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★ Slash Gamesは、2007年6月1日より「インサイド」になりました
【AOGC2007】『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン アングマールの影』の世界同時期発売の狙い−さくらインターネット株式会社 社長 兼 CEO 笹田亮氏
3月1日
さくらインターネット 社長 兼 最高経営責任者 笹田亮氏
国内大手インターネットデータセンターでありながら、昨年MMORPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ・オンライン ストームリーチ』のサービスを開始した「さくらインターネット」の社長 兼 最高経営責任者 笹田亮氏による講演をレポートする。当カンファレンスの内容は、同社が2007年サービス開始予定の新作MMORPG『ロード・オブ・ザ・リングス オンライン アングマールの影』(以下、LOTRO)の紹介と、欧米のタイトルを日本国内でサービス展開するときの注意点についてである。
まず始めに、笹田氏はLOTROについて簡単な説明を行なった。ゲームのイメージムービーを流した後、タイトルの紹介がなされた。本作は米国Turbine(ターバイン)社が開発を行なっているMMORPG。『ロード・オブ・ザ・リング』の世界観を忠実に再現した作品で、版権を管理するトールキンエンタープライゼスの協力を得て鋭意開発中である。100以上の多彩なエリアはすべて合わせると5千万平方メートルにも及び、ワールド内には映画・小説に登場したキャラクターや土地も登場。2007年に発売されるMMORPGのなかでは、世界的に抜群の注目度を誇っていると言う。
LOTROについてはすでに発表されている内容だったため、サプライズはなかった
しかし、これだけ前評判の高いMMORPGだが「日本国内でサービスを行なうのはチャレンジングだ」と考えるのがゲーム関係者の率直な意見だろう。笹田氏もまた、多くの人からこのような問い合わせを受けてきたと言う。 実際、いままでに何本もの欧米産大作MMORPGが日本国内でサービスを行なってきたが、成功と呼べたのはごくわずか。実情は『エバークエスト』、『エバークエスト2』、『ダークエイジ オブ キャメロット』、『スター・ウォーズ ギャラクシー』、これらすべてのタイトルが日本国内でのサービスを終了してしまっていることを例に挙げた。
■欧米産MMORPGのサービス時期■
・エバークエスト
サービス開始 2003/2/5
サービス終了 2006/5/30
・エバークエスト2
サービス開始 2005/6/16
サービス終了 2006/6/30
・ダークエイジ オブ キャメロット
サービス開始 2005/1/31
サービス終了 2006/12/1
・スター・ウォーズ ギャラクシー
サービス開始 2004/12/23
サービス終了 2006/3/31
日本でもファンの多いスター・ウォーズを題材としたMMORPGだが、残念なことにサービスは終了
それなのになぜ、笹田氏はLOTROの国内展開を考えているのだろうか? それは、「いままでのMMORPGは大きな失敗をしてきたから人気が出なかっただけであって、LOTROはこの失敗を犯さなければよい」と語る。欧米のMMORPGとアジアのMMORPGの大きな違いは、"キャラクター"と"課金体系"が注目される。欧米産のMMORPGが日本で成功しない理由もまた、これらふたつの要因が原因と言われる。だが、笹田氏の見解は異なる。
アニメやキャラクター文化が根強い日本では、欧米MMORPGの人物グラフィックは好かれない傾向にある
会場のスクリーンには2点の資料が映し出された。この資料はOne's Communicationsがオンラインゲーマーに対して行なった意識調査結果で、「オンラインゲームで大事だと思うこと」と「そのオンラインゲームを初めに楽しいと思ったとき」について。前者の回答でトップだったのは「友達と一緒に遊ぶ」。この選択肢を選んだ回答者は全体の約40%を占め、2位の「チャットやメール」とは倍以上の差があった。後者の回答の1位は「固定の友達ができた」であり、こちらも約40%と高い割合を占めている。2位の「助けてくれた・教えてくれた・親切にしてくれた」の回答が約13%だったので、3倍もの開きがあることになる。
この結果を元に笹田氏は、これまでの欧米のMMORPGタイトルが失敗してきた理由は、「コミュニティーの育成・生成」が問題だったのでは? と推測した。
One's Communicationsの資料。オンラインゲームを続ける要因は「友達の有無」であることがわかる
これまでの欧米産MMORPGは、アメリカでのサービスが開始されてから1年以上経過して、初めて日本語版のサービスが始まっている。これはとても大きなタイムラグであり、大きな問題点である。日本人にとって、欧米のMMORPGが日本語化されるのは喜ばしいことであるが、コアユーザーと呼ばれる一部のプレイヤーにとってはさほど重要ではない。たとえプレイヤーが英語を得意としない場合でも、英語版が発売されたらすぐにプレイしてしまうのだ。彼らが遊べる理由は、ファンサイトやWikiの存在が大きい。欧米のMMORPGは発売後すぐに日本語で親切丁寧に解説されたサイトができる。有志が作ったこれらのサイトを見ながら遊べば、たとえ難解な英語が使われるMMORPGであっても苦労せずにプレイ可能だ。彼らコアゲーマーにとって英語版のMMORPGは、日本語入力ができないことを除けば日本語版となんら変わりがないのだろう。その結果、「英語版のままでも遊ぶ」という意志のあるコアユーザーは、日本語版のサービスが始まる1年後を待つ前にプレイしてしまう。これが実情である。
そして、英語版のサービス開始から1年以上が経過して、ようやく日本語版が始まる。しかしすでにコアユーザーは英語版をプレイし、そこでギルドや友達を作っている。しかも、サーバーには長い時間をかけて育て上げたキャラクターが存在する。日本語版ができたからと言って、いままで築き上げたコミュニティーやキャラクターを捨ててまでして日本語版でやり直す……とは考えにくい。
そのため、日本語版でプレイするユーザーは、ライトユーザーと呼ばれる人たちばかりになってしまう。彼らはタイトルに興味はあるのだけれど、諸事情により数日に一度くらいしかプレイできないユーザー。当然、このようなユーザーばかりが何人集まったとしても、コミュニティーはなかなか形成されない。コミュニティーが生まれなければ、友達も作りにくい。
欧米産MMORPGが日本でヒットしない理由は、ローカライズにかかる時間がネックだと笹田氏は語った
これを踏まえて、笹田氏は日本でヒットしたMMORPGについての見解を続けた。日本のMMORPGを例に挙げると、代表は『ファイナルファンタジー11』と『信長の野望オンライン』だろう。また、韓国産MMORPGの『リネージュ2』や『ラグナロク オンライン』も好評を博している。韓国産でありながらこれらがヒットしたのは、韓国のゲームは日本のPCで動作させようとすると文字化けを起こしてしまうからではないか。いくらコアユーザーでも、簡単にプレイできないタイトルは遊びようがない。その結果として、『リネージュ2』と『ラグナロク オンライン』は日本語版のサービス開始時期を待つこととなった。そのため、コアユーザーとライトユーザーのスタート時期がほぼ同時となり、コアユーザーもライトユーザーも、同じコミュニティーに参加できた。数日に一度しかプレイしないユーザーでも、ゲームをプレイしたときは常にプレイしているコアユーザーの友達がいる。チャットをしたり、一緒に冒険に出かけることも可能だ。このようなコミュニティーが形成されると、先に出した資料の「オンラインゲームで大事だと思うことは友達と一緒に遊ぶこと」という意見と合致するわけである。
以上の考察から、LOTROは英語版と同時発売。遅れたとしても英語版の発売から数週間遅れで日本語版を正式サービスインすることに決定された。少なくとも、英語版が発売される時期にはβテストなどを開催している予定。そのため、笹田氏は「コアユーザーとライトユーザーが分散されず、LOTROの世界では日本でヒットしたMMORPGと同じように強力なコミュニティーが形成されるのではないか」と予測する。たとえ欧米産のMMORPGであっても、このようなコミュニティーが形成されるようになったら日本や韓国のMMORPGと同じように遊べるはず。笹田氏は最後に、「LOTROが世界同時発売を実現できれば、欧米産ゲームでありながら国産・韓国産オンラインゲームと同じスタートラインに立てるようになる」と締めくくった。
以前、本誌が笹田氏にインタビューしたとき、自らもかなりのゲームプレイヤーだと語っていた。欧米のMMORPGをトコトン遊んできて、日本国内での失敗を目の当たりにしてきた笹田氏が今回の講義で出した回答は「世界同時発売」であった。この答えが正しいのか否かは、LOTROのサービスが始まってから明らかになる。ゲーム本編はもちろん、ユーザーの動向にも注目すべきタイトルになるだろう。
(佐藤隆博@RBB)
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