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【CEDEC2006】「大学のゲーム教育・日本編」
9月1日
東北芸術工科大学 デザイン工学部 メディア・コンテンツデザイン学科教授 白神浩志氏
■CEDEC レギュラーセッション
IDGA アカデミック(3)

大学のゲーム教育・日本編

東北芸術工科大学 デザイン工学部 メディア・コンテンツデザイン学科教授 白神浩志氏
宝塚造形芸術大学 メディア・コンテンツ学部映像造形学科教授 川村順一氏
デジタルハリウッド大学 デジタルコミュニケーション学部 デジタルコンテンツ学科教授 飯田和敏氏

 海外のゲーム大学の先進例を紹介したセッションR21に引き続き、同じ場所で日本のゲーム学を紹介するセッションR24が行われた。日本のゲーム学の取り組みは始まったばかりで、カリキュラムも実績も海外の事例には及ばない。しかし、現行の教育制度の枠の中でゲームクリエイターを教授陣に加え、産学協同のカリキュラムを試みるなど、新進気鋭の精神に満ちていた。

■グループとカンパニーの単位で実習訓練
東北芸術工科大学デザイン工学部

 1992年に山形で開学した東北芸術工科大学デザイン工学部では、プロダクトデザイン、建築環境デザイン、情報デザイン、メディア・コンテンツデザインの4学科を擁している。この中でゲーム制作を学ぶコースはメディア・コンテンツデザイン学科のゲームデザインコースだ。ゲーム学を志望する新入生は当初からゲームのみを学ぶのではなく、まずは映像企画、商品企画、コンピュータ基礎/応用などを学ぶ。コンテンツ分野各方面の基礎を習得した後、2年生の後期からゲームコースを選択する。座学の他に制作実習をカリキュラムに加えており、6人1チーム、あるいは16人1カンパニーで作品を制作する。

 座学において、実際のゲーム開発現場から講師を招くという方式をとっていることも特徴だ。ゲーム開発の担当者が大学の教壇に立つ場合、学位が必要だったり、学会へ貢献したりという制約がある。しかし、現役のクリエイターはもちろんそんな時間はない。そこで東北芸術工科大学では、担当教授がゲスト講師を招聘するという方式を採用した。ゲリラ的ではあるが、この方式のおかげで学生たちはゲーム開発者の講義を受けられる。ゲスト講師にはバンダイナムコゲームズのクリエイターが参加しているという。

 学生は卒業までにゲームをひとつ作らなくてはいけない。しかし、完全に遊べるゲームを提出できる生徒は少ない。そこで、Flashアニメーションでゲームのラフイメージを作り、アイデアを発表できればよしとした。プレゼンテーションの最後で卒業作品のいくつかが公開された。グラフィックの華やかさはないものの、仕上がりを期待したいタイトルがいくつか見受けられた。


■学内スペースを企業に提供し学生を参加させる
宝塚造形芸術大学

 宝塚造形芸術大学は1987年に開学。インダストリアルデザインを学ぶ大学として始まったが、その後映像などにも幅を広げ、2005年にメディア・コンテンツ学部を創設してリニューアルした。講師陣には漫画家の松本零士氏、映画監督の成田裕介氏など実績のあるスタッフが揃う。演壇に立った川村順一氏はナムコで鉄拳を開発した。

 宝塚造形芸術大学は宝塚の他、大阪の梅田、東京の新宿にもキャンパスを持っている。川村氏は新宿キャンパスにゲーム制作会社が運営する「メディア工房」を開設する予定だ。メディア工房は教室、工房、ゲーム会社を持ち、同じフロアを3分割する。ゲーム会社部分は実際にゲームメーカーに買し出す方針だ。つまり学生が作った作品が販売される可能性もあるわけで、クリエイター志望の学生に大きな励みになるだろう。

 メディア・コンテンツ学部の学生はまず教室に配属される。いわゆる座学だが、ここで優秀と認められ、選抜された学生が工房に進める。工房はすでに同居しているゲームメーカーの開発部門であるため、工房に進学する場合は機密保持契約を結ぶことになる。CO-OPがアメリカ版のインターン制度だとするならば、メディア工房は日本版インターン制度だ。カリキュラムのスタートは来年度だが、どんな成果が上がってくるかとても楽しみだ。

(左)宝塚造形芸術大学 メディア・コンテンツ学部映像造形学科教授 川村順一氏

■客寄せ的なゲーム講座にNo! ゼミ形式でゲーム作る
デジタルハリウッド大学

 飯田和敏氏は、株式会社アートディンク時代に「アクアノートの休日」や「太陽のしっぽ」をディレクション。退社後も独特のセンスを堅持し、「巨人のドシン」をヒットさせた。“ほのぼの系”ゲームを確立した希代のゲームクリエーターである。飯田氏はゲーム産業が拡大したときに専門学校が次々ゲーム講座を設立した状況に違和感を持っていたようだ。ゲームを客寄せパンダのように使ってほしくない。そんな飯田氏が描くゲーム学は医学を手本としている。臨床医が病気を治し、新たな症例を発見すると、その解明を研究医が引き継ぎ、対処法を臨床医にフィードバックする。臨床を制作の現場だとした場合、彼らを支える研究者が必要だ。そこが飯田氏のゲーム学である。

 現在、飯田氏は東京工芸大学で非常勤講師、デジタルハリウッド大学院で「飯田ゼミ」の専任教授を務める。東京工業大学ではゲームデザイン論として、ゲームを取り巻く話題やゲーム業界を紹介する。ライトなゲーム学を担当しているようだ。しかし、デジタルハリウッド大学院では実践的なゼミを行う。昨年度はPSP用のアドベンチャーゲームツクールでゲームを作った。今年はゲームメーカーへに採用されるようなゲームの企画を作るという。

 そして、3つめの講座を2007年度から開講予定だ。デジタルハリウッド大学の通年講座「ゲームプロデュース&ディレクション」である。ここで行われる「ゲームデザイン論」と、実践的な「飯田ゼミ」の組み合わせにより次世代のクリエイターを育てる一方で、継続的なゲーム研究の土台を構築していくとのことだ。ゲームを教える人材が不足している我が国で、飯田氏の活躍は大いに期待したい。

(左)デジタルハリウッド大学 デジタルコミュニケーション学部 デジタルコンテンツ学科教授 飯田和敏氏

(杉山淳一@RBB)
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