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【AOGC2007】「ゲーム2.0」は日本のゲーム業界を救うか― シグナルトーク 栢孝文氏
2月26日
シグナルトーク代表取締役 栢孝文氏
 株式会社シグナルトーク代表取締役の栢孝文氏が、アジアオンラインゲームカンファレンス(AOGC)2007で「Game2.0へ進化するゲーム開発手法〜サンデーゲームスタジオの挑戦〜」と題する講演を行った。

 栢氏は、セガ、ソニー・コンピュータエンターテインメントを経て、2003年にシグナルトークを設立した。同社はオンライン麻雀ゲーム「Maru-Jan(マルジャン)」で知られる。同社は、「サンデーゲームスタジオ」という、一般公募した社会人や学生が毎週日曜日に集まって製品化を前提としたゲームを作るプロジェクトを主催しており、栢氏は、そのプロジェクトの目的と現状について語った。

 栢氏によれば、日本のゲーム業界は、規模が拡大する以外にゲーム制作の現場に進化が見られないという。「クリエイターの育成をやらなければいけない」と皆が言っているが、具体的にやっているところは少ないことに危機感を覚えた栢氏の試みが、「サンデーゲームスタジオ」なのだという。

 栢氏は、現在のゲーム業界が抱える問題を2つ挙げた。ひとつは「クリエイターデビューの問題」。現在、ゲーム開発者は、ゲーム会社によって囲い込まれ、著作権は買い上げられ、自分が作ったゲームなのに名前を出せないことも多いという。この問題について、栢氏は、映画を例に取った。映画では、配給会社の名前で見に行くかどうか決めることはない。監督の名前で見に行く。つまり、開発者に記名権がないのは、ユーザーの選択基準のひとつを奪っているということだ。

 もうひとつの課題は、「ユーザーが作る面白さ」。近年、Web2.0の流れが加速し、「セカンドライフ」などのCGM(Consumer Generated Media、ユーザー自身が作り出すメディア)や、Youtubeなどが流行っている。これは、「ユーザーが作ったものの方が面白い」という開発者にとっては恐ろしい結論でもあるという。栢氏は、「ウェブ2.0」をゲームに応用し、「ゲーム2.0」という言葉を用いた。
 つまり、「ウェブ1.0」「ゲーム1.0」では、「運営会社・クリエイター→販路・ウェブ→ユーザー」という一方向の流れだった。一方、「ウェブ2.0」「ゲーム2.0」では、「運営会社→インフラ←→ユーザーがコンテンツを創る」という、流れになるという。
 大手SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)では、1日に50万件の日記が書かれるそうだ。開発者が、同じだけのテキストを書くことはできない。日記にコメントすることなどの方が、オンラインゲームをプレイするより面白いのかもしれない。それでは、「クリエイターはどうやって飯を食っていけばよいのか」という問題が起こる。

 それに対処するには、「ゲーム2.0の流れに抗うのではなく、ゲーム2.0の流れに乗っかってしまう」ことだと栢氏は言う。たとえば、シグナルトークに現在勤務しているある凄腕プログラマーは、以前ニートだったという。日本のゲーム業界の発展には、優秀な人材を、発掘して育成していく必要があるのだ。

 そこでシグナルトークが始めたのが、「サンデーゲームスタジオ」の取り組みだ。熱意ある学生、夢を諦めきれない社会人を公募し、シグナルトークが講師を派遣し、場所はバンタン電脳ゲーム学院の校舎を借りて、毎週日曜日に商品化を前提としたゲーム開発を行う。そして、完成したゲームはYahoo! JAPANで売るという仕組みだ。

 ゲーム業界が陥っている大作主義・続編主義をやめ、アイデアゲームが生まれる場所を創り出し、優秀なクリエイターを育成・排出するのが「サンデーゲームスタジオ」の目的だという。
 ゲームスクールに似ているが、参加費は無料。機材や、フォントデータなどはシグナルトークが提供。開発者は名前を出すことができ、利益が出れば入金額の5%のロイヤリティを得ることができる。社会貢献を目的とし、今のところ、シグナルトークは儲けを考えていないという。

 初年度は、プログラマー・デザイナー・プランナーを1チームに各1名、3チーム9名で行う予定だったが、応募者多数だったものの、厳選して2チーム8名にし、現在開発を進めているとのことだ。

 現在、「サンデーゲームスタジオ」の2チームのうち、ひとつのチームでは現在問題が発生しているそうだ。参加者がゲーム制作が初めてであるため、ゲームオーバー条件などのゲームの根本的な仕様を悩み、スクラップアンドビルドをひたすら繰り返しているという。
 栢氏は、2つのチームを比較し、自分も企画出身なので本当は認めたくないが……と前置きした上で、「『ゲームの良し悪しは企画(プランナー)によって8割方決まり、プログラマーはおまけだ』という意見もあるが、まったく逆だということを痛感した」という。過去に勤めていたときのプロジェクトでもそうだったが、プログラマーのスキルがプロジェクトの成否を分けるそうだ。仕様書をもとにゲームを作る過程では、仕様書にない部分、たとえばボタンを押したときにアクションが起こるのか、ボタンを離したときに起こるのかなど、仕様書ではあいまいな部分も多い。そういう部分については、プログラマーの判断がとても大事で、優秀なプログラマーがチームにいることがとても重要なのだという。

 栢氏は、「コンテンツビジネスは、世界の注目する産業だ。しかし韓国・中国・台湾などと比べ、日本はその供給体制が脆弱になっていてると思う。海外では政府が金を落として産業を創っていっていたりするのに対して、日本は今ピンチなのではないか」と警鐘を鳴らす。

 「ぜひサンデーゲームスタジオの試みを他社の方にも真似をしていただいて、日本でもっとクリエイター育成をしましょう! 育成ができなくても、せめて発掘はしましょう! アイデアゲームをもっとつくりましょう! そして、ゲーム2.0の流れをしぶしぶ認めましょう!」と栢氏は提言した。

(左)「サンデーゲームスタジオ」の目的、(右)制作風景

(左)「サンデーゲームスタジオ」の概要、(右)栢氏からのメッセージ

(茂内克彦@RBB)
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