Netflixの恋愛リアリティ『ラヴ上等』シーズン2の出演者たいちゃんが、韓国を活動拠点のひとつにするという。
たいちゃんは9月13日、自身のインスタグラムで「今後アパレルも立ち上げます」と明かし、「韓国も拠点にしていきます!」と宣言した。
韓国メディアも翌14日、この発言を「韓国進出宣言」として報じている。
一出演者の海外進出として見れば、それだけの話かもしれない。
だが、たいちゃんが新たな拠点として韓国を選んだことは、『ラヴ上等』という番組が現地でどのように受け止められてきたのかを考えるうえで、なかなか象徴的な出来事でもある。
「韓国では作れない」とまでいう理由
そもそも『ラヴ上等』は、韓国でも早い段階から注目を集めた。

昨年12月に配信されたシーズン1は韓国Netflixで公開初週3位に入り、日本のアン・スクリプテッド作品として初めて韓国の週間TOP10入りを果たしている。
なぜ韓国でここまで関心を集めたのか。
ひとつには、日本独特の「ヤンキー文化」そのものが、海外から見ればひとつの異文化コンテンツとして成立していることがあるだろう。
『東京リベンジャーズ』のように、ヤンキー文化を土台にした作品はアニメを通じて海外でも人気を集めており、漫画やアニメの中で見てきた“日本のヤンキー”が、今度は恋愛リアリティのなかに生身の人間として現れる。その珍しさ自体が、『ラヴ上等』を見るひとつの動機になったと考えられる。
もうひとつ大きいのが、出演者たちの存在感だ。
ある韓国人筆者による分析では、韓国の恋愛リアリティには、SNSで人気を持つ人物や高学歴など、ある程度“完成された”プロフィールを持つ出演者が目立つ一方、『ラヴ上等』の出演者たちはそこから大きく外れている点を注目された理由に挙げた。
言い換えれば、『ラヴ上等』の出演者たちは、“恋愛リアリティに出てきそうな人”に見えないということだ。
ただ、より注目したいのは、「韓国では作れない番組」という見方だ。
『THE FACT』はシーズン1について、「韓国では想像することさえ難しい、高刺激で破格の設定」と表現した。さらに『SBS芸能ニュース』は、韓国での人気を紹介しながら、「韓国では作られもしないし、作ることもできないテーマの、高刺激な恋愛リアリティ」とまで評している。

なぜ、そこまで言われるのか。単に出演者同士が激しくぶつかるからではないだろう。
『SBS芸能ニュース』は、「最近の韓国芸能界では、薬物問題や校内暴力、少年犯罪などの問題が相次いで話題となってきた。これらをめぐって世論も大きく分かれている。『ラヴ上等』の出演者たちは、偶然にも、そうした問題を想起させるような過去を歩んできた」と指摘している。
韓国では、芸能人に学生時代の校内暴力疑惑や少年期の問題行動が浮上すると、事実関係が完全に確定する前でも、ドラマや番組からの降板、広告契約への影響などに発展するケースが繰り返されてきた。
未成年時代の問題行動や少年保護処分歴が報じられた俳優チョ・ジヌンは、その後、芸能界引退を表明した。撮影を終えていたドラマ『シグナル』シーズン2も、9月14日現在、放送時期が決まっていない。

最近、女優として再スタートを予告したキム・ガラムも、学生時代の校内暴力をめぐる騒動のなかで活動を中断し、ガールズグループLE SSERAFIMをデビュー約2カ月で脱退した。本人は暴行やいじめについて否定している。
そう考えれば、過去に問題を抱えた人物たちを集め、しかも彼らを恋愛リアリティの“主人公”として真正面から据える企画そのものが、「韓国では想像することさえ難しい」という見方にも頷ける。
韓国では、過去の問題行動やそれをめぐる疑惑が、出演可否を左右する大きな材料になることが少なくない。『ラヴ上等』は、その“出演させること自体が難しい人物像”を番組の中心に据えている。

しかも『ラヴ上等』は、その過去を紹介して終わる番組ではない。出演者たちは恋をし、傷つき、仲間と衝突し、ときには自分の人生を振り返る。過去に問題を起こした人物という一面だけでなく、その後を生きている一人の人間として描こうとする。
「韓国では作りにくい」番組だからこそ見たくなる。その一方で、なぜ作りにくいのかを突き詰めれば、番組が抱える危うさにも行き着く。
「美化ではないか」という批判も
『SBS芸能ニュース』はシーズン1を取り上げた記事で、番組の人気や魅力を認めながらも、「犯罪美化」や模倣を誘発する可能性を問題提起した。
「過去によって現在の人間を決めつけることは偏見であり、先入観でもある。だが、美化することについても警戒しなければならない」。そんな難しい境界線を指摘している。
シーズン2では、その問題がさらに可視化された。

日本の法務省は8月、「更生保護」の周知を目的に同作とのタイアップを行ったものの、犯罪や非行を美化しているように見えるとの批判や、被害者への配慮を求める声を受け、最終的に企画を取りやめた。
法務省自身も「犯罪や非行そのものを肯定したり、過去のこうした行為を美化したり軽視したりする意図はなかった」と説明している。
この騒動は韓国メディアでも報じられた。考えてみれば、『ラヴ上等』が韓国で面白がられる理由と、批判される理由は表裏一体なのかもしれない。その危うさまで含めて、韓国では『ラヴ上等』が見られているのだ。
そんな『ラヴ上等』から、今度は出演者の一人が韓国を次の活動拠点に選んだ。
韓国メディアにも取り上げられるようになったたいちゃんが、現地でどこまで活動を広げていくのか。その動きは、『ラヴ上等』が韓国で残した余波を測るひとつの材料にもなりそうだ。
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