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Shoot it ! - #20 いまこそマインドスポーツの地位向上を
2月28日
AOGCでEスポーツ大会を実演
2月22日と23日にAOGC(アジアオンラインゲームカンファレンス)が開催された。AOGCはブロードバンド推進協議会が主催する国際会議。簡単に言うとオンラインゲーム業界関係者の勉強会だ。オンラインゲームで実績のある企業や先進的な試みをしている人、客観的な立場で研究している人が講師として登壇し、ゲーム業界で働く人たちが聴講する。2005年に始まったAOGCは今年で3回目。ゲーム業界で広く認知され、ゲーム雑誌やゲーム情報サイトからも注目されている。経済産業省の講演ではオンラインゲームが映画なみに社会に認知されているという調査結果が報告されたが、それを証明するかのように新聞など一般メディアの取材も多かったようだ。
Eスポーツ関連では初日の最初のセッションで、Eスポーツに関する講演と実演が行われた。詳しくは各メディアの講演レポートを参照して頂くとして、ここで重要なことは、今年のアジア室内競技大会に日本代表を送り込む段取りが作られ始めたことだ。登壇者はネクサムGoodPlayer.jp事業部の犬飼博士氏、電通スポーツ事業局の竹田恒昭氏で、どちらも日本のEスポーツ界の第一人者と言ってよい。
日本のEスポーツ関係者に、アジア室内競技大会に向けて誰が動くべきか、と問えば、おそらく誰もが犬飼氏の名前を挙げるはずだ。それほど犬飼氏のEスポーツ貢献度は高い。犬飼氏は第一回WCGの日本予選の運営会社が解散したあと、翌年からWCG日本予選の運営を引き継いだ人物であり、アメリカの世界大会CPL(サイバーアスリートプロフェッショナルリーグ)の日本予選を実現させたことでも知られる。現在はLANゲームパーティの開催協力や、Eスポーツの国内大会「アスクカップEスポーツスタジアム」を運営中だ。
電通の竹田氏は、日本初のプロゲームチーム4dN_Psyminをプロデュースしたサイミンの社長だった。さらに辿れば、竹田氏自身もEスポーツ種目「カウンターストライク」のプレーヤーだ。実は竹田氏は2回目の電通入社となる。元々、電通スポーツ事業局で働いていたが、Eスポーツの現場を盛り上げるために退社してサイミンを設立した。しかし、Eスポーツ事業活動停止に伴って再び電通に入社したという経緯がある。竹田氏はアジア大会のために電通に戻ったという憶測もあったけれど、実は全くの偶然だ。アジア室内競技大会でEスポーツが採用されるというニュースが報じられる前に、すでに竹田氏は電通に復帰していた。アジア室内競技大会のニュースは職場で知らされ、同僚から「また辞めると言い出すのでは」と心配されたという。
このふたりの登壇で、アジア室内競技大会、そして日本でEスポーツを統括する団体設立の中心人物は決まったも同然だ。講演では明言しなかったけれど、本人は自覚しているはず。既に水面下でEスポーツ協会の設立へ動いていると考えて良いだろう。AOGCをレポートしたいくつかのメディアでは、アジア室内競技大会への具体的な話が無く残念、報じていた。しかし、今回の講演で重要なことは、アジア室内競技大会の取り組みが犬飼氏、竹田氏のラインで決定した、ということだ。それまでは、誰がやるのか解らない、という状態だったのである(もっとも、私を含めたゲームメディアの記者のほとんどが犬飼氏の動きを既定の事実として捉えていたのではあるが)。ともかく、アジア室内競技大会へ向けて、日本は一歩前に進んだ。
AOGCのEスポーツの講演はゲームメディアだけではなく全国紙にも報じられた。これでゲームでスポーツ、というEスポーツ自体の認知度は高まったはずだ。2000年から私たちがEスポーツの可能性を見出し、Eスポーツとは何か、どうしてゲームがスポーツなのかと説いていた努力がようやく報われた気がする。講演に先立ち、犬飼氏が来場者にEスポーツを知らない人に対して挙手を求めたが、誰も手を挙げなかった。2004年の10月にブロードバンド推進協議会で犬飼氏がEスポーツを紹介したときは、ほとんどの来場者が初耳、あるいは言葉だけしか知らないという状況だったから、大きな進歩である。
頭脳スポーツ協会
ところで、Eスポーツと同じように海外ではスポーツとして扱われ、日本ではスポーツとして認められていない競技が他にもある。囲碁、将棋、チェス、トランプ、ボードゲーム、麻雀などである。これらは頭脳のスポーツ、すなわち“マインドスポーツ”と呼ばれている。Eスポーツよりも歴史があり、内閣府所管の「日本頭脳スポーツ協会」という組織も活動している。日本頭脳スポーツ協会のパートナーには、チェス、トランプ、競技麻雀などの各協会が名前を連ねている。コンピュータゲームもマインドスポーツの範疇になるそうだ。
以前、日本チェス協会の関係者から聞いた話では、チェスがスポーツであるという認識が広まったきっかけは2006年ドーハで開催されたアジア室内競技大会に日本代表を送りだしたことだという。チェス協会はことあるごとにチェスはスポーツだと訴え続けていたが、なかなか認めてもらえなかったそうだ。そういえば、海外のチェスの試合や、その他のマインドスポーツの大会は日本ではあまり報じられない。実は、海外通信社から日本のメディア向けのニュース配信では、チェスなどのマインドスポーツはスポーツのカテゴリである。ところが、そのFAXで届いたニュースの束がスポーツ面のデスクに届けられると、真っ先にチェスなどのニュースを選り分けて「ウチの部署には関係ない」と捨てられてしまうという。運良く捨てられなくても文化面に転送される。文化面は衣食住や演劇、音楽などを扱っているが、チェスは馴染みがないのでやっぱり捨てられてしまう。こうして海外のチェス情報は日本のメディアから遮断されてきたのである。
いま、マインドスポーツのひとつとしてEスポーツが認知されつつある。これは他のマインドスポーツにとっても認知度を上げるチャンスではないか。海外ではEスポーツを、チェスの電子版みたいなものだと比較説明する。しかし、日本ではチェス自体がスポーツとして認知されていないから、Eスポーツをチェスに例えられない。Eスポーツの振興は大切だが、Eスポーツだけではなくマインドスポーツとの連携も考えられないか。もしEスポーツの協議会設立にあたり、マインドスポーツ協会に協力を依頼し、連携していくことも考慮していいかもしれない。
マインドスポーツとの連携により、マインドスポーツ全体が振興すれば、日本でのスポーツの定義を変えられるかもしれない。現在「スポーツ振興法」では、第2条でスポーツを「運動競技及び身体運動(キャンプ活動その他の野外活動を含む)であつて、心身の健全な発達を図るためにされるもの」と定義している。この条文を「運動競技及び身体運動(キャンプ活動その他の野外活動を含む。)及び頭脳競技であつて、心身と精神の健全な発達を図るためにされるものをいう」というふうに変えていきたい。
新しく生まれようとするEスポーツ統括団体にとって、マインドスポーツ団体は良き先輩であり、師となり、同志となりうる存在である。
(杉山淳一@RBB)
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