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Shoot it! - #18 プロゲーマーと確定申告
2月14日
国税庁のWebサイト「TAXアンサー」で基礎知識がわかる
MMORPGのA3で日本初のプロゲーマー制度が始まった。既に2回のトーナメントが開催されて、8つの騎士団がプロゲーマーとなった。3月25日に開催される第3回トーナメントでプロゲーマー騎士団が入賞すると賞金が支払われる。これで“ゲームプレイで報酬を得る”という正真正銘のプロゲームチームの誕生というわけだ。ところで、プロゲーマーとして報酬を受け取れば、その賞金(あるいは賞品の対価)も所得税の対象になる。そこで、今回はプロゲーマーと税金について考察してみよう。ちょうど2月16日から確定申告が始まる。昨年、ゲーム大会で高額の賞金を獲得した人も注目して頂きたい。
まず、ゲーム大会に出場して賞金を得た場合、それは収入となる。収入から必要経費を差し引いた額が所得であり、所得税の対象になると心得ておこう。ただし獲得した賞金額が少なければ各種の所得控除と相殺されてしまうので税金は発生しない。また、オリンピックのメダリストが日本オリンピック委員会から受け取る報奨金や学術奨励金は非課税になっている。先日、Eスポーツが2007年のアジア室内大会の競技種目として選ばれたが、もしここであなたが金メダルを取り、日本オリンピック委員会から報奨金を得た場合は非課税となる。また、韓国で開催されたWCG(World Cyber Games)で主催社が日本のゲーム雑誌に対して「選手に渡すお金は賞金ではなく奨学金である」というコメントを残しているが、これも実は、少年に巨額のお金が渡ることの是非を考慮したと言うより、課税、非課税の区分を意識したものだと思われる。
では、どのくらいの賞金を獲得すると所得税がかかるのだろうか。所得税の有無を明確にする手段は確定申告なので、国税庁のWebサイトから確定申告特集やタックスアンサーを参照してみよう。あなたが学生、フリーター、サラリーマンである場合は、ゲーム大会の賞金は一時所得となる。この場合、賞金から賞金を得るために支出した金額を引き、さらに特別控除額の50万円を引いて、残った金額が所得となり、所得税の対象だ。
つまり、賞金総額が50万円以下の場合は税金がかからない。残念ながら現在の日本では50万円以上の賞金がかるゲーム大会は開催されていない。A3の賞金トーナメントの優勝賞金は80万円だが、これは騎士団に対して支払われるから、1試合につき、ひとりあたりの賞金は20万円に満たないと思われる。したがって、現在、課税されるゲーマーは日本にはいない。
それでは今回の話は終わってしまうので、もし日本で高額賞金を獲得し続けるプロゲーマーが誕生したら、という夢のような話をしてみたい。たとえば、あなたがゲーム大会に連続して出場し、年間賞金総額が500万円となった場合はどうなるか。この場合、先ほど示したように、賞金から賞金を獲得するために支出した金額、つまり経費を差し引く。そこからさらに50万円を引いた金額が課税所得になる。
ここで問題になるのは経費だ。
賞金を獲得するための金額とは何を指すだろうか。間違いなく経費になる金額は、自宅とゲーム大会の会場を往復するための交通費だ。しかし、ゲーム大会に参加するために新調したキーボードやマウス、ヘッドセット、衣類などは、全額経費にはできないと考えた方が良いだろう。ゲーム大会の練習のために買ったPCは経費だよね!というのも認められない。これらの物品はゲーム大会以外でも使うことになるわけで、経費算入する場合、全使用時間のうち、プロ活動で使用する時間を計算し、代金からその割合を計算せよ、となるだろう。これは税務用語で「按分(あんぶん)する」といい、自宅で仕事をしている人の電気料金などで使われる方式だ。では、ゲーム大会の参加の条件として、特定のマウスやPCなどの購入が義務づけられた場合はどうか、これはかなり難しい問題で、税理士でもない私が言及するには相応ではない。素直に税務署に相談することをお勧めする。実は経費には明確な基準が無く、納税者と税務署の間で見解が分かれることが多い。よく脱税事件のニュースで、税務の解釈の違いなどと釈明されることがあるけれど、実際こんなことは個人事業主レベルでもよくあることなのだ。
プロゲーマーとして成功し、とんどん賞金を稼げるようになると、企業とスポンサー契約を結べるかも知れない。過去にSIGMA選手がPCパーツ代理店のアスクと契約した例がある。また、韓国のプロゲーマーのように、タレント活動ができるようになるかも知れない。今の日本ではまだまだ夢物語だけれど、このような場合の所得税はどうなるか。これは他のプロスポーツ選手の事例が参考になる。例えば企業とのスポンサー契約だが、専属選手となる場合は社員になってしまうことがある。こうなるとサラリーマンと一緒で、毎月の給与から所得税が源泉徴収され、12月の年末調整で払いすぎた税金を返してもらう。
スポンサー契約のもうひとつの形としては、個人事業主となってスポンサーと契約を交わすことだ。これなら条件が折り合えば複数のスポンサーと契約できるし、タレントとしての活動も他の契約を阻害しない範囲で自由にできる。また、この場合は永続的な事業の一環としてゲーム大会に出場するわけだから、賞金も一時所得ではなく事業所得としてカウントしていいだろう。そうなると、事業所得を得るための費用はすべて経費になるから、経費の適用範囲も広くなる。日頃練習するためのPCは固定資産として減価償却できるし、せいぜい数ヶ月しか持たないマウスやキーボードは消耗品費になる。契約スポンサーからユニフォームを支給された場合は、その洗濯代や修繕費用も経費だ。
スポンサー企業との会食費用は接待交際費だし、ライバル選手たちとの会食も、選手活動ための情報交換という名目なら会議費や接待交際費となる。もっとも、行きすぎると経費の水増しとして脱税になってしまうから慎重に。ゲームソフトに関しては、ゲーム大会に必要なタイトル、将来必要になるだろうタイトルのみが経費になる。FPSの選手が戦術の参考としてRTSを買った場合は経費になるかも知れないが、アドベンチャーゲームを買っても経費にならないだろう。当たり前のことではあるけれど。
ベッキーファンも必見?の国税庁確定申告特集
また、スポンサー契約が無くても個人事業主となることはできる。税務署に行き、開業届を提出するのだ。事業内容はゲームに関する業務全般、とでもしておこうか。これでゲームライターやプログラム、ゲーム大会出場などが事業になる。もっとも、ゲーム大会の賞金実績がなかったり、著作物の実態がなかったりすると事業所得がなくなるから、副業としてアルバイトをしなくちゃ行けない。こうなると、確定申告は給与所得が中心で、ゲームに関する収入は一時所得や雑所得にするよう指導される可能性はある。
そんなプロゲーマー時代への夢物語はこのくらいにして、最後に現実的な話をしておこう。いままでにゲーム大会で賞金をもらったけれど、所得税を払っていない。確定申告もしていない。でも、上記を読むと、自分の賞金額は所得税の支払い対象にならないから、まったく関係ない話だな……と思ったら、実は大間違いなのだ。企業から個人へ支払う場合は天引き、つまり源泉徴収が義務づけられている。企業が主催のゲーム大会に出場し、年間獲得賞金が5万円なら、5000円が差し引かれ、4万5000円しか受け取っていないはずなのだ。アルバイトの給料とまったく同じ仕組みになっている。そして、この源泉徴収税額は、あなたの所得が非課税の範囲であるなら取り戻せる。それも確定申告で行うのだ。この、払いすぎた税金を返してもらう申告のことは特に「還付申告」と呼ばれている。(源泉徴収では、経費ゼロで計算して天引きしているので、控除や経費算入後の「あるべき」税額は天引き額より小さいことが多い。この、納め過ぎの部分を還付してもらうのだ)
実は私のようなフリーライターも、出版社やニュースサイトの会社から報酬を受け取る時に源泉徴収されている。芸能人やプロスポーツ選手も同じだ。したがって、報酬を受けるために必要な経費を計算して、納めすぎた税金を返してもらうために確定申告をする。これを還付申告という。PCが1台くらい買えそうな金額になるので、僕らにとってはボーナスのようなもの。だから必死で領収書を集計するわけだ(笑)。
確定申告をしなくてはいけない人は、給与をふたつの会社から受け取っていたり、雑所得や一時所得などが控除額を超えている人などだが、これ以外にも、確定申告をすると有利になる人がいる。住宅ローン控除や医療控除を受ける人、源泉徴収された人が対象だ。ところが税務署は税金を払う人には催促するけれど、税金を返す人には黙っている。申告した方がいい人は、こちらから請求する必要がある。よく「税務署が怖い」なんて言っている人がいるし、映画「マルサの女」シリーズでは厳しい摘発シーンなんてのも描かれた。しかし、実は税務署は、素直に納税している人にはとっても優しい役所なのだ。
還付申告は5年経つと請求できなくなってしまう。だから、もしゲーム大会の賞金を受け取ったことがあるなら、支払い元から支払い調書が送られているはず。すぐに税務署に相談しに行こう。将来、プロゲーマーとなって高額納税者となったときのために、今のうちから所得税の仕組みを知っておくのもいいんじゃないかな。
(杉山淳一@RBB)
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