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ICTの光と影、その諸問題を解決するためのNGN

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日本電信電話(株) 代表取締役副社長 山田 隆持氏
 ITセキュリティ技術の展示会『第4回 情報セキュリティEXPO』において、NTT副社長の山田隆持氏の特別講演が開催された。山田氏は日本のブロードバンド普及の経緯と、理想のユピキタス社会を実現する上での諸問題を指摘。その解決方法としてNTTのNGN技術を披露した。

 山田氏はまず、日本がブロードバンド先進国となり得た理由について、「ADSLの普及が牽引し、光ファイバーへのシフトが順調に推移している」と概略を述べた。しかも、これは客観的な技術で、「実はNTTは光ファイバーに早くから着目し、インターネット以前から光ファイバーインフラを整えていた結果である」とした。実はNTTが光ファイバーの敷設を始めた年は1995年であり、その目的は電話系サービスの改善のためであった。

 補足すると、電電公社時代より日本の電話線は架線式、つまり電柱を伝う方式であった。メタリックな電線は風雨にさらされるため、概ね20年程度で交換することになる。民営化されたNTTは、幹線通信経路の光ファイバー化を進める一方で、電話線の交換の際にメタルから光ファイバーへのリプレースを進めた。つまり、1995年から2000年までは電話線用のための光ファイバー投資だった。ちなみに、アメリカのアル・ゴア副大統領が情報スーパーハイウェイ構想を打ち出したきっかけは、NTTの光ファイバー整備により日本がIT技術をリードすることに対する危機感だったと言われている。

 2000年に既存の光ファイバーインフラを活用してBフレッツサービスがスタートし、光ファイバーは幹線から事業所、家庭へと延長された。その結果、2006年までにNTT東日本では「き線点」の89%、NTT西日本は87%まで光ファイバーが到達している。これに呼応する形で、ADSLの加入者は2005年12月をピークに減少傾向へ転じている。集合住宅を中心にADSLから光ファイバーへのシフトが進んだためだ。

 現在、日本における通信サービスの加入者数は、インターネット接続が固定・移動回線合わせて1.1億超となっている。このうち、携帯電話を中心とした移動体インターネット接続が8000万回線を占め、固定インターネットの84%、約2500万回線はブロードバンドだ。もちろんこれはNTTの独占ではなく、さまざまなキャリアやプロバイダーの競争が働いており、そのおかげで日本のインターネット接続料は世界一安い。

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【左】日本におけるサービスごとの加入者数【中】ユビキタスコンピューティングのイメージ【右】ICTの光と影

 このように、日本は世界でももっともブロードバンドが普及している国である。しかし、市場のサービス価格には下げ止まり感があり、これ以上の競争は価格ではなく付加価値要素になっている。また、移動体通信のブロードバンド化が進展したことで、ユビキタス社会が目指す、「いつでも」、「どこでも」、「だれでも」ネットワークにアクセスできる環境が整った。ユビキタスにより、人々の暮らし、社会の構築、ビジネスの効率化、娯楽など多方面で情報ネットワークのメリットを享受できるようになった。

 山田氏はこれを「デジタルエコノミー」から「ユビキタスエコノミー」へのシフトだと定義した。その上で、人々が得るものはメリットだけではなく、諸課題にも直面すると警告した。諸課題とは、

1)トラフィックの急増によるデータ流通の渋滞、
2)ネットセキュリティの脆弱性を突く攻撃やサイバーテロという脅威
3)なりすましなどのIPの悪用、
4)地震などの大規模災害によるダメージ

の4点である。山田氏はこれらについて、図やグラフを示しつつ具体的に紹介した。動画ファイルの流通などによるトラフィック増加問題は我々にも予想できる部分だが、ウィルス届け出件数やサイバーテロの容疑者検挙状況のグラフは具体的で説得力のある数字が示されていた。

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【左】NTTの中期経営戦略【中】NGNの構成【右】トライアルの参加事業者

 NTTはこれらの課題の解決を次世代ネットワーク(NGN)に見い出し、中期経営戦略として取り組んでいる。この戦略は市場の要求に対応すること、ネットワークの諸課題の克服、社会的課題の解決の3つの柱によって展開される。そのキーワードはIP化、光化、第三世代携帯電話である。具体的には、

1)固定通信の移動通信の融合によるブロードバンド・ユビキタスサービスの開発と普及2)柔軟でシンプルなネットワークによってサービスを多様化し、品質やセキュリティの担保されたネットワークを構築
3)固定電話からIP電話 メタルから光への移行
4)ブロードバンド・ユビキタスサービスの事業機会の拡大
5)競争力の強化と財務基盤の確立

である。このために必要不可欠な要素が次世代ネットワーク技術というわけだ。

 次世代ネットワークのレイヤ構造は、従来のネットワークにも存在したアクセス層、コアネットワーク層、サービス制御層に加えて、品質やセキュリティを担うアプリケーション/マネージメント層を構成することだ。この層の追加による次世代ネットワークの特徴は次の4点に集約される。

■品質保証(QoS)
 インターネット上で提供されるアプリケーションに相応しい品質クラスを選択できる。品質クラスを高くするほど帯域がしっかり確保される。例えはテレビ電話やテレビ会議システム、医療の分野で途切れずに高品質な映像を通信する。

■セキュリティ
 IP化により、回線や機器ごとに割り当てた電話番号やIPの発信者チェックを行って、なりすましを防止する。また、異常なネットワークトラフィックを水際でブロックする。

■信頼性
 電話で培ってきた安全や安心のノウハウを受け継ぎ、回線の冗長化やトラフィックコントロールを実施。重要な通信を確保する。

■インターフェースのオープン化
 高品質のイーサ機能を多彩なアプリケーションに対応させるため、異業種、他業界との連携を重視。通信機能の新たな進化を促すためにインターフェース仕様を公開する。

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フィールドトライアルの例:【左】ハイビジョン映像【中】遠隔病理診断システム【右】ユビキタス見守り

 NTTはこうした取り組みについてフィールドトライアルを実施している。トライアルは2005年から計画が始まり、2006年第2クォーターまでに参加企業の選定や仕様の決定が行われた。2006年12月からNTTの社宅などを使ったフィールドトライアルが開始されている。2007年4月からは一般のお客様に対するモニター実験も始まった。NTTはこれらの検証を2007年上期までに実施し、早ければ2007年下期には次世代サービスを本格展開する予定だ。
 最後に山田氏はNGNを利用した具体例を挙げた。ハイビジョンによるテレビ会議は相手を等身大でスクリーンに映し、まるで実際の会議が行われているような雰囲気を作っていた。遠隔病理診断システムは、従来は手術で取り出した組織を病理解剖し、結果を出すまでに1週間要するところを開腹中に実施して1回の手術で済ませるとアピール。ユビキタスと組み合わせた見守りサービスは、GPSや街角の監視カメラを連携させて、通学路の子供を親がリアルタイムで遠隔監視できる。

 講演の最後に、山田氏はこれらのサービスを実現するための基礎技術を紹介した。曲げに強い光ファイバー、光のままで情報経路を切替可能な光ルータ、1本の光ファイバで14テラビットの情報を扱える大容量光伝送技術などである。これらを紹介する短いビデオも上映された。

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【左】曲げフリー光ファイバー【中】コアネットワークの光技術【右】14Tbpsの光ファイバー技術

 山田氏の講演は日本のITネットワークの優秀性がどのような歴史に裏付けられているかを理解させ、その上で新しいサービスとそれを支える技術を紹介した。最後の基礎技術の紹介で、中盤の構想やフィールド実験の実現性を予感させた。次世代ネットワークに初めて触れる来場者にとっても解りやすいプレゼンテーションだった。
(杉山淳一@RBB 2007年5月16日 23:14)
キーワード: NGN QoS オープンネットワーク NTT

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