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★ Slash Gamesは、2007年6月1日より「インサイド」になりました
Shoot it! - #7 ストリーミングビデオで楽しむWCG2006
11月15日
 熱い記憶ほど早く遠ざかってしまうのか。WCG2006世界大会が終わってからまだ1か月しか経っていないけれど、もうずいぶん遠い昔のような気がする。次のEスポーツ大会は12月16日からダラスで開催されるCPL(サイバーアスリート・プロフェッショナル・リーグ)までないし、国内のオフライン大会は今月初めのEスポーツスタジアム5で終わった。CPLに日本代表は出場しないから、Eスポーツ観戦好きには寂しい秋の訪れである。

 しかし、今だからこそWCG2006のストリーミングアーカイブがオススメだ。本戦トーナメントのほぼすべての試合について、実況中継ビデオが楽しめる。実況は英語、しかし、ゲーム好きならゲーム内容は見れば解るからリスニングの勉強にもピッタリかもしれない。でも日本語で内容が解ったらもっと楽しいはず。字幕をつけてくれたらお金を払ってもいいと思うけれど……。

WCG TVを観るには無料会員登録が必要(左) カウンターストライクは画面の演出が上手い。状況が解りにくいゲームだけに、リアルタイムな情報表示は嬉しい(右)

 なぜ「今だからこそ」かというと、ズバリ、回線が空いているから。WCG2006の開催中や開催直後は、アクセスが集中していて映像配信の状態があまりよくなかった。しかし今ならストリーミングもなめらかに再生できる。しかも、動画コンテンツのメニューが見やすく整理されている。というわけで、WCG2006のストリーミングを楽しんでみよう。

 まずはEスポーツの花ともいうべき種目“カウンターストライク1.6”。決勝戦の第1試合の放送は、NiPとTeamPentagramそれぞれの準決勝のハイライトシーンの紹介から始まる。そして使用されるMAPの解説。さらに各選手のプロフィールの紹介……という具合。試合が始まるまでに15分も待たせてくれる。ジリジリしちゃうほど期待が高まる。既存のスポーツ中継とまったく同じ演出で見せてくれるところが粋だ。

 カウンターストライクの試合を楽しむなら、直接デモファイルを再生するという方法もある。これはカウンターストライクを初めとする競技系シューティングゲームでは標準で搭載されている機能だ。ゲームの記録をファイルに保存しておき、そのファイルを呼び出すことで、ゲームを再現する。この“ゲームを記録したファイル”をデモと呼ぶ。デモの保存と再生機能は、デバッグのためにつけられた機能だと思うけれど、現在はゲームを楽しむためのアイテムとして活躍している。デモファイルを再生することで、テクニックを分析したり、プレイヤーの不正を検証したりできるため、ユーザ間でデモファイルのやりとりが行われるようになった。

 デモ再生はゲームの様子を忠実に再現するし、ストリーミングより解像度も高い。自分の好きな選手の行動だけを見る、とか、定点で選手の動きを観察するなど、自由に視点を選べる。最近ではシューティングゲーム以外にも、対戦系ゲームのほとんどにデモ機能がある。しかし、当然のことながら、ゲームをインストールしないと見られない。ゲームを持っていなければストリーミングがもっとも手軽だ。

決勝戦用の特設ステージ(左) サッカーゲームは実物とあまり変わらない(右)

 ストリーミングはテレビ放送と同じ仕組みなので、視点は映像制作者に委ねられる。だから、観客を映している間にカッコイイ戦闘シーンが終わっていたり、追っている選手以外の選手が活躍していたりする。しかし、ゲーム対戦のストリーミング放送はかなり進歩していて、オブザーバ視点でゲームにジョインする「ゲームカメラマン」という職業も誕生しそうな勢いだ。

 WCGは世界へストリーミング配信してきただけに、ストリーミングの演出もどんどん良くなっている。カウンターストライクの場合、今回はゲーム画面に選手の体力ゲージがリアルタイムに映し出されるようになった。従来は得点が動くたびに手作業のテロップが表示されていたけれど、今回はスコア表示用のMODを組み込んだ。おかげでリアルタイムに得点や選手のステータスをチェックできる。銃声が響くたびに体力ゲージが減っている様子を見て、どの選手に当たったか、ダメージはどのくらいか、生き残っている選手は誰か、などの情報がすぐに解るのだ。

 ただし、ひとつ難点をいえば、公開されているストリーミングテータは放送時のファイルをそのまま使っており、再編集をしていない。そのため、ゲームが中断しても、変化のない画面が延々と流れる。また、CMや風景描写も入っているが、CMは仕方ないとしても無駄な風景はカットして欲しいと思う。

 カウンターストライクはゲーム画面で積極的な映像演出が施されたが、対極にあるゲームがFIFA SOCCERだ。ゲーム自体がスポーツを題材としているため、ゲーム自体がテレビ中継のカメラワークを積極的に取り入れている。テレビ中継との違いは、選手のアップが少ないくらいだ。ちなみにFIFA SOCCERでは、ゴールを決めたあと、ゲーム画面はゴールを決めた選手のグラフィックが大き映る。しかし、WCGの中継では、ゲームプレイヤー、つまり人間に画面がスイッチする。喜びかたも人それぞれで面白い。

 面白いといえば、FIFA SOCCERのビデオも面白い。WCGのFIFA SOCCERの試合では、伝統的に観客がエキサイトする。ゲーム観戦なのに観客全員を巻き込んでウェイブを作るし、旗を揺らせて声援を送っている。ゲーム画面がリアルなので、このストリーミングだけを見ると、本物のサッカーの試合と違和感がない。リアルとバーチャルが融合したユニークな映像作品だと言える。

 加工が少ないといえば、ウォークラフトやスタークラフトも画面をそのまま使っている。スタークラフトではテロップで得点が表示されているけれど、ウォークラフトは加工無し。リアルタイムに得点が動くゲームではないから、これも必然かも知れない。できれば全体マップを時々大写しにしてくれると良かった。将棋の番組のように、別の画面で解説者がマップ上を指さして説明する、というような仕掛けがあると面白いと思う。

 Quake4のビデオはプレイテクニックの参考になる。遠くにジャンプするテクニックを駆使すると、こんなところもジャンプで渡れるのか、と思う。上手なプレイヤーは常にどこを見ているのか、相手が居る位置をどうやって予測しているのか。上手なプレイヤーの動きがよくわかる。同じゲームなのにどうしてこんなに動きが違うのだろう。

 ただ、WCGのビデオファイルはすべての種目を網羅しているわけではないらしく、今年は“DEAD or ALIVE”が収録されていない。しかし、ここでどうしても見てもらいたいビデオがある。2005年のシンガポール大会で行われた“DEAD or ALIVE”、そう、日本代表の活忍犬選手が優勝した試合だ。ゲーム自体もシーソーゲームで白熱していたけれど、闘いの合間に見せる選手たちの表情がいい。ラウンドに勝ったあとは満足な表情、ラウンドに負けたときの悔しい表情が観客にぐっと伝わってくる。ステージにいる活忍犬選手の様子は、まるで本物の格闘技でリングの隅で一息つく選手と同じ表情なのだ。

 対戦相手は開催地シンガポールの選手。したがって活忍犬選手が倒れると満場の声援と拍手が送られる。これは活忍犬選手にとって大きなプレッシャーとなっていたはず。その逆風にもかかわらず、活忍犬選手は冷静に絞め技を決めて勝った。日本贔屓と呼ばれて結構。この試合はWCG史上、もっとも優れた試合だと言って良いだろう。ビデオファイルを見るときは、ゲームを選ぶと収録されている年が表示される。つまり、2006年だけではなく、ストリーミング中継された全試合を観戦できるのだ。2005年のDEAD or ALIVEは絶対に見て欲しいし、いつかまた、日本選手に優勝の喜びがもたらされることを祈りたい。

 話を2006年に戻そう。ビデオではゲーム画面以外のショットにも注目だ。特に今年のイタリア大会はサーキットという珍しい場所で開催された。サーキットをどんな風に使うのか、実は、スターティンググリッド舞台をセットし、観客は屋根のないところでパイプ椅子に座って観ていた。これはかなり寒そうである。しかし、世界の頂点を決める場所として、これほど相応しい場所はないとも言える。シンガポール大会に比べると観客が少ないような気がするのは気になるけれど。

 ゲームプレイを楽しんだら、オープニングセレモニーとクロージングセレモニーも観てほしい。WCGというイベントが何か、どんな意義があるのか、その素晴らしさがよくわかる。オープニングセレモニーでは世界から仲間たちが集まる楽しさ、平和と友好の大切さがよくわかる。クロージングセレモニーで表彰台に上がる選手たちの晴れやかな顔はどうだろう。ゲームが好きなら、ぜひあそこまで極めたいと思うに違いない。ゲームっていいな、Eスポーツっていいな、と、心の奥まで染みいってくるはずだ。

 僕たちが遊んでいるゲームにも、その先にはこんなに素晴らしい世界が待っている。いつか日本でもこれだけの大会を開催し、世界中の仲間を招きたいと思う。しかし、日本では来年の予選開催のメドが立っていないという噂がある。これまで通り、実績のあるテクノブラッド社が継続してくれることを望みたい。それが叶わなかったとしても、なんとか日本予選を開催したい。日本代表の出場の歴史を絶やしてはいけない。

 日本はゲーム産業を国の戦略産業と捉えている。しかし、ゲームメーカーだけではなく、プレイヤーもトップにならなくてはいけない。ぜひ皆さんもWCG2006のビデオを観てほしい。友達にも奨めてほしい。ゲームが持っている様々な可能性を、世界大会の雰囲気から感じてほしい。そして“日本代表を世界へ”という思いを、多くの人に共有してもらいたい。

2005年、活忍犬選手の勇姿もオンデマンド(左) サーキットの様子がよくわかる(右)

(杉山淳一@RBB)
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