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★ Slash Gamesは、2007年6月1日より「インサイド」になりました
音楽業界はP2Pやコピーをおそれて販売チャンスを失っている -東京コンテンツマーケット
10月21日
 本年ついに「iTunes Music Store」のサービスが日本でも開始。国内でも各社から音楽配信サイトが立ち上がり、2005年はインターネット音楽配信元年となった。一方で音楽業界には楽曲配信に対する懸念も根強く、あるサイトでダウンロード購入した楽曲を他社の音楽携帯プレイヤーで自由に聞くことが難しいなど、消費者の利便性を欠く事態も生まれている。こうした中で音楽配信のビジネス展開や、ファンとクリエイターの関係性はどうあるべきか。東京コンテンツマーケット2005で最後のシンポジウムとなった「音楽ネット配信最前線!」では、このテーマに沿ってホットな議論が繰り広げられた。

 シンポジストは株式会社レコミュニ代表取締役の福岡智彦氏、株式会社に・よん・なな・ミュージックの音楽プロデューサー、宇佐美友章氏、ブロードキャスターのピーター・バラカン氏で、モデレーターはUFJ総合研究所で芸術・文化政策を担当する太下義之氏。太下氏は「音楽はファイル容量が少ないので、デジタル配信技術の実験場になりやすい。東京コンテンツマーケットは映像系が中心だが、音楽業界で起きた現象は、今後映像にも影響を与えていく」と、本シンポジウムの意義を語った。

左からUFJ総合研究所の太下義之氏、レコミュニの福岡智彦氏、ブロードキャスターのピーター・バラカン氏、に・よん・なな・ミュージックの宇佐美友章氏
左からUFJ総合研究所の太下義之氏、レコミュニの福岡智彦氏、ブロードキャスターのピーター・バラカン氏、に・よん・なな・ミュージックの宇佐美友章氏

 シンポジウムはまず福岡氏、宇佐美氏がそれぞれ同社で展開する音楽配信サイトの現状や理念について紹介した。

 福岡氏が昨年オープンした「recommuni」は、世界初のSNS型音楽配信サイト。その理念は「音楽を自由に楽しみたい」という点にある。福岡氏は「以前は自分のベスト版をカセットで作成して、友だちの間で貸し借りをするなど、コピーやコミュニケーションが音楽の楽しみを広げてきた。それが今ではDRMなどの存在で不可能になった」と述べ、recommuniではNon DRMとコミュニケーションの復権を旗頭に、SNSと音楽配信を組み合わせた、新しいサービスを展開していると語った。

 recommniの特徴は楽曲のレコメンド(推薦)から始まる点。会員からサイト上で音楽のレコメンドがあると、rcommuniは配信許諾をレコード会社やアーティストに行い、許諾がとれたものだけSNS上で配信可能にする。ユーザはレコメンドを読み、興味があればすぐにダウンロードして楽しめる。音楽データはMP3でNon DRM。一方で匿名性の薄いSNSの特性を利用したり、楽曲データに電子すかしを入れるなどして、ユーザの権利者意識も育てていく。福岡氏は音楽を聴いて楽しむ時代から、音楽を使って楽しむ時代に価値観が変わりつつあるとし、recommuniをアーティストやレーベルの音楽発信基地にしていきたいと述べた。

 宇佐美氏は12月にオープン予定の音楽配信サイト「mF247」のビジョンと概要について説明した。mF247はソニー・ミュージックエンタテインメントの元代表取締役社長、丸山茂雄氏が同社を引退後に設立。こちらも音楽データはMP3でNon DRM。楽曲は原則無料で、アーティストが有料を希望する場合は1曲99円となる。新人アーティストの発掘やプロモーションが中心だが、biG"A"という大物アーティストが楽曲を配信するコーナーも予定している。予約数を超えたらコンピレーションアルバムを発売したり、最低人数を超えたらライブを開催するなどの計画もある。

 宇佐美氏は丸山氏の言葉を引用し「音楽の主役は音楽であるべきだ」とサイトの理念を説明。現在はテレビ番組のタイアップや、ラジオのパワープレイが音楽を売る方程式になっているが、他メディアに頼らない仕組みを作るとした。原則無料、コピーフリーの配信モデルについても、丸山氏が設立パーティ時に述べた「音楽は好きになるまでは情報だが、感動すると作品になる」という言葉に触れつつ、音楽を作る者には「まず聴いてもらいたい、その上で気に入ってもらえたらビジネスにしたい」というマインドがあると説明。情報として入手しやすい形で広めることが大切だと述べた。

 これらを受けてピーター・バラカン氏は、ブロードキャスターとしての立場からコメントした。バラカン氏は最近ではTBSニュース番組「CBSドキュメント」の司会でおなじみだが、元々はラジオ音楽畑の出身で、現在も「バラカン・ビート」(インターFM)、「ウィークエンド・サンシャイン」(NHK-FM)などのレギュラー音楽番組を持ち、世界中の音楽の紹介に勤めている。

 バラカン氏はまず「福岡氏、丸山氏ともにソニー・ミュージック出身という点で、過去のキャリアに対する反発心もあったのではないか」と指摘。日本の音楽業界の保守性について触れ、iTunes Music Storeがスタートしたにもかかわらず、大手レコード会社の中には楽曲を提供しない企業があることに懸念を示した。「自社の権利を他社に有料でも認めさせない姿勢は、保守的を通り越して、わかってない」(バラカン氏)。バラカン氏によると、先進国の中でストリーミングラジオに楽曲を流せないのは日本だけだという。

 またバラカン氏は、ラジオの音楽番組が多様性を失いつつある点についても触れた。アメリカでは過去20年間で全米ラジオ局の編成が進み、キー局の番組を一斉に流すようになった結果、番組の多様性が失われているという。それでもアメリカでは地方でストリーミング配信による無国籍番組が存在するが、日本ではラジオ局が少なく、ストリーミング配信もできなため、J-POPが主体で、洋楽やワールドミュージックの割合は非常に少ないと指摘。このようにラジオ局が本来の機能を果たさないのであれば、ユーザがインターネットに流れるのは自然だと指摘した。また両サイトのコミュニティ機能にも触れ、音楽配信サイトがラジオ局と音楽雑誌の双方の役割を担いつつある点も指摘した。

 実際に福岡氏によると、大手レコード会社はコピーを恐れてrecommuniに楽曲の使用許諾を出さないという。「アーティストも所属事務所もYESと言っているが、レコード会社は許諾しない」(福岡氏)。一方でmF247では大物アーティストによる楽曲配信も予定されているが、宇佐美氏によると「ビッグアーティストほど音楽業界の現状をよく理解しているので、権利関係がクリアになる人からは配信を断られたことがない。一方で新人アーティストほど、大手レコード会社の営業力に期待する傾向にある」と、アーティスト側の反応を紹介した。

 このほか会場ではP2Pの問題や、デジタル時代におけるアーティストとリスナー、音楽制作のあり方など、さまざまな視点から議論が行われた。その中でも異口同音に語られたのが、“音楽業界はP2Pやコピーの問題を恐れて、プロモーションや販売チャンスを失っている”という点だった。これはひるがえって、今後映像、動画、ゲームが配信対象になった時、どのような対応をとるべきか、会場全体に投げかけられた問題提起だったといえる。また音楽業界とインターネットの関係をクリエイターは注視する必要があるだろう。

 最後に音楽業界のこれからについて、太下氏は「これまで日本では音楽チャネルが限られており、J-POPや一部の米英ヒット曲しか楽しめなかった。これは音楽全体からみればいびつなこと。P2Pでは全世界で2,500万曲が流通していると言われ、iTunes Music Storeの150万曲は一部にすぎない」と紹介した。また福岡氏は「混迷の時代だからこそ背筋を伸ばして、良い音楽文化を日本から広げていきたい」と抱負を述べた。宇佐美氏は「今まではCDを輸送するコストが必要だったが、音楽配信ではゼロになる。これをどのように生かすかで音楽業界は大きく変化する」と指摘。バラカン氏は「すべての音楽ライブラリがネット上にできることを期待したい」とコメントし、シンポジウムを締めくくった。

(小野憲史)

※修正)初出時、株式会社に・よん・なな・ミュージックの音楽プロデューサー、宇佐美友章氏のお名前に誤りがございました。ここに訂正し、お詫び申し上げます。
(RBB TODAY)
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「東京コンテンツマーケット2005」公式HP
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