★ Slash Gamesは、2007年6月1日より「インサイド」になりました
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★ Slash Gamesは、2007年6月1日より「インサイド」になりました
Shoot it ! - #21 Eスポーツが進化させるIT技術
3月7日
最近、映画館での映画鑑賞がつらくなってきた。映像がちらついて見える。今までは気にならなかったけれど、パラパラマンガを高速にパラパラさせたような感じだ。それは実写映画でもアニメでも同じ。しかし、DVD映画をテレビで見ると感じない。つまり、フィルムのちらつきが気になるのだ。もしかしたら老化現象で目が弱っているのだろうか。
いや、私には思い当たることがある。それは3年ほど前に聞いたFPSゲーマーの話で、「ゲーム画面を見やすくするためにフレームレートを上げていき、それに慣れてしまうと、映画のコマが見えるようになってしまうんですよ」というものだった。PCゲームのフレームレートはだいたい60fps(フレーム・パー・セカンド)。これほど高速に書き換えられる動画を見慣れてしまうと、秒間24コマの映画にちらつきを感じて頭痛を起こしたり酔ったりするという。まさか、と思っていたけれど、どうやら私もそう感じてしまうようになったらしい。
フレームレートとは1秒間に何コマの絵で動画を作るか、のこと。アニメも実写フィルムも原理はパラパラマンガと同じで、映画では24コマの静止画を連続して表示させている。しかし、初めて映写機が開発されたときは秒間10コマで作られていたそうだ。その後、もっとなめらかに動かそうとして秒間16コマの映写技術が開発された。無声時代の映画はほとんど秒間16コマだったようだ。しかし、映像と音声を同時に記録するトーキー時代になると、秒間16コマでは音声面で不具合があった。そこで秒間24コマの映写機が開発された。人間の目の残像は、秒間24コマで充分に動画を楽しめた。
しかし、ゲーマーのフレームレートへの欲求はもっと高い。競技志向のプレーヤーになると、最低限100fpsは欲しい、と思うそうだ。競技志向のFPSプレーヤーにとっては動画性能はスコアに関わる重大な問題だ。銃を撃ち、敵に向かって弾が飛ぶ。着弾。そこは1ドットの差でアタリとハズレが別れる厳しい世界である。敵の動きがなめらかに、そして銃の照準がスムーズに動いてくれなければ困る。敵の動きを予測しようにも、画面が少しでもギクシャクしていれば思い通りに行かない。これは相当なストレスとなる。
ここ数年、プロセッサと同じくらいかそれ以上に飛躍的な性能向上を果たしたPCパーツはビデオカードだ。なぜ高価なビデオカードが開発され続け、それに対する需要があるのか、その答えはゲーマーが望んでいる「高解像度でなめらかな描画」にある。ビデオカードの処理能力にはそれぞれ上限があり、解像度を高くして画面の情報量を増やすと、相対的にフレームレートは下がる。ゲーマーは高解像度でなめらかな表示を得るために、より処理能力の高い(つまり高価な)ビデオカードを買うというわけだ。ゲーマーだけではない。ゲーム開発者たちもビデオカードに対して「もっと、もっと」と言いつづけている。ビデオカードの性能が上がれば、もっと自由でリアルな表現が可能になるからだ。例えば、風の影響で複雑に波立つ湖面、その水底には魚が泳ぐ。水や空気の濁りや揺らぎ、光の屈折で、その魚は見えたり見えなくなったりする。そんな表現が可能になる。10年前は1枚の湖面を描き、波の形で固定された物体に貼り付けた。もちろん波は動かないし魚は動かなかった。この欲求にはゴールはない。だから今もビデオチップの開発は続けられている。
画像表示ではもうひとつ重要な要素がある。ディスプレイだ。いまやショップ店頭では液晶ディスプレイが全盛だが、競技志向のゲーマーは液晶ディスプレイを嫌っていた。理由は同じ。リフレッシュレートが低いからだった。競技志向のプレーヤーたちは「液晶ディスプレイはまだブラウン管式ディスプレイを代替できる性能になっていない」と考えている。オフィスやWebブラウジング程度なら差はないが、激しい動きを伴うアクションゲームでは、ブラウン管のほうが圧倒的に優れている。
市場では圧倒的に液晶のシェアが拡大しているが、それは動画性能以外の要素でブラウン管式よりも圧倒的に優れているからだ。省スペースだし、軽いし、目が疲れないし、省電力だ。しかし動画性能ではブラウン管に敵わない。高速な液晶をうたうハイビジョン液晶テレビが発売されているのは、裏を返せばこれまでの液晶が遅かったことの現れである。
しかし、液晶技術もまた確実に進歩している。液晶はシャッターで光を遮ることでピクセルの点灯をオンオフする。だから動画の描画性能は液晶シャッターの速度が判断の指標になる。数年前、私はシャープ製の高性能液晶を搭載したノートパソコンと、当時の標準的な液晶を搭載したノートパソコンを比較したことがある。かたや40ms(ミリセカンド)、シャープの高性能液晶は25 ms。その差は歴然としていた。40msでFPSゲームをプレイした場合、視界を動かすと、風景が紙をめくるようにモタモタと表示された。しかし25msでは多少の残像は残るものの、かなり改善されていた。
そしていま、ゲーマー用と名打った液晶ディスプレイの液晶シャッターは10ms以下。BenQ社のFP93GX+という機種は白黒5ms、中間色2msまでスピードアップされている。家電に目を向ければ、PC入力に対応したシャープのAQUOSシリーズの新モデルは6msを達成している。液晶技術は進化し、どんどんスピードアップされている。しかし、それでもEスポーツ志向のゲーマーには「もっと速く」という欲求がある。ブラウン管ディスプレイと同等の動画表示をするためには、応答速度は限りなくゼロに近づく必要がある。
Eスポーツは技術の進化を望んでいる。エンジニアがその期待に応える。その良好な関係がIT技術を向上させるパワーになる。それはモータースポーツと自動車産業の関係とよく似ている。モータースポーツでは今もコンマ1秒の闘いが続けられているだろう。同様に、Eスポーツもミリセカンドの闘いが繰り広げられている。そこからIT産業が得られるものは大きいと私は信じている。メーカーの方々には、コストダウンの一方で、スペックを上げていくことも諦めないでいただきたい。
(左)BenQのFP93GX+。応答速度2msを達成したPC用液晶モニター、(右)PC対応の大型液晶テレビ、シャープAQUOSシリーズ。亀山フルハイビジョンモデルは応答速度6ms
(杉山淳一@RBB)
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