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★ Slash Gamesは、2007年6月1日より「インサイド」になりました
Shoot it! - #2 ニッポンのEスポーツ。過去、現在、未来。
10月11日
2006年WCG日本予選・表彰式
「杉山さんはEスポーツが今後どうなっていくと思いますか」
WCG日本予選のあと、Eスポーツイベントで頑張っている仲間にそう聞かれて、僕もちょっと言葉につまった。どうなっていくんだろう。韓国のようにプロスポーツとなり、プロゲーマーが国民から支持されるようになるのか。あるいは欧米のように、大規模なEスポーツイベントが成功し、世界大会が開催されるようになるのか。あるいは、何も起こらず、いつの間にかEスポーツという言葉すら廃れていき、社会の晴れ舞台から無縁の趣味に落ち着いてしまうのか。
実はいま、日本のEスポーツ界には良いニュースと悪いニュースが混在している。
良いニュースはBIG LANのようなユーザー主体のイベントが軌道に乗り始めていること。LANパーティはいまのところこれだけだが、ネットカフェを貸し切って行われるゲームパーティもあるし、バンダイナムコゲームスのLAN対戦ゲーム実験店舗LEDZONEも次々とイベントを成功させている。K.I.A.やcode-Realityなどのオンライン競技大会も開催されて、誰もが簡単にEスポーツイベントを楽しめる環境が整った。
悪いニュースは、今年になって日本のEスポーツを牽引していた要素のいくつかが消えてしまったことだ。例えば、今年は日本でCPLの日本予選は開催されなかった。開催権を持っているテクノブラッド社が、もうひとつの世界大会であるWCGに注力するためにCPL予選を開催しなかったと言われている。しかし、そのWCGも来年度の日本開催があやうくなってきた。今年に入ってテクノブラッド社でWCGを担当した人材がどんどん退社してしまい、次年度の開催が困難になっている。僕の個人的な予想だが、この状態で来年のWCG日本予選の開催はなさそうだ。
昨年にアスク社と契約して渡英し、プロゲーマーとして活躍したSIGUMA選手は契約を更改していない。同じくプロチームとして活躍していた4dN.PSYMINとAXGは活動休止となってしまった。現在、日本には現役のプロゲーマーはいない。今年の5月4日にフジテレビ系で放送されたドキュメンタリー『プロゲーマーをめざす若者たち』は、地上波で初めてじっくりとEスポーツを紹介した番組で、関東ローカルだったとはいえ、Eスポーツの認知をかなり高めた。しかし、そこで主に紹介されていた人々はAXG、4dN、SIGUMAであり、登場人物のほとんどが放送時には一線から退いてしまうという事態になった。
こういう状況だけを見て、日本のEスポーツは失敗だった、とか、ひとつの文化として、このへんで総括してみてはどうか、という声も聞こえてくる。ちょっと待ってほしい。海外の隆盛を見て、Eスポーツが文化であることを認めてくれるなら、文化に終わりはないことも認めて欲しい。日本のEスポーツは終わっていない。まだ始まったばかりなのだから。
日本のEスポーツの歴史を振り返った時、現在は黎明期の終わりだと考えて良いと思う。その黎明期をさらに区分すると、プロゲーマー伝来時代、世界大会伝来時代、Eスポーツ時代の3つになる。そのひとつひとつを振り返ってみた。
■第1期:プロゲーマー伝来時代
前回の僕の体験のように、日本のEスポーツ文化は、韓国のプロゲーマーの存在が日本で紹介されたことから始まっている。ただし、僕が日本側メディアの先駆者だったわけではない。僕がプロゲーマーについて知ろうと思ったとき、検索サイトで資料を見つけた記憶があるからだ。そのサイトを探そうと、いま再び検索したけれど、14万件という検索結果を見て断念した。あの時は20件くらいだったはずだ。プロゲーマーという言葉はずいぶん広まったな、と思う。
プロゲーマーという言葉はインパクトがあった。日本でもゲーム雑誌の編集者やデバッガーなど、ゲームプレイで飯を食う職種はあったけれど、単純にゲームプレイを見せて稼ぐ、勝って稼ぐという職業は新鮮だった。韓国やアメリカのプロゲーマーが紹介され、日本のゲーマーからもプロ志向の若者が登場し、テレビや雑誌を賑わした。
しかし、日本の社会がプロゲーマーという文化についてこなかった。ゲーマーにとって、ゲームで戦うことで飯が食えるとは素晴らしいことだ。そりゃあゲーム好きならチャレンジしたい。しかし、プロ=職業であるためには収入を得られなくてはいけない。しかし、賞金で食いつなげるほど賞金付きゲーム大会はないし、ゲーマーにスポンサーする企業もない。スポンサーにとって、ゲーム大会も少なく露出の機会がほとんど無い“ゲーマーというメディア”に価値は無かった。日本ではプロゲーマーは成立しない、という見方が強まった。
■第2期:世界大会伝来時代
日本でプロゲーマーを成立させるには、スポンサーが付いたオフィシャルなゲーム大会が必要だ。そのゲーム大会のひとつがWCG日本予選だった。WCG1年目は韓国のサムスン電子グループが統括し、世界の少年たちにサムスン電子のブランドを広めようという意図があった。そこで日本でもサムスン電子グループが資金を投入して、第1回WCG日本予選が開催された。サムスングループの大盤振る舞いで、世界大会の取材記者たちも招待され、航空券、ホテルが提供された。僕の最初のWCG取材もサムスングループの提供によるものだった。
2002年のWCG日本予選風景
2001年の第1回WCGは世界中のゲームファンを熱狂させた。ゲームに理解のある国ではEスポーツが定着し、第2回はサムスングループの資金協力は減ったものの、各国が自力で予選を開催できるまでになった。しかし日本ではPCゲームの市場が狭くPCゲームの世界大会に対する注目度も低かったことや、第1回の日本予選を仕切った会社が解散してしまったことから、第2回の開催が危うくなる。日本のプロゲーマーの種火を消してはいけないと、有志が10万円ずつカンパして、自主的に日本予選を開催しようという話も出た。最終的にこの話を進めていたAcegamer.netが日立のネットゲーム部門の支援を受けることになり、TAITOが会場としてネットカフェのNecca渋谷店を提供してくれた。この日本予選で優勝したHALEN選手は、ソウルの世界大会で優勝し、日本円にして600万円の賞金を獲得する。この実績は、苦労して予選を開催して良かったと関係者を喜ばせた。
世界大会の日本予選、というスタイルは、日本のゲーマーには良い刺激になった。プロゲーマーは無理でも、世界の晴れ舞台に上るチャンスはある。ゲームにプロの世界がある、というインパクトも大きかったけれど、ゲームに世界大会がある。これも話題となった。Acegamer.netはWCGだけではなく、ゲーマーが立ち上げたムーブメントとしてのCPLに価値を見出し、その日本予選開催権も獲得する。
実はこの頃、プロゲーマーの実現に向けて活動していた有志の間で、現状では日本でプロゲーマーは成立しない、という結論が導き出されていた。プロが成立するためには、スポンサーが必要だ。スポンサーに魅力あるプロの世界とは、プロを支えるための広いアマチュア層と、大勢の観客が必要である。日本ではアマチュア層が少ない上に、ゲームを観戦するという文化もない。プロゲーマーの育成よりも先に、ゲームをプロ化するための裾野を広げることが優先だった。
■第3期:Eスポーツ時代
そこで、プロゲーマーという言葉はしばらく控えて、その代わりに「Eスポーツ」を普及させよう、という気運が生まれた。ただ遊ぶのではなく、スポーツとして遊ぶ。スポーツには様々な良いことがたくさんある。技術を磨き成績を上げるだけではない。共に競う仲間の存在、対戦相手への尊敬、道徳、国際交流など、いまの肉体的スポーツにある良いところを、しっかりゲームにも取り込んでいこう。それがEスポーツだ。ゲームは楽しい。スポーツは人生を豊かにする。
Eスポーツは、“楽しみながら人生を豊かにする”という文化である。文化に終わりはない。たとえ形は消えたとしても精神は残っていくものだ。
Eスポーツの裾野が広がれば、Eスポーツの競技会も増える。競技会が増えれば、大規模な競技会も開催されるようになり、スポンサーも付くだろう。そこでやっと、プロゲーマーを成立させる環境が整うのだ。いま、日本のEスポーツ界はそのスタート地点に立ち、ようやく黎明期を脱したのである。
海外の文化を輸入して日本のゲーマーを刺激する。これが日本のEスポーツの黎明期だった。しかし今は違う。トップダウンではなくボトムアップだ。Eスポーツを楽しむ人を増やし、Eスポーツマンの中からプロを誕生させる。黎明期とは発想の逆転が起こっている。アメリカでCPLが誕生した経緯を、いま日本はイチから始めたのである。
世界大会の日本予選はなんとかして開催したい。しかし、ソレがないからといって、日本のEスポーツが終わるわけではない。ボトムアップするという新しいEスポーツの試みには、日本独自のリーグ戦、全国大会への素地がある。国内でしっかりと力をつければ、日本発祥のアジア大会、日本発祥の世界大会だって夢ではない。その意味では、“闘劇”がもっとも世界大会に近く、プロゲーマーを生む素養があるかもしれない。僕はPCゲームのほうが広がりがあって良いと思うけれど、日本が世界をリードするためには、PCゲームにこだわる必要もない。
「Eスポーツが今後どうなっていくと思いますか」
この言葉には様々な意味が含まれるだろう。Eスポーツは普及しますか。Eスポーツは儲かりますか。Eスポーツは興業になりますか。Eスポーツは職業になりますか。Eスポーツは楽しいですか。Eスポーツはモテますか。Eスポーツは……。
Eスポーツに関わる人すべてにとって、Eスポーツで得られる成功やゴールは違う。
それをひっくるめて、僕からの答はひとつだ。
「うまくいくと思うよ。だから努力を続けよう」
(杉山淳一@RBB)
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連載:Shoot it !
BIGLAN
フジテレビジョン NONFIX #502『プロゲーマーをめざす若者たち』
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