台湾、中国、韓国、イギリス、アメリカ、カナダ、シンガポール)でクラウドファンディングを展開中!●国内からは、以下の2つのサイトからご支援いただけます。

映画『認知症世界の歩き方』特設ウェブサイト詳細・ご支援はこちら

READY FOR「人類の認知症観を変える映画をつくりたい」詳細・ご支援はこちら
企業のご協賛についてはこちらから
●全世界8カ国を舞台にしたクラウドファンディング
英語圏(アメリカ・イギリス・カナダなど)でのクラウドファンディングを2025年6月2日より開始。6月17日には台湾でのクラウドファンディングも開始しました。フランス等、他国でのキャンペーンも順次スタート予定です。
次回イベント予定

vol.3 福岡・オンライン日時:7月8日(火)18:30-20:30
ゲスト:田口一成(ボーダレス・ジャパン CEO)
詳細・申込はこちら
主催
issue+design(特定非営利活動法人イシュープラスデザイン)issue+designは、「社会の課題に、市民の創造力を。」を合言葉に、まちづくり、防災、医療、福祉、教育など、さまざまな社会課題に対して、デザインの力で解決に挑む団体です。市民一人ひとりの創造力を引き出し、社会をよりよくする仕組みを共につくることを目指しています。
特定非営利活動法人イシュープラスデザイン事務局(担当:宮崎)
HP:https://issueplusdesign.jp/
Mail:info@issueplusdesign.jp
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