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ゲームにおける日本版LLP、コンテンツファンドの可能性を探る― SIG-OG第5回研究会
7月19日
 ブロードバンド推進協議会は7月16日、オンラインゲーム専門部会(SIG-OG)の第5回研究会を開催した。今回はオンラインゲーム事業の資金調達方法の可能性を探るというテーマで、日本版LLP(有限責任事業組合)や、すでに実施されているコンテンツファンドのビジネスモデルについて各界識者による講演と、ゲーム開発会社代表取締役を交えたパネルディスカッションが行われた。

経済産業省関東経済産業局 新堀好明氏
 まず経済産業省関東経済産業局 新堀好明氏は、「映画、アニメ、ゲームソフトは日本が世界から高く評価されている分野だ。これらの著作物を活用したビジネスを振興することは国家戦略として位置づけられる」と国の立場を表明したうえで、「従来の単独企業による著作制作ビジネスでは、コンテンツ制作者が流通会社の下請的な立場になり、成果に応じた利益を得られない」と従来のコンテンツビジネスを分析。制作会社が優秀な人材を継続的に確保できない状況を危惧。その打開案として、コンテンツのための新市場の創設と、下請代金法制定などの具体案を紹介した。そののち、今回のテーマである資金調達について、経済産業省が創設する中小企業ファンドを活用したコンテンツファンドの可能性を示唆した。そのなかで、最近の映画制作に見られる「制作委員会」方式を発展させた日本版のLLPについて解説した。

 映画の制作委員会方式は、1タイトルの制作について複数の企業が出資し、著作権を共有する仕組み。映画の興行収入は映画館や配給会社に多く配分されて、制作委員会の取り分は少ない。しかし、制作委員会は著作権を保有するため、テレビ放送、DVD販売などの著作権による利益が得られる。それを資金の出資配分に応じて分配する。

 これに対してLLP(有限責任事業組合)は、コンテンツビジネスに出資したいが制作のノウハウがない企業や投資家と、才能はあるけれどもプロダクツを完成させる資金がない、という中小企業や個人が共同で結成する。利益はLLP参加者が資金と才能などの貢献度を包括的に判断して分配する、という仕組みだ。これにより、才能がある人々が、作品を発表、販売する機会を得やすくなる。LLP設立のステップは4段階で、設立までにかかる日数は10日間前後。株式会社設立は12ステップもかかることを考えるとLLPの方が機動力が高いと言えそうだ。このほか、LLPとLLC(有限責任会社)の違い、課税方式の違い、出資者の責任の範囲など、かなり詳しく紹介された。

 JDC社は旧通産省の「マルチメディアコンテンツ流通研究会」を母体とし、民間企業として発足した会社。デジタルコンテンツ業界の発展に寄与するため、資金調達、マーケティング面におけるコンサルティング業務を主としていたが、今年5月に信託会社の免許を取得した。現在はデジタルコンテンツのひとつひとつのタイトルごとに投資や著作権管理を実施するほか、複数のタイトルに投資する「東京マルチメディアファンド」を3組結成し、実際に投資業務を実施している。投資実績にはゲームソフトも多数含まれているが、オンラインゲームは「案件として扱ったことはあるが、未だ実績はない」という状態だ。

ジャパンデジタルコンテンツ信託 企画部長 投資業務部長 浜尾知樹氏
 ジャパンデジタルコンテンツ信託 企画部長 投資業務部長 浜尾知樹氏の講演は、実際の業務経験に基づいたものだった。コンテンツへの投資に対するリスクについて、制作する企業、開発の予算と日程管理、商品の市場性、販売ルートの整備の4点を指摘。リターンの予測分析の手法を紹介し、投資が実施されるか否かの評価方法が説明された。投資家から見たオンラインゲームの事業分析は、ゲーム業界の内側で働く人々が気づきにくい客観的な視点であり、新鮮だった。投資家から見たオンラインゲームの魅力と、リスクも紹介され、投資の条件についても一定の見解が示された。

 ソリッドネットワークスはオンラインゲームビジネスの導入、システム、ユーザーサポート面におけるアウトソーシングを主な業務とする会社。ゲーム会社はオンラインゲームの企画開発などの表側を担当し、ソリッドネットワークスが裏方として運営サポートをする。米国カリフォルニア州サンノゼ市にONLINE GAME SERVICES INC.(OGSI)という子会社があり、ゲームサービスプロバイダー(GSP)としてのビジネスモデルを北米、ヨーロッパ市場に展開している。2003年の東京ゲームショウにも出展しており、ゲーム業界では実績のある会社として認知されている。

ソリッド・ネットワークス 代表取締役社長 大塚恵太氏
 ソリッド・ネットワークス 代表取締役社長 大塚恵太氏はオンラインゲームを運営する側の立場から、オンラインゲームの投資対象としての魅力を説明した。従来のオンラインゲームは開発からサーバ管理、運営サポートまでをひとつの会社がまかなっており、膨大な資金が必要だった。しかし、同社のようなアウトソーシングを引き受ける会社が参加することで、資金リスク、運営リスクが分散される。オンラインゲームのファンド化は、この流れを資金調達の面にまで拡大したものと位置づけ、低リスクでオンラインゲームの利益を得られる、将来的にはユーザーコミュニティが生み出す利益がキャピタルゲイン的に発生するため、長期的な利益還元の可能性があるとプレゼンテーションした。

 同社はオーストラリアのMicro Forte社によるMMO用サーバ/クライアントソフト「BigWorld」の代理店である。MMORPGのエンジン部分を外注化することで、今後は比較的少ない資金で利益の高いビジネスモデルが作られるだろう、と展望。また、映画のような制作委員会(匿名組合システム)によるファンド化の提案も、具体的な数字を示してプレゼンテーションを行った。内容は大塚氏と重複している部分もあったが、浜尾氏はゲーム開発者に対して投資モデルを説明しており、大塚氏は投資家向けの説明となっている。このことから、投資家とゲーム運営者の認識が近づいてきたことが印象づけられた。

パネルディスカッション
 その後のパネルディスカッションは、講演を行った新堀氏、浜尾氏、大塚氏に加えて、ゲーム開発会社「フューチャークリエイツ」の藤井やすひこ氏、立命館大学助教授であり、当サイトのコラム「今どきゲーム事情」の執筆陣に加わった中村彰憲氏が参加した。

 司会はIDGA日本代表の新清士氏で、ゲーム開発のモジュール化は世界的な傾向であるという説明のあと、それが投資対象としてどのように考えられるか、今後の可能性についてディスカッションが行われた。登壇者が並ぶ様子から、官民一体となってオンラインゲームを盛り上げていこう、という強いメッセージが感じられた。このなかで大塚氏はオンラインゲームが成熟すると、ゲームではなくコミュニティになり、物販などの新しいビジネスが発生する、と投資の利益還元面を展望した。また、浜尾氏もRMT(ゲーム内アイテムの現金取引)などの、ゲームプレイの課金以外のビジネスに対して関心を示した。

 投資対象としてのMMORPGについて、ユーザーが離れてタイトルが収束に向かった場合の対処については、大塚氏が「投資対象として優秀なタイトルであればサービスは継続できる」、浜尾氏が「オンラインゲームの実績はないが、他の分野では、商品寿命の収束が見えた段階でクリエイターに努力を促し、一定の条件で見切りをつけるだろう、ただし、投資なので資金の回収はない」、藤井氏は「ユーザーは常に入れ替わっており、1ユーザーあたり3年プレイし続けてもらいたい、という目標で開発している」と、それぞれの立場で語った。

 オンラインゲームでコンテンツファンドが普及すれば、クリエイターにとっては作品を発表できるチャンスが広がることになる。しかし、現状は、利益関係者たちの協議や調整が必要になり機動力がない。力のある企業が銀行などから資金調達した方が手っ取り早い、という意見もある。その意味で今回の研究会は、ゲームの資金調達に対する新しい手法を認識する良いきっかけになったといえそうだ。

 SIG-OGは、ブロードバンド推進協議会が主催する、オンラインゲームに関する問題を取り扱う研究会。詳細はブロードバンド推進協議会のWebサイトでも結果報告が行われる予定だ。なお、本稿に合わせて以前に掲載したインタビュー(「ゲームに投資する」という仕事【前編】〜ベンチャーキャピタル会社の方と、とことん話をしてみました〜)も参照していただければ幸いである。
(杉山淳一@RBB)
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