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「正常な状態でないことは間違いない」 -RMTを仲介するジーエムエクスチェンジ
3月28日
 RMT(Real Money Trade)事業を行うジーエムエクスチェンジは3月28日に記者会見を行い、オンラインゲームメーカーと協調しつつ、RMTにまつわる諸問題について、積極的な改善の取り組みを行っていく姿勢を示した。

 同社は国内RMT業者16社からなるRMT倫理協会(REA)に加盟しており、社長の宇田川慎之介氏はREAの広報も担当している。RMT業者がこうした会見を行うのは初めて。

株式会社ジーエムエクスチェンジ 宇田川慎之介社長

 RMTとはオンラインゲームのアイテムや貨幣などを現実の通貨で売買する行為のこと。主にMMORPGなどの多人数参加型ゲームで見られる。多くのMMORPGではプレイヤーがゲームを遊んだ時間に比例してキャラクターが強くなる、時間消費型のゲームデザインが採用されている。そのためゲームプレイに時間をそれほど割けないユーザーでも、RMTを利用することで比較的容易にキャラクターを強化し、ゲームを有利に進められる。またゲームに飽きたユーザーが自分のキャラクターやアイテムを他者に売却するなどの例もある。こうした行為はMMORPGが誕生した1990年代後半からユーザー間で自然発生的に行われてきた。RMT市場はMMORPG市場の成長と共に拡大し、社団法人中央政策研究所の調査では、昨年度で約150億円の国内市場があるとしている。

 一方でRMTは詐欺行為や不正行為の温床となったり、ゲーム内の経済を破壊したり、ほかのユーザーへのハラスメント行為につながるとして、多くのオンラインゲームメーカーは利用規約で禁止している。また、最近では中国をはじめとしたアジア諸国のRMT業者が国内オンラインゲーム上でRMTを行い、収益を自国に送金する「バーチャル就労」現象も生じている。今回記者会見を行ったジーエムエクスチェンジは、このユーザー間のRMTをオンライン上で仲介する「RMT仲介業者」である。それだけに内容も新鮮で興味深いものとなった。

 一口にRMT業者といっても、そこには大きく2種類がある。ユーザー間の取引を仲介し、仲介手数料を取る「RMT仲介事業」と、大量の人間を雇ってゲームを実際に遊ばせ、ゲーム通貨を自ら生産してほかのプレイヤーに売却する「自社生産事業」である。前者はジーエムエクスチェンジを含む多くの国内RMT業者の形態で、後者は中国をはじめ、人件費の安いアジア諸国での例が多い。宇田川社長は、このうち昨年後半から海外の自社生産事業者グループが数多く国内オンラインゲームに進出した結果、ゲーム内で極端なデフレ現象が起きたことを示した。

 同社サイトにおける「ファイナルファンタジーXI」の取引例では、2004年秋にゲーム内通貨の10万ギルが平均1500円〜2000円で売買されていたのが、2005年春には600〜800円となり、2005年冬には40円〜100円にまで値下がりした。今年に入ってデフレ回復の兆しはあるが、海外RMT業者間の競争も激化しており、その結果不正行為を働く例も多いとのこと。こうした状況を受けて、これまで海外RMT業者からゲーム内通貨の買い取りを行っていた国内RMT業者の多くも、ユーザーからの買い取りにシフトしつつあるという。

 次に宇田川氏は同社サイトで行ったアンケートから、RMTを巡るユーザーの現状を紹介した。回答者の総数は2212名で男性85%、女性15%。職業別では会社員が47%と半数が占められ、年齢別では21歳から30歳までで全体の54%となっている。職業別でのRMT利用に関する意識調査では、社会人ほどRMTの利用経験があり、利用したい割合も高いが、学生やアルバイトなどでは利用経験も低く、利用したくない率が増えること。週に何十時間もプレイするヘビーユーザーや、ユーザーの年齢が高くなるほどRMTの利用経験が高いこと。ゲームプレイの期間では6か月から1年までのユーザーが最もRMTの利用経験が高いことが示された。

 またRMT利用の動機については、「自分のキャラクターを強くしたい」「高価なゲーム内アイテムを入手したい」「他のプレイヤーともっと遊びたい」「手軽に楽しみたい」などが示された。宇田川氏によると、このうち最も大きな理由が「他のプレイヤーともっと遊びたい」ためだという。これは多くのMMROPGではキャラクターレベルの差が離れすぎると、一緒に遊ぶことが難しくなるため、レベル間格差の是正のためにRMTが利用されている、という現状を示している。

 一方で宇田川氏は、MMOPRPGの楽しさとRMTが発達する要素が近いため、仮に法規制を行っても、RMTはアンダーグラウンドに潜るだけで、利用がなくなることはないと指摘。昨今では米SOE(Sony Online Entertainment)が「エバークエストII」でアイテムのオークションサイトを開設するなど、ゲームメーカーがRMTサービスを行う例もあるが、これについても疑問を示した。宇田川氏によると自社によるRMT運営例には、ゲーム通貨などをユーザーに直接販売する「ゲーム通貨生産型」と、ユーザー間のアイテム現金取引の場を提供する「オークション型」があるが、前者ではゲーム内のインフレが加速することと、公式レートより安い価格でRMT業者がゲーム通貨を販売するようになること。後者では詐欺の抑止以外の効果がなく、人的コストを考えれば疑問だという。

 その上で宇田川氏は、必要なのは不十分な規制ではなく現実的なソリューションで、オンラインゲームメーカーとRMT業者が協力して、管理可能なRMT市場の構築を行っていくことが重要だと指摘した。RMTが誘発する諸問題は、ゲーム通貨を生産する過程と販売時に集約されるため、ゲームメーカーとRMT業者が協力してユーザーのフィルタリングを行うことで、問題の解決ができるという。そのためにはRMT事業をゲームメーカーの許認可制とし、RMT業者が売り上げに応じてレベニューシェアを支払うモデルが必要だと説明した。また、このモデルでRMT業者によるアンダーグラウンドな海外送金も止められ、国内市場での流通額を増大できるとしている。宇田川氏は海外送金の額を国内RMT市場の1/3にあたる50億円程度と推測した。

(左)RMTを巡る現在の資金の流れ(右)宇田川氏が提唱する、あるべきRMTのモデル

 また、昨今ではMMORPGの多くが月額課金モデルからアイテム課金モデルへと移行している現状もある。アイテム課金モデルでは、プレイ料金を無料とするかわりに、魅力的なアイテムをゲームメーカーがユーザーに直接販売する形式をとっており、RMTの要素を運営側が取り込んだモデルになっている。ただし、実際にジーエムエクスチェンジで対象としているゲームの約半数はアイテム課金を採用しているが、個々のタイトルでRMTの利用数はそれほど変化がなく、アイテム課金モデルでRMT問題が解決できるという見方は疑問だという。

 ジーエムエクスチェンジは2004年8月に設立し、スタッフはアルバイトを含めて12名。RMTの取引は実際のゲーム中で行われる。スタッフがゲームのアカウントを取得し、ユーザーからの入金を確認した上でサーバにログインし、ゲーム内で通貨を手渡す仕組みだ。つまりメーカーが利用規約で禁止しているRMT行為を破った上でビジネスが行われていることになる。この点について宇田川社長も「正常な状態でないことは間違いない」としているが、今後ゲームメーカーと協調し、グレーな状態にあるRMT市場をオープンにしていくことで、問題を解決できるとしている。事業を始める前に半年間悩んだが、その間にもRMTによる問題が増加する一方だと考え、事業化に踏み切った。

ジーエムエクスチェンジ社内の様子

 現在RMTにまつわるルール制作については、社団法人中央政策研究所がゲームメーカーを対象にヒアリング調査を行っており、3月末に一定の研究成果をまとめるとしている。ただし宇田川社長は「RMT市場に日を当てる意味では姿勢は同じ」としている。一方でRMTを巡る問題についてゲームメーカー側の腰は重く、これまでにも何度かメーカー側の門を叩いているものの、定期的な話し合いの場を持つまでには至っていないという。同社や同社のサービスを利用するユーザーがアカウントを停止された事例はなく、「藪をつついて蛇を出したくない」というメーカー側の思惑も透けて見える。

 RMTを巡る諸問題の完全解決には、(1)ゲーム内から通貨やアイテム、キャラクターの成長など、RMTにつながる要素を削除する(2)ゲームメーカー側がRMTを完全に禁止する仕組みを作る(3)ゲームメーカー側がRMTを前提としたゲームデザインを行う。という3種類の方法論が考えられる。しかし、そうして作られた新規タイトルがユーザーの支持を受けられるか否かは不明である。またいずれの方法論も、既存のMMORPGで行うにはゲームの根幹部分の改修が必要で、その結果として既存ユーザーが離れる危険性もある。

 RMT事業者とゲームメーカーを巡る関係は、かつてのゲームソフトを巡る中古問題の図式を彷彿とさせる。またバーチャル通貨という意味では、インターネット上のポイントビジネスとも関連性が高い。ゲームの中古流通やRMT、さらにはかつてのレンタルレコード業などのように、ユーザーの自然発生的なニーズで誕生したビジネスは、規制してもなくなることはあり得ない。「ユーザーはゲーム内通貨やアイテムを安く買いたいのではなく、安全に購入したい」(宇田川氏)。RMTを巡る諸問題の解決は今後オンラインゲーム市場が拡大する上で避けては通れず、世界中のどの市場でも未解決である。業界全体での取り組みで、日本モデルを提示する必要性が求められている。



アンケート結果

(小野憲史@RBB)
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