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【GISフォーラム Vol.1】コンテンツビジネスのチャンスはここに――グローバル情報社会研究所社長 藤枝氏
グローバル情報社会研究所が運営するGISフォーラムは、東京・港区で創立10周年記念特別フォーラムの第2回を開催した。GISフォーラムはグローバル情報社会の先端的情報の提供と会員相互の情報交換を元に、会員の新しいビジネス展開に役立てることを目的とし、年に数回の講演会を開催している。今回はその第53回にあたる。オープニングスピーチに続いて、主催社のグローバル情報社会研究所から、代表取締役であり、オープン・グループ日本代表の藤枝純教氏が登壇した。
エネルギッシュなスピーチ。藤枝純教氏。 / 会場全景
■メディアとコンテンツは、血管と血液の関係
GoogleのYouTube買収、AMDのATI買収など、最近になって大型のM&Aが目立っている。その一方でインテルは管理職1000人をレイオフし、AOLも様々な施策の失敗を立て直すべく企業戦略のシフトを急ぐ。ユビキタス社会を具現化するWi-Fiビジネスが活発だが、一方でボーイング社は機内インターネットサービスを廃止する。藤枝氏は現在の市場動向を俯瞰し、「こうした市場の荒波の中で、ビジネスチャンスは、眠っているコンテンツの活性化」だと述べた。
藤枝氏はコンテンツ市場について、情報の内容であり、ニュース、出版物などのテキスト、音楽、映画、漫画、アニメ、ゲームなど、メディアが提供する創作物だと定義した。つまり、創作物であっても、公開されず眠ったままではコンテンツとは呼べず、ビジネスの資源にならない。インターネットのビジネスの資源は、創作物をデジタル情報にする必要がある。そのコンテンツこそ消費者が求めるものであり、検索エンジンの需要の源である。いくら良い検索エンジンがあっても、検索結果として表示される情報がなければ意味がない。コンテンツがなければ、検索エンジンやWebサイトに掲出されるオンライン広告の市場も頭打ちになるだろう、と指摘した。いくら血管が太くても、血液がなければ意味がない、ということだ。
■コンテンツがなければネット広告は空回りするだけ
世界のコンテンツ市場を見ると、その規模は約100兆円になる。しかし、そのうちもっとも多いコンテンツは広告で全体の4割近くを占め、次いで放送が約2割、以下ゲーム、新聞、出版、アニメと続くが、情報の実体、つまり商品そのものよりも広告の比重が高い。
藤枝氏は日本と米国のコンテンツ市場を比較するために、GDP(国内総生産)に占めるコンテンツ市場の大きさを説明した。そのデータによると、日本はGDPに占めるコンテンツ市場は2.3パーセント。米国は4.6パーセントであった。日本のコンテンツ市場は米国に比べるとまだ半分の規模であり、世界平均の3.3パーセントより低い。
しかし、日本にはコンテンツがないわけではない。先に挙げたGDPとコンテンツ市場の比率を分野ごとに見ると、映像、音楽、新聞、出版の分野では米国に劣っているが、家庭用ゲームソフト、インターネット広告、映画興行、ラジオ放送の部分では米国よりも日本のほうが盛んである。コンテンツの素材はたくさんあるのだ。
しかし、コンテンツのデジタル化率が低い。音楽資産のデジタルコンテンツ化は50パーセント、ゲームは50パーセント弱であるが、映像ソフトは16パーセント、図書新聞は11パーセントに留まっている。日本のコンテンツ市場13.6兆円のうち、デジタルコンテンツは2.9兆円で2割程度となっている。藤枝氏はこの現状を「図書館に本が眠っていて、世の中の多くの人はその存在すら認知していない、もったいない状況」と評した。なぜなら、どんなに検索エンジンがグレードアップしても、デジタル化されずに眠ったままの情報は検索結果に反映されないからだ。
現在、インターネット広告が急速な伸びを示しており、新聞、放送や出版の広告メディアを凌駕しつつある。しかし、コンテンツが増加しなければインターネット広告の意味がない。事実、米国のオンライン広告費用のリサーチでは、広告費は順調に伸びていくけれども、成長率は鈍化していくという結果が出ている。
■コンテンツを創造するベンチャービジネスにチャンスがある
藤枝氏は、いかにコンテンツを増やしていくか。ビジネスチャンスはそこにあるとして、注目している企業を3つ挙げた。そのひとつはかねてよりフォーラムで紹介していたYouTubeだったが、先日のGoogleによる巨額の買収でその予感は的中した。次は静止画や動画を提供するイメージプロバイダのGetty Images社、同社はタイム、ニューズウィークなどに映像を配信し、1億6700万ページビューを誇り、すでに2006年第2四半期の売り上げは2億480万ドルにのぼった。もうひとつは画像のライセンス管理とライセンス取得窓口サービスを提供するCorbis社。同社はビル・ゲイツ氏が1989年に設立し、2005年に初めて単期黒字を達成した。この1年で5つの企業を戦略的に買収したという。
もうひとつのビジネスチャンスはモバイルコンテンツである。着メロ、着うたが高い利益率を確保しつつ、普及期を迎えたため成長が鈍化している。その次は何か。ゲーム、音楽、動画コンテンツの制作と配信にチャンスがありそうだ。これらは携帯端末と高速通信サービスの普及に連動する。いまから準備を進めていくべきだし、すでに着手している企業もある。しかしまだ勝ち組がどこか決まっていない。
■社内の知識の共有が戦力になる。
コンテンツ化によるビジネスチャンスはベンチャーだけではなく、すべての会社にある、と藤枝氏は続けた。企業のビジネスチャンスは社長の情報力と判断力にかかっている。しかし、社長が持っている情報はすべて社員に提供されているだろうか。社長が持っている情報も、社内に流通するためにコンテンツ化されていなければ活性化されない。従来は社長が情報を取捨選択して社員に渡していた。トップダウンの発想である。しかし、社長が持っている情報をすべてコンテンツ化し、現場の社員が自由にアクセスできれば、そこから新しいビジネスに発展する可能性がある。
この場合、コンテンツ情報の重要度は関係ない。メインストリームである必要はないのだ。その根拠として藤枝氏は、インターネット通販最大手のアマゾンの例を挙げた。アマゾンの扱う品目は230万点。そのうちの売れ筋商品は13万品目だ。しかし売り上げを比較すると、売れ筋商品による売り上げが43パーセント。売れ筋ではない、ニッチ商品の集積が57パーセントになる。売れ筋商品にこだわり続ければ、57パーセントの売り上げを失ったことになる。選んだものを提供するのではなく、選ばせることが重要なのだ。
こうした観点で社内コンテンツを見直し、眠っているコンテンツを再活性化させる。その上で価値を生んでいるコンテンツを見極め、ビジネスに貢献するコンテンツに注目し、高い価値のコンテンツを生むキーパーソンをみつけ出す。日本国内だけではなく、グローバルな視点でコンテンツビジネスを展開する必要がある、と藤枝氏は結んだ。
コンテンツビジネスが注目されて久しいが、広告ビジネスや検索ビジネスが注目される一方で、コンテンツ自体の不足という状況が忘れられている。藤枝氏のメッセージは、現在好調なインターネット広告が、いつか停滞すると警告し、そこにビジネスチャンスがあると示唆した。そのためにもフォーラム会員の交流が求められている。情報ビジネスにチャンスを求める企業家にとって、かなりヒントになる内容であった。
(杉山淳一@RBB 2006年10月12日 20:17)
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