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【IDF Fall 2006 Vol.3】CPUのコア間“通信”はメッシュ型?リング型? 銅線から光に?

 9月26〜28日の3日間、米国San FranciscoでIntel Developer Forum(IDF)Fall 2006が開催されている。ここでは、基調講演やプレス向けのブリーフィングなどで紹介されたさまざまな話題の中から、主に初日午後の基調講演で触れられた技術について紹介しよう。

●ハイブリッド・レーザー
 まず初めは、「Tera Scale Computing」に関してだ。Tera Scale Computingは、TFLOPS級の演算速度を持つプロセッサで、TB級のデータセットを扱う、大規模かつ高速な将来のコンピュータ像の確立に向けた各種の研究プロジェクトの集合だ。図示された内容からみると、プロセッサ・コアを6×6や8×8といった正方形に配置し、36コアとか64コアのプロセッサが構想されているようだ。研究テーマとしては、コア間の通信経路はリング状が良いのかメッシュ状がよいのか、とか、ネットワークI/Oの遅延を避けるため、プロセッサ・コアの一部にネットワーク・インターフェイスを直結するべきでは、といったさまざまな内容が検討されているのだという。

 中でも、最近成果が上がった内容として、光通信技術に関するものがある。コンピュータで使われる相互接続技術にはさまざまな種類があり、現在ではおおよそ距離によって使い分けられている。光ファイバと銅配線の使い分けでいうと、現在では都市圏(0.1〜80km程度)、ラック間(1〜100m程度)では光ファイバが使われ、ボード間(50〜100cm)、チップ間(1〜50cm)では銅配線が主となる。光ファイバは銅配線に比べて帯域が広く、大量のデータの送受信が可能だが、銅に比べると極めて高価な上、微細化が難しいという問題もある。

 光通信技術でチップ間を接続するために応用できそうなのが、インテルとカリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)のJohn Bowers教授のチームとの共同研究による、「ハイブリッド・レーザー」の技術だ。この技術では、半導体製造に使われるシリコンの加工技術を応用し、安価にレーザーを作り出せる。インテルとUCSBが共同で、IDF開催直前の9月18日に発表したばかりの最新の研究成果だ。

 リン化インジウム(InP)とシリコンを組み合わせて利用し、2つの層の接合にはプラズマ化した酸素を利用する。InPウェハーとシリコン・ウェハーの接合面をそれぞれ酸素プラズマにさらす、表面に酸素物の層が形成される。この層は原子25個分程度というごく薄いものだが、これが糊の役割を果たして2枚のウェハーを貼り合わせる。さらに加熱処理し、整形するとレーザー発光が可能になるという。InPウェハーに電極を付けて電圧をかけると、シリコン・ウェハー側に整形された光路に沿ってレーザー発光が起こる。

 将来は、このレーザー発光部を25個横に並べて一度に生成し、それぞれが波長の異なるレーザー光を発光するようにした上で、多重化して光ファイバで伝送すれば、大容量の光通信が可能になる。半導体製造技術の応用で作れることから、マルチコア・プロセッサの巨大なコアの一部に光通信インターフェイスとして一度に作り込むこともできるのではないだろうか。

インテルのマルチコア・アーキテクチャの基本的な考え方。共有キャッシュとローカルキャッシュを持つ簡略化されたIAコアを単位として、これを多数(メニイコア)配置することでTera Scale Computingに対応しようとしている 光通信を実現するために必要となる技術要素
【左】インテルのマルチコア・アーキテクチャの基本的な考え方。共有キャッシュとローカルキャッシュを持つ簡略化されたIAコアを単位として、これを多数(メニイコア)配置することでTera Scale Computingに対応しようとしている【右】光通信を実現するために必要となる技術要素

基調講演に登壇したBowers教授(左)とRattner氏(右)Professor John Bowers University of California, Santa Barbara Justin. R.Rattner Chief Technology Officer and Intel Senior Fellow Director, Corporate Technology Group, Intel Corporation ハイブリッド・レーザーの作り方の概要。リン化インジウムのウェハー(上のオレンジの層)とシリコン・ウェハー(下の白の層)の接合面に酸素プラズマで酸化層を生成した上で貼り合わせる。なお、シリコン・ウェハーにはあらかじめ溝を掘っておき、光路を生成しておく
【左】基調講演に登壇したBowers教授(左)とRattner氏(右)Professor John Bowers University of California, Santa Barbara Justin. R.Rattner Chief Technology Officer and Intel Senior Fellow Director, Corporate Technology Group, Intel Corporation【右】ハイブリッド・レーザーの作り方の概要。リン化インジウムのウェハー(上のオレンジの層)とシリコン・ウェハー(下の白の層)の接合面に酸素プラズマで酸化層を生成した上で貼り合わせる。なお、シリコン・ウェハーにはあらかじめ溝を掘っておき、光路を生成しておく

リン化インジウム層の余分な部分を削り、電極を付け、電圧をかける。−極から流れ込んだ電子が酸化層のイオンと結合し、ちょうど光路上でレーザー発光が起こる ハイブリッド・レーザーを並列に生成して多重化することで、大容量の光リンクが構成できる。現時点ではハイブリッド・レーザーを発光させることに成功したという段階であり、こうした光リンクをプロセッサ・ダイ上に作り込めるようになるにはまだ時間を要するはずだ
【左】リン化インジウム層の余分な部分を削り、電極を付け、電圧をかける。−極から流れ込んだ電子が酸化層のイオンと結合し、ちょうど光路上でレーザー発光が起こる【右】ハイブリッド・レーザーを並列に生成して多重化することで、大容量の光リンクが構成できる。現時点ではハイブリッド・レーザーを発光させることに成功したという段階であり、こうした光リンクをプロセッサ・ダイ上に作り込めるようになるにはまだ時間を要するはずだ

●電源の効率化
 インテルの電力効率の追求の取り組みは、実のところ単に“優れたプロセッサを作る”というレベルにはとどまらず、ユーザーの利用環境すべてを視野に入れ、可能な限りの効率改善を図っていくという大きなものになっているようだ。それを端的に示したのが、電源設備の改善に関する取り組みだ。

 一般的なデータセンターの給電設備では、無駄が多いのだという。電力会社から交流480Vで給電された電力は、まずUPS(無停電電源装置、Uninterruptible Power Suppy)に入るが、UPSの内部ではいったん直流に変換したのち再度交流に戻して出力している。続いて、変圧配電装置が電圧を下げ、交流480Vを交流208Vにする。サーバなどに内蔵された電源は、交流208Vを直流に変換し、さらに電圧を12Vに下げ、機器を駆動している。変換を繰り返すたびに少しずつロスが生じ、その合計は無視できない無駄となっているのだという。

 これを改良し、変換の回数を減らすと、効率が大幅に向上する。まず、UPSでは交流480Vを内部で直流に変換したら、交流に戻すことなくそのまま出力する。この出力は直流360Vとなっている。変圧配電装置は変圧を行なわず、そのまま直流360Vを通過させる。サーバの電源は、直流360Vを12Vに変圧して利用する。このような構成で電源構成を単純化し、高圧直流電源を利用することで、データセンターでは同一の電力量で稼働するサーバを60%増加させることができるという。

 米国では大規模データセンターの電力消費量の多さが深刻な問題になっていることは知ってはいたが、サーバ単体での効率化だけではなく、電力供給設備の改良にまで踏み込んだ取り組みが行なわれているとは知らなかったので、新鮮な驚きがあった。

従来のデータセンターでの電源システム。変換が多く、ロスが生じている 高圧直流電流を使うように簡略化した電源システム。変換に伴うロスを低減させることで、電力効率を向上させることができる
【左】従来のデータセンターでの電源システム。変換が多く、ロスが生じている【右】高圧直流電流を使うように簡略化した電源システム。変換に伴うロスを低減させることで、電力効率を向上させることができる

高圧直流電流を利用するデータセンターのプロトタイプ サーバ・ラック全体での消費電力量の比較。従来型の交流電源では3837W消費している
【左】高圧直流電流を利用するデータセンターのプロトタイプ【右】サーバ・ラック全体での消費電力量の比較。従来型の交流電源では3837W消費している

高圧直流電流を利用することで、ラックの消費電力が3333Wに低減でき、14%の効率向上が実現している 電源システムを高圧直流電流に変更することで、消費電力量当たりのサーバ数を60%増加させることも可能だという
【左】高圧直流電流を利用することで、ラックの消費電力が3333Wに低減でき、14%の効率向上が実現している【右】電源システムを高圧直流電流に変更することで、消費電力量当たりのサーバ数を60%増加させることも可能だという

●Linksecによるネットワーク・セキュリティ
 最後に、インテルが「Linksec」と呼ぶセキュリティ技術について紹介しよう。これも、初日午後の基調講演で言及されたものだ。この技術は、実態としては「IEEE 802.11AE」(Media Access Control Security)および「IEEE 802.11af」(Media Access Control Key Security)を利用したもので、インテルの独自技術というわけではない。ただし、MAC層に関わる問題なので、インテルとしても関心を持って深く関与しているというところだろう。ただ、AEに関しては2003年にDraft 1が出た後、長い時間を掛けてドラフトのブラッシュアップ作業が続いている。今年1月にDraft 5.1が出ており、そろそろ正式な仕様として確定するのかもしれないが、確かなことは分からない。一方、afの作業は2004年のDraft 0.1から始まり、今月(2006年9月)にリリースされたDraft 0.8が最新となっている。

 Linksecは、L2で暗号化を行なうセキュリティ技術で、上位のアプリケーションには影響を与えない。基本的にはNICからNICまでのケーブル上での暗号化だと考えてよい。エンド・ツー・エンドのIPsecの暗号化では、発信されたパケットは最終的な宛先に到達するまでずっと暗号化された状態のまま保持しておくことができるが、Linksecでは、スイッチなどがパケットを中継するたびに復号され、再度暗号化されるという繰り返しになる。通信内容が平文で保持されるタイミングが存在することはセキュリティレベルの低下に繋がるともいえ、IPsecがあればLinksecは不要なようにも思われるので、この点を担当者に尋ねたところ、基本的には用途が異なるという回答であった。

 IPsecのエンド・ツー・エンドの暗号化では、途中でパケットを中継するデバイスはパケットの内容を知ることができない。しかし、ネットワーク機器の中には、ウイルスチェックや侵入検知など、パケットの内容を解析した上で動作するものがあり、ユーザー企業の中にもこうした機器に多額の投資を既に行なったところが少なくない。Linksecを利用すれば、通信経路を暗号化によって保護しつつ、既存のパケットの内容をチェックする機器は従来通りに利用できるため、投資保護に繋がるというわけだ。

 PCやIAサーバの内部に組み込まれて利用される技術ばかりではなく、ユーザーの現実の利用状況を踏まえた広範な技術開発に取り組んでいることが伺える、興味深いデモンストレーションが展開されていた。

IPsecとLinksecの違い。IPsecでは途中経路での復号を避けることができるが、Linksecではパケットを受信するたびに復号し、必要であれば再度暗号化する
IPsecとLinksecの違い。IPsecでは途中経路での復号を避けることができるが、Linksecではパケットを受信するたびに復号し、必要であれば再度暗号化する
(渡邉利和@RBB 2006年9月29日 12:42)
キーワード: IDF インテル

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FLOPS
IEEE 802.11a
IPsec
UPS
ウイルス
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多重化
半導体

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