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★ Slash Gamesは、2007年6月1日より「インサイド」になりました
Shoot it! - #027 ゲーマー視点で見た最新フラットディスプレイ事情
4月18日
エフ・イー・テクノロジーズ
 4月11日から13日まで開催された国際フラットパネルディスプレイ展「Display2007」を見学した。ディスプレイの話ばかりが続いて恐縮だが、いま、もっとも元気の良い分野はフラットパネルディスプレイだということも事実。しかもこのイベントは最新の有機EL、液晶、プラズマ、商品化が待たれるFEDなどを直接見るチャンスでもある。出展全体の傾向としては、大きな画面で滑らかな動画、明るさ、発色をアピールしていた。しかし私はゲーマーである。前々回のこのコーナーで、反応速度と遅延を学んだばかり。各メーカーの担当者に、ゲーマーにとってその製品は使えるのか、と直撃質問を試みた。

 まとめるとこうだ。

 ・新技術「FED」はゲーマーの希望の星だ
 ・液晶系パネルも新技術で応答速度は改善へ
 ・もともと応答の早いプラズマは大型化を志向
 ・ソニーが先行する有機ELは今後に期待

 まずは今回の出展でもっとも注目されたソニーの有機ELテレビ。デモ映像の作りも良く、とてもきれいな映像だ。有機ELは素子自体が発光するため、液晶のようなバックライトシステムが要らない。だから製品をとことん薄くできる。展示されていた11v型はなんと3mmという薄さ。ボール紙ほどだ。しかし、私の興味は薄さではない。反応速度と遅延だ。

 説明員氏に反応速度と遅延について訊ねた。展示されている有機ELテレビは映像回路を経由して絵作りをしているそうだ。「液晶ディスプレイのようにフレーム遅延の可能性がありますね。実はゲーム用途ではそこがシビアな問題です」と問いかけると、説明員氏は困った表情をされた。私たちはやっとテレビを作り上げた段階で、PC用途向けの開発はこれからなんですよ、と。

 確かに。私の問いかけは時期尚早だ。

 同時開催されている「フラットパネルディスプレイ研究開発・製造技術展」にも有機EL関連の出展が多かったが、どこも小さなパネルや色見本程度である中で、ソニーはもうテレビを作り上げた。有機ELでテレビを作ること自体が快挙なのだ。

 ただ、説明員氏によると有機EL自体のポテンシャルは高く、応答性は液晶の比ではないという。映像回路をチューンアップすれば液晶よりも遙かに良いものができるそうだ。まずはテレビとしての製品開発に注力することになるだろうけれど、今後の進捗に期待したい。

 東芝松下ディスプレイテクノロジーは液晶の可能性を追求する。OCB(Optically Compensated Bend)という方式の液晶ディスプレイは応答速度が2ミリ秒(1000分の2秒)。家庭用テレビ向けとしては最速だ。しかし、PC用なら2ミリ秒の製品は既にある。ではOCBのメリットは何かというと、液晶自体のポテンシャルの高さと省電力性能だ。

 従来の液晶はシャッター方式で、液晶がバックライトを塞いだり開いたりして発光をコントロールする。これに対してOCBは、液晶を簾のように並べて、真横から力を与えることで簾を弓なりに曲げ、隙間を作って光を透過させる。液晶を開閉するよりも少ない力で光をコントロールできるため、応答性が高く省電力になるというわけだ。

 PC用の従来型2ミリ秒の液晶パネルの場合と比較した場合、OCBは省電力なので大型化しやすいと考えられる。さらに、現在は2ミリ秒であるけれど、今後は1ミリ秒、さらには限りなくゼロへと応答速度の向上の可能性も見えてくる。展示ではCRTや在来型液晶との比較が行われたほか、寒冷地用の自動車内ディスプレイパネルとして、マイナス40度で動作させる比較も行われていた。ゲームを意識した展示ではなかったが、このOCBと映像回路のチューンの方向は期待できる。液晶はまだまだいけそうだ。

 プラズマの総本山パイオニアは、液晶との比較優位を押し出した展示だ。ブース内の小部屋に4枚の大型ワイドディスプレイが並べられている。ちょっと見ただけでは違いがわからないが、よく見ると左がもっとも動画をクリアに再生しており、中央より2枚はややブレる程度で同等。一番右は動画がぼやけていた。この並び順は、左からパイオニアの最新式フルハイビジョンプラズマディスプレイ、他社製の120フレーム対応ディスプレイ、在来のプラズマディスプレイ、60フレームの在来型液晶ディスプレイだ。

 この展示の意図を担当者氏に尋ねた。理由はふたつ。今年、液晶陣営がこぞって商品化した120フレーム対応の液晶よりも、最新型プラズマの方がクリアな動画を再生できるとアピールするため。もうひとつは、在来型プラズマは120フレーム対応の液晶と遜色のない動画を再現できていたことをアピールするため。

 120フレーム版液晶は、映像ソースが60フレームで入力された場合に、映像回路側でフレーム間にもうひとつのフレームを合成することで、さらに滑らかな動画を作っている。しかしそれでも在来型プラズマレベル。要するに、液晶陣営は120フレーム版でやっと在来型プラズマに追いついたんですよ、と言いたいらしい。

FEDの説明
 しかし、ゲーマーにとっては映像回路に余計なことをさせて遅延されては困る。ここで説明員氏に応答速度と遅延について説明し、プラズマはゲームに最適かと訊ねた。「液晶もプラズマも映像回路を経由しているため遅延は発生する。しかし、プラズマはフレーム合成など余計なことをしなくても良い。したがって、液晶に比べれば遅延を減らせる。画面の応答性も高い」という。ところが「映像回路のチューンよりは、プラズマの大型化、そして液晶に対する弱点とも言える明るさの問題を解決する方が先決」という。そこで、「明るさは現状でも良いです。なぜならゲーマーは暗いところで遊びますから! ぜひゲーマー向けという視点の商品化も考えてみてください」とお願いした。

 最後に訪れたブースはエフ・イー・テクノロジーズ。大手家電系に比べると地味なブースだが、実はここがゲーマーの大本命FEDだ。ナノ単位の小さな素子で電子を発生し、表示板に衝突させて発光させるという技術。電子をぶつけて発光、というあたりでピンと来た人もいるだろう。つまりこれはナノ単位のブラウン管モニタを何万個も並べて作ったフラットディスプレイだ。原理的にはブラウン管と同じ。つまり、遅延もなければ応答速度もブラウン管と同等である。なんと、これこそはCRTの代替品にふさわしい。次世代ディスプレイの行方を案じていたゲーマーは、やっと運命の人を捜し当てた。

 思わず担当者氏を捕まえて質問攻めに。放送用機器、業務用として売り込もうと考えていた担当者氏も、「ゲーマーが求めていたモノはこれです」と説明すると興味深そうに聞いてくれた。「訴求分野を広げたいのでぜひ観てください」と案内され、奥にある最新モデルとCRTとの比較コーナーも見せて頂いた。エフ・イー・テクノロジーズはnano-Spindt Field Emission Displayと呼ぶ次世代モニタについて20型までの試作を完了した。今後は投資を募ったり、製品開発メーカーに技術をライセンスして生産して貰うなどで商品化を目指すという。構造的には既存の液晶パネル工場で生産できる段階に近づいたという。

 これは欲しい。単価が高くなるなら、とりあえず携帯ゲームに搭載したらどうかとも思った。電子銃ということで液晶より目が疲れそうかな、という心配もある。しかし、そんな心配を吹き飛ばすほどFEDには魅力を感じた。

 実はFEDに似た方式でSEDというディスプレイも存在する。東芝とキヤノンが共同開発する予定だったが、ライセンスの問題が発生しており足踏み状態になっている。フラットパネルディスプレイ研究開発・製造技術展のほうにキヤノン関連会社の展示があったものの、そこにもSED関連の展示物は一切無し。私はFEDよりも先にSEDのニュースを聞いており、SEDに密かな望みを持っていただけに残念だ。

 各社担当者氏にビックリされたり困惑されたりしながらブースを巡り、ディスプレイの世界の深さを知った。どのメーカーも画面で美しく再生することに注力している。それは結構だが、画面をインタラクティブなインターフェースとして使うことについて関心が薄そうで寂しかった。フレーム遅延、応答速度の問題はゲームだけではなく、内視鏡手術、水位や火山などの監視にも関わることだとも思うのだが。そんな落胆を感じつつ、FEDという希望を見つけた。ゲーマー用の次世代ディスプレイの芽だ。これは大きな収穫だ。
(杉山淳一@RBB)
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