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★ Slash Gamesは、2007年6月1日より「インサイド」になりました
Shoot it ! - #022 2分化するEスポーツ
3月14日
WCGに追加された2種目
 今年マカオで開催されるアジア室内競技大会でEスポーツが採用された。まだ正式発表には至らないけれど、そこに日本代表選手を送り込むための動きはある。もしキミがレースゲームが好きなら『Need For Speed Carbon』、サッカーゲームに自信があるなら『ウィニングイレブン(Pro Evolution Soccer 6)』の練習を始めたほうがいい。日本の競技人口の少なさをチャンスと考えるなら『NBA Live 07』にチャレンジする手もある。

 対戦ゲームの国際大会WCG(ワールドサイバーゲームズ)は、3月12日に新たに2種目の採用を発表した。『Carom3D』というPC用のビリヤードゲームと、『Tony Hawk’s Project 8』というXbox360用のスケートボードゲームだ。このふたつのゲームの共通点は、既存のスポーツをコンピュータで再現していること。ココでは仮に“バーチャルスポーツ”という分野に括っておきたい。アジア大会の3種目もバーチャルスポーツ。WCGでは今回追加された2種目の他に『FIFA Soccer 07』と『Project Gotham RacingR 3』もバーチャルスポーツに含まれる。私は以前WCGで『FIFA Soccer』を観戦したが、観客たちが大いに盛り上がり、実際のサッカースタジアムと同様にウェイブも起きた。ヨーロッパ勢が音頭を取っていたけれど、アメリカやアジアの観客も参加し、観客たちの一体感が面白かった。

 『Carom3D』と『Tony Hawk’s Project 8』の追加により、WCG2007では全12種目のうち三分の一がバーチャルスポーツになった。今、Eスポーツ界はバーチャルスポーツへ傾倒しつつあるようだ。これはEスポーツが一般社会に広まっていくなかで当然の流れだと言える。Eスポーツが人類にとって重要な文化となるためには、老若男女誰もが楽しめる競技であるべきだからだ。そのためには、バーチャルスポーツがもっとも手っ取り早い。既にルールは知られているから競技自体を理解しやすいし、従来Eスポーツの代名詞となっていたFPS(射撃戦)のように、相手を銃やナイフで殺す場面もない。

 画面に血が飛び散ったりしないし、身体がバラバラになったりもしない。これは親子で競技場にEスポーツ観戦に出かけたり、お茶の間でEスポーツ番組を楽しむためには必須だ。だからアジア室内競技大会の種目選定に「暴力的、残虐的表現がないこと」と明記された。これは正しい。間違っていない。しかし、私には寂しい流れでもある。

 Eスポーツが文化の主流になることは喜ばしい。でも、それが今までEスポーツ文化を育んできたFPSやRTS、格闘ゲームなどの“戦闘系ゲーム”を否定する形になっていいのか。戦闘系ゲームだってスポーツだ。そこには今までのスポーツと同じ魅力がある。友情やチームワーク、相手を尊敬する気持ち、国際交流、技術の研究と伝承……それらの要素は戦闘系ゲームにもある。バーチャルスポーツと戦闘系ゲームに、どんな違いがあるというのだろう。暴力的な表現、好戦的な設定があるというだけで否定してほしくない。

 『Counter-Strike』という射撃戦ゲームがある。8年以上もゲーマーに親しまれ、競技志向のプレイスタイルを生み出し、数々の世界大会の競技種目となっている。Eスポーツの発祥をQuakeなど1対1の射撃戦ゲームとするならば、5人対5人で闘う『Counter-Strike』はチーム戦の始祖であり、高度な戦略性を加味した功績がある。日本でも根強い人気があり、プレーヤーが自主的にオンラインリーグ『CSCTL(Counter-Strike Clan Tournament League)』を立ち上げた。最新シーズンの参加選手は29チーム約300名にのぼる。

盛り上がるCSCTL
 “自主的に”とはいえ、主催者のtax氏に賛同した仲間たちが役割を分担し、競技ルールの策定や違反行為のチェック、スコア管理がしっかり行われている。試合の模様はストリーミング放送によってオンラインで観戦できる。そこでは実況中継や解説、有名プレーヤーのゲストコメンテーターも登場する。プロスポーツのテレビ中継とまったく同じ感覚で楽しめる。今週末はシーズン2の決勝戦が行われる予定で、私も観戦が楽しみだ。今はバーチャルスポーツが注目されているが、戦闘系ゲームも盛り上がっている。揺るぎないEスポーツ文化がここにある。これは他のFSやRTSでも同様だ。

「これからのEスポーツはふたつに分かれていくと思いますよ」そう語るのは、AOGCでEスポーツに関する講演を行った電通スポーツ事業局の竹田恒昭氏だ。Eスポーツの実態が変わっていくのではなく、従来のEスポーツのほかに、新しいEスポーツができる。そして両者が共存していくのだ。なるほど、日本のEスポーツ界はまだまだ小さいから、私には分割させるなど思い至らなかったけれど、ふたつのEスポーツが存在し、互いに発展するというアイデアは実に前向きだ。

 ここで僕が思い至るのは、アマチュアレスリングとプロレスリングの存在だ。どちらもレスリングだが、両者の方向性は異なり、どちらも発展している。野球にもサッカーにもプロとアマチュアがある。そこで、こういう定義ができる。従来の戦闘系EスポーツはプロフェッショナルEスポーツとなり、オリンピック種目となるバーチャルスポーツはアマチュアEスポーツになる。これで両者の関係がスッキリする。

 ただし、プロとアマの定義を“競技の対価として金銭を得るか否か”と捉えたとしたら、見方を誤ってしまう。実はスポーツの世界でも“競技によって金銭をなどの対価を求めない”というアマチュア主義はとっくに崩壊している。オリンピック選手に例えると、共産圏の選手たちはオリンピック参加選手になる国が生活の面倒を見てくれる。その生活費は競技参加の対価だから、国がスポンサーとなったプロ選手だと言える。資本主義圏も同様で、強化選手には国やJOCから補助金か出るし、統括団体にスポンサーが付けば、その資金は間接的に選手に提供されている。こうしてプロの範囲を広げると、オリンピック選手に真のアマチュアはほとんど存在しなくなる。したがって、1974年にオリンピック憲章からアマチュア規定が削除されている。

 それでは現在、プロとアマをどう定義したらいいだろう。私はそれを“娯楽重視”と“教育重視”の観点で再定義してみたい。この定義があると、プロレス同好会というアマチュア集団の扱いがスッキリする。プロレス同好会もアマチュアレスリング部も金銭的な対価を求めていない。しかしプロレス同好会は娯楽重視であり、アマチュアレスリング部は教育重視である。プロEスポーツだからと言って全員が職業選手を志向する必要はない。広く社会に認められたいなら、アマEスポーツを志向すればいい。

 アマチュアEスポーツの発展はプロフェッショナルEスポーツにとっても良いことかもしれない。スポーツの教育要素についてはアマEスポーツが担ってくれるから、大衆文化としての娯楽性を追求できる。なんでスポーツなのに銃なんだ、という問いかけに対して、そのほうが面白いからだ。本気になれるからだ、と割り切れるからだ。戦闘系ゲームのスポーツ性は、教育や道徳の縛りから解放される。だから今まで以上に盛り上がり、興行的にも成功していくに違いない。

 プロフェッショナルEスポーツの発展はアマチュアスポーツの発展を助けるだろう。ゲームは暴力的、非教育的なものもある、という批判を“カテゴリが違う”と封じることができる。そのためには競技種目の選定を慎重に行う必要がある。その努力がEスポーツの社会的認知に繋げるだろう。学校のクラブ活動でアマチュアEスポーツ部が発足したり、地域に密着したリーグが誕生するかもしれない。大学対抗戦、Eスポーツ甲子園、都市対抗Eスポーツなど、Eスポーツの新しい形を開拓できるはずだ。

 プロフェッショナルEスポーツとアマチュアEスポーツ。これは対立の構図ではなく、協調する仕組みだ。選手たちも進路をどちらかに限定する必要はない。その時の気分で、アマとプロの両方の競技を楽しみ、上手に付き合えばいいのだ。片方が盛り上がれば、波及効果でもう一方も盛り上がる。そんな仕掛け作りを考えていくべきだ。
(杉山淳一@RBB)
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