メンバーがグループを脱退する。
かつてのK-POPでは、それだけで“危機”と受け止められることが多かった。
残ったグループは人気を維持できるのか、脱退した本人はソロで生き残れるのか。ファンダムが分裂し、どちらか、あるいは双方が勢いを失うケースも珍しくなかった。
だが最近、その前提を揺さぶるような事例が続いている。
象徴的なのが、6人体制となったENHYPENと、ENHYPENを離れたEVAN(ヒスン)だ。
「脱退=どちらかが失敗」ではなくなった
EVANは今年3月、ENHYPENを脱退。その後、ソロアーティストとして活動を開始し、9月7日には1stミニアルバム『DEATH OF ME』をリリースした。

同作は発売初週で約53万枚を売り上げ、“ハーフミリオンセラー”を達成。グループを離れた後も、確かなファンダムと購買力を維持していることを示した。
一方、EVAN脱退後に6人体制となったENHYPENも失速していない。それどころか、6人体制となって初めてリリースした8thミニアルバム『THE SIN : BLISS』で、米ビルボードのメインアルバムチャート「ビルボード 200」1位を初めて獲得した。
興味深いのは、両者が「どちらが正しかったのか」を争うような構図になっていないことだ。
EVANは9月7日のショーケースで、ENHYPENの「ビルボード200」1位について「本当に誇りに思っています」と祝福し、「それぞれの場所で良い姿を見せていくことが最善」と語っている。
グループを離れた本人も結果を出し、残ったグループもさらに大きな成果を収める。韓国メディア『文化日報』も、こうした状況を「ウィンウィン」と表現している。

ただ、さらに注目したいのは、その先だ。
EVANはENHYPENを離れたものの、所属事務所BELIFT LABまで離れたわけではない。
グループを抜けても、会社には残る
EVANは3月にENHYPENを脱退する際、「長い時間悩み続けた末に、会社が提案してくださった方向に沿って、ENGENE(ENHYPENファン)の皆さんにより良い姿で近づくために大きな決心をすることになった」と直筆の手紙で伝えていた。
同じく、前出のシューケースの際も「これからどのように音楽を届け、どんな形で見せていくのかについて悩んでいた」と説明している。
自身が制作した作品を会社と共有し、話し合いを重ねた末に、ソロアーティストとして歩むことになったというわけだ。つまり彼のケースは、グループ活動からは離れながら、同じ事務所の中で別のアーティストとして再出発したといえる。
これまでK-POPでは、グループ脱退と事務所退所が同時に起きるケースも少なくなかった。しかしEVANのケースを見ると、「グループに所属すること」と「その会社に所属すること」は、必ずしも同じ問題ではなくなっていることがわかる。
別の形を選んだのが、NCTを離れたマークだ。

マークは4月にNCTを離れ、その後、自身のクリエイティブカンパニー「Upper Room」を設立。9月10日に発表した新曲『My Friend』は、韓国の音源チャートで上位に入り、複数の国・地域のiTunesチャートでも好成績を記録した。
作詞、作曲、編曲まで自ら関わり、グループ時代とは異なる形で自身の音楽を作り始めている。
同じ“独り立ち”でも、道は一つではないということだ。
「残るか、辞めるか」の二択でもない
さらにBLACKPINKを見ると、別のモデルもすでに成立しているといえる。
4人はBLACKPINKとしてのグループ活動についてはYGエンターテインメントとの契約を維持しながら、個人活動では別々の道を選んだ。グループには残るが、個人の活動まで同じ会社に委ねる必要はない。
最近ではTWICEでも、ジョンヨンとチェヨンがJYPエンターテインメントを離れながら、グループ活動は継続するという形が現れた。

こうした事例を並べると、現在のK-POPで起きている変化が見えてくる。グループも事務所も離れて独立する人もいれば、グループを離れても事務所には残るパターン、そしてグループには残りながら個人活動だけ別の会社で行うパターンもある。「残留か脱退か」という単純な二択ではなくなっているのだ。
選択肢が増えた背景には、グループ活動を通じて個人単位でも強いファンダムやブランドが形成されるようになったことがあるだろう。
以前なら、グループを離れることは大きな看板を失うことでもあった。しかし現在は、グループ在籍中に築いた知名度や個人ファンダムを、その後のソロ活動へ持ち運ぶことができる。
K-POPグループは、キャリアの“終着点”ではなく、その後さまざまな方向へ進むための“母港”になりつつあるのかもしれない。
次に問われるのは「どこに所属するか」
だからこそ今後、さらに注目したいのが契約更新だ。
現在、ENHYPENとEVANはいずれもBELIFT LABに所属している。しかも、ENHYPENはグループとして結果を出し、EVANもソロで結果を残している。この“ウィンウィン”状態が続いた場合、事務所は将来、双方との契約を維持しようとするのか。

仮に将来、片方との契約を優先し、もう片方とは更新しないという判断になれば、その違いはどこで生まれるのか。
グループIPとしての価値や、ソロアーティストとしての収益性が判断材料になる一方、本人にとっても、制作の自由や活動方針を考えたとき、同じ事務所に残ることが最善なのかという選択がある。
脱退しても成功できる時代になったからこそ、今度は「なぜ同じ事務所に残るのか」という問いが浮かび上がってくる。
メンバーが別々の道を選ぶことは、もはや必ずしもグループの終わりを意味しない。
だとすれば、次に変わっていくのは、「グループに所属すること」ではなく、「どこに所属することを選ぶのか」というK-POPアーティストと事務所の関係そのものなのかもしれない。
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