Disney+で配信中のサバイバル番組『占い師たちの運命バトル』。
2月11日に配信が開始されるやいなや、わずか12日間で韓国国内の「最も視聴された作品」となり、Disney+の韓国発オリジナル作品として歴代1位の視聴数を記録する大ヒット作となった。
本作は、巫堂(ムーダン)、四柱推命、タロットなど、韓国の占い界を代表する占い師たちがその腕を競い合うサバイバルバトルだ。49人の参加者が数々の試練を乗り越え、ただ一人の勝者を決定する。
そんな並み居る占い師たちの中で、圧倒的な存在感を放っているのがノ・スルビだ。メインビジュアルの中央にも鎮座している彼女だが、その凛とした佇まいの背景には、若くして母となり、世間の冷たい視線と己の宿命に翻弄されながらも、愛する娘のために絶望の淵から這い上がってきた重厚な人間ドラマがある。
“避妊拒否”で母に
ノ・スルビ(本名:ノ・ジュウン、1998年生まれ)の歩んできた道は、あまりに過酷だった。学生時代には激しいイジメに遭い、家庭では父親からのDVに苦しむなど、安らげる場所のない孤独な日々を送っていたという。

そんな中、18歳の時に当時の交際相手との間に新しい命を授かる。しかし、その妊娠の経緯も凄絶だった。彼女は「避妊をしてほしい」と訴え続けたが、相手に拒否され続けた末の妊娠だったという。
こうした背景もあり、彼女は2023年に若くして親になった人々を紹介するバラエティ番組『大人たちは知らない高校生ママパパ』に出演。当時、ゲストとして登場した彼女の重すぎる背景に、出演者たちは軒並み言葉を失っていた。
出産後、神が降りてきて“巫堂”に
出産後、さらなる試練が彼女を襲った。突然、「神病(シンビョン)」を患ったのだ。
韓国において「神病」とは、ある日突然、原因不明の激痛や幻聴、幻覚に襲われる超自然的な現象を指す。現代医学では説明がつかないこの苦しみから逃れる唯一の方法は、神を受け入れ、神と人間を繋ぐ霊媒師である「巫堂(ムーダン)」になるための儀式を受けることだけだと信じられている。
巫堂は、朝鮮半島に古くから伝わるシャーマニズムの司祭者だ。華やかな衣装をまとい、歌や踊り、時には刃物の上を歩く儀式を通じて、死者の声を届けたり、人々の悩みを取り払ったりする。日本でいうイタコやユタに近い存在といえるだろう。
養子に出すことも真剣に考えた過去
育児と、抗うことのできない巫女としての活動。この過酷な二重生活の中で、彼女は極限まで追い詰められていた。
前述の『高校生ママパパ』では、「非婚主義で子どもを育てたくなかった」「産んだ直後に娘の存在を否定した」「養子に出すことも真剣に考えていた」という衝撃の告白をしていた。
また、当時の心理検査では「娘の心の中に、母親という存在がいない」という衝撃的な診断も下された。母として、そして巫女として、暗闇の中でもがき続けていたのが当時の彼女だった。
番組の最後、製作陣は「娘に経済的な基盤を用意しようと最善を尽くしてきた母親ノ・スルビが、心理検査の結果に涙を見せたあと、カウンセラーとMCの真心のこもった助言で再び心を引き締めた。ノ・スルビが“ママ”としてドラマチックな変化を成し遂げることができるか見守ってほしい」と締め括っていた。
業界に新風
それから2年。絶望の淵にいた彼女は今、その宿命を力に変えて輝いている。
現在は単なる巫堂にとどまらず、自らを「巫俗(ふぞく)研究家」と称し、インフルエンサーや実業家としても活動。AIを用いた占術アプリ『ポケット巫堂ビビ』をリリースするなど、伝統と最新技術を融合させたビジネスを展開し、韓国の巫俗界に新風を巻き起こしている。
最近ではSNSを通じて、お腹に残った“妊娠線”をビキニ姿で堂々と披露し、大きな反響を呼んだ。かつては「養子に出したい」とまで思い詰めた彼女だったが、今ではそれを「一人の生命をこの世に送り出した誇り」として受け入れ、前を向いている。

(文=スポーツソウル日本版編集部)



