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エイベックス、小室哲哉氏をゲストに迎えて「高音質の未来」を討論
エイベックスネットワークは20日、同社が進めている高音質プロジェクト「Super Sound Creation」の一環として、高音質の研究におけるエグゼクティブアドバイザーとして音楽プロデューサー兼ミュージシャンの小室哲哉氏を招き、高音質研究の成果と「HD Sound Laboratory」の設立趣旨を発表した。
HD Sound Laboratoryは、デジタルガジェットに対する音質の向上、プロ用機器フォーマットも楽に再生できるスペックを持ったPCに対して、良い音を提供するための技術を開発・実験していくためのラボ。HD Soundとは、High Definition Soundの略で、HD Soundは、今までよりも高品位な音という意味だ。
HD Sound Laboratory
まず、エイベックスネットワーク代表取締役社長の荒木隆司氏が挨拶した。「エイベックスは、本格的な音楽配信時代に向けて、思いっきり舵を取っている。それがちょっと誤解を生んで音楽配信サービスしかやらないのかという質問をよく受けるが、もちろんそんなことはなく、旧来のメディアも扱う」とコメント。「音楽配信が本格化するだろうと確信したのが、昨年の暮れあたり。今年の頭から準備を始めてきたが、私たちのポジションは、あくまでソフトコンテンツ制作会社だ」と強調した。
ソフトコンテンツメーカーとしての責任を全うするために議論を重ねてきた。その答えの1つが、携帯電話向けの会員制有料音楽配信サービス「ミュゥモ」。もう1つが、高音質プロジェクトのSuper Sound Creationだ。「HDプレーヤーやメモリプレーヤーが登場していく中で、エイベックスはクリエイティブを機軸にした会社としながらも、それをどのように消費者に伝えるかまでを責任持ってやるべきだろう。当然、エイベックス単独ではできないので、皆様(通信キャリア、ハードメーカー、コンテンツプロバイダー、ISP)と一緒にやっていかなくてはいけない。そして、音源メーカーとしては、誰かが業界をリードする必要がある」と考え、Super Sound Creationを設立した経緯を語った。
小室哲哉氏をエグゼクティブアドバイザーに起用した理由については、「音に対するこだわりでは、ほかに例がないくらいこだわれる小室哲哉さんと話をする中で、エグゼクティブアドバイザーになってもらって、さらにこだわってやっていこうとスタートしたのが、このプロジェクトだ」と説明した。
続いて、高音質の未来をテーマに、パネルディスカッションが行われた。パネルディスカッションの参加者は、スペシャルゲストの小室哲哉氏をはじめ、ナビゲーターに寺島情報企画代表取締役の寺島明人氏、パネラーとして、リットーミュージック取締役兼サウンド&レコーディング・マガジン編集長の國崎晋氏、フラクタル・デザイン代表取締役の藤本健氏、エイベックスネットワーク取締役COO兼デジタル・ディストリビューション本部長である前田治昌氏の5名。
パネルディスカッションでは、「アナログからデジタルへ メディア変遷の時代」「32ビット/384kHzの夢 高品質フォーマットの影響」「圧縮音楽の台頭 現代の音楽を取り巻く環境」「高音質と圧縮音楽 ブレイクする両極端との整合」「音楽環境とアーティスト HD Soundで目指すべき未来」という5つの議題が取り上げられた。
●アナログからデジタルへ メディア変遷の時代
小室哲哉氏は、84年のデビュー当時からメディアの変遷を振り返った。デビュー当時のメディアはもちろんアナログのレコードのみ。最も革新的だったのはCDだという。CD時代には、うまく乗れたかなと思っている。当時は、PC-98とカモンミュージックのソフトで作曲していたという。「その後MDが来て、98年ぐらいにMPEGが登場し、解凍しなくてもいいところが画期的。その後、Napster、iTunesが登場し、よくここまで生き抜いてきたな」とコメントした。
また、小室氏はレコード会社へのマスター納品に長い間DATを利用してきたという。それは、CD(16ビット/44.1kHz)より、DAT(16ビット/48kHz)の音のほうが良かったためだ。だから、何年も前からCDが1番いい音だとは思わない。特に、コピーコントロールのかかったCDでは、「いくら理論的に音が変わらないと説明されても、僕でさえ1つマスキングされているように感じていた」ことにも言及。
エイベックスの前田氏は、「音楽配信については、まだ実験段階から出ていない。ビジネス的には、前年比300%や500%という数字が賑わっているが、実際にはこれからかなと感じている。楽しむための音をどうするかという点をこの場で話し合いたい」と述べた。
フラクタル・デザインの藤本氏は、「MP3などのオーディオ圧縮した音楽を聴く環境が増えてきた。それに対して、世の中が変わったかというと、PCメーカーのアップルがiPodなどの機材を出しているが、レコード会社は何もやっていないので、もう少しやってほしい」と主張。
サウンド&レコーディング・マガジンの國崎氏は、「スタジオでは10年ぐらい前から、小室さんのおっしゃるとおり、DATがCDの音質を超えていた。この10年間で技術の発展があり、スタジオでは、ミュージシャンがサンプリングレート24ビット/96kHzは当たり前のようにマスターを作っている。簡単に言うと、ミュージシャンは、CDに収まらないレベルで、音を作っているということだ」と、レコーディングスタジオの環境を解説した。
●32ビット/384kHzの夢 高品質フォーマットの影響
前田氏は、「エイベックスが運営するWebサイト「HD Sound」では、実験段階のため広くリリースしていないが、CDよりいい音、DATレベルの16ビット/48kHzの音源を試聴ダウンロードできる」とアピール。また、HD Soundを開設した経緯は、「こんないい音がインターネットで届けることができるという投げかけたいと思い、このサイトを立ち上げた」と説明した。
小室氏は、「テープの時代でも、24ビット/96kHzや48kHzで録っていた。マスタリング時には確認できた小さなブレス音などがCDとして納品されたときに、聞こえなくなってしまうことが多々あった」という。
また小室氏は、「90年代、最新の機械が好きでシンクラビア(シンセサイザーの超高機能版)を使っていた時期がある。シンクラビアは、ステレオサンプリングが100kHzまでできた。100kHzを44.1kHzの落とすことはわかっていつつも、興味本位からナイトレンジャーのギタリストの収録に使ってみたという。このギタリストは、速弾きの正確無比で売っており、16ビートで正確な音・リズムを持っていた人が、プレイバックした途端にピッキングノイズやズレなどが入っており、「オレはこんなにヘタじゃない」と憤慨したという。そのくらいシンクラビアは、克明に記録できたというエピソードを語った。
高音質のメリットは、「マスキングしてよくないものをそこそこ聴かせるられること。他方、向上心のあるミュージシャンであれば、本当の声質や表現力、テクニックをチェックできること。また、ロスレスで届けられるにこしたことはない。ローファイにしようがそれはそれでいい。ただ、384kHzという驚異的なサンプリングレートで録っておくことがベストだと思わないが、素材として384kHzで持っておいてもいいのではないか。下のサンプリングレートから上げることは不可能だから」と説明した。
さらに、小室氏は通信キャリアやダウンロード配信サービス業者については、最も音源を大切にしている努力が感じられるため、仲間意識を強くもっているという。
藤本氏は、一般ユーザーのオーディオ環境について、「高音質の一般ユーザー環境は、全くないに近い。オーディオ機器としては、DVDオーディオやSACDがでてきているが、現状ではほとんど持っていないのではないか。24ビット/96kHzや、24ビット/192kHzを使っているのは、PCマニアの人たち。24ビット/192kHzなどはかなり普及しているが、まだこれから。16ビット/44.1kHzをきちんと再生できる環境も少ない。機材は安くなっているので、発信者側がもっといいものあると教えてあげれば、もしかしたら買うのではないか」とコメント。
國崎氏は、「スタジオの現場では、マスターを作るのに、24ビット/96kHzが一般的になってきた。中には、24ビット/192kHzでやっている人もいる。32ビット/384kHzは、まだ使われていない。だが、DATの48kHzから96kHzに移行したのは、アッという間だった。現在、普通のアマチュアが買えるオーディオインターフェースでも96kHzに対応している。もうすぐ192kHzが普通になっていき、その頃にはプロが384kHzを使うだろう。意外とすぐに32ビット/384kHzの時代が来ると思う」。
アーティストにとって高音質を配信できるメリットは、「従来は16ビット/44.1kHzのCDフォーマットしかなかったが、ローファイやハイクオリティを選択できるようになったこと」。さらに、「配信業者も楽曲によってチョイスし、それぞれ特徴を出せるのではないか」という。(小室氏)
前田氏は、「家、クルマ、通勤、通学など音楽の聴くシーンによって、持ち歩く楽曲数やファイルサイズ、音質をユーザーが選べるような環境になってきた。そういう点で、ユーザーのほうが先に行っており、われわれは3つぐらいのファイル形式しかなく、選択肢をあまり示せていない」と現状を語った。
●圧縮音楽の台頭 現代の音楽を取り巻く環境
前田氏はエイベックスが運営する@MUSIC HDについて、「@MUSIC HDでは、WMAとATRAC3plusのフォーマットをサポートし、携帯、PCに対応している。従来サイトは、ファイルの容量を考えるとナローバンド時代を前提としているが、@MUSIC HDでは従来比7倍の35Mバイト前後になる」と説明。さらに、「光ファイバーやADSLが普及してきたのにもかかわらず、いい音を届けるということがおざなりになっていた。これには、DRM(著作権保護技術)の方向に目が行き過ぎていた」という反省も述べた。
音楽配信サイト「@MUSIC HD」
小室氏の圧縮音楽のイメージは、「いい音がすべてではなく、無料で試聴できたり、早く聴けたりするなど圧縮音楽にもメリットがある。圧縮すれば確実に音質は劣化しているが、圧縮=劣化=ダメということではない」。
藤本氏は、「CDからリッピングするから音が悪くなる。音楽配信サイトから買ってくる音も、結局レコード会社のCDをマスターとして圧縮しているから、自分でエンコードして聴く音と変わらない。その音が良ければいいのだが、色々妙な感じを受ける。レコード会社もそのようなものを出していていいのかなと疑問を持っている。24ビット/96kHzでレコーディングしたものがあれば、そこから直接マスタリングし、エンコードすればいい」と思っていたところ、「@MUSIC HDがちょっと違ったことを始めると聞いて大変興味を持っている」という。
実際に、128kbpsのWMA、16ビット/44.1kHz(CD相当)、16ビット/44.1kHz(CD相当マスタリング前)、24ビット/96kHz(DVDオーディオ相当)、24ビット/192kHz(マスタリング前)の比較デモも行われた。音源はいずれもglobeが6月29日にリリースするニューシングル曲「Here I Am」で、音量レベルは同一。
ほかにも、楽曲は違うが音量レベルは共通となる、24ビット/192kHz(マスタリング前ロスレスのトータルコンプなし)のデモもあった。
筆者はオーディオ専門家ではないが、24ビット/96kHz以上の高音質になると、音圧レベルが明らかに違うことを体験できた。
●高音質と圧縮音楽 ブレイクする両極端との整合
國崎氏は、「レコーディングスタジオでは、ミキシングエンジニアが24ビット/96kHzでミックスダウンを行う。これがいわゆるマスターという作業。場所を移して、マスタリングスタジオで、マスタリングエンジニアがメディアに対するマスターを作る。現在は、CDメディアしかないという前提で、マスターが行われている。つまり、16ビット/44.1kHzのCDでできるだけいい音になるように作業している。iPod用や携帯の着うた用などのマスタリングが必要だ」と主張。さらに、「いい音からiPod用にマスタリングすれば、ちゃんといい音で圧縮できた」との実験結果も紹介した。
前田氏は、「エイベックスでは、数年前から配信の音源として、CDよりなるべく現存する音源を使うようにしている。ただ、配信用マスターの現場の運用段階で課題がある。レコーディングからアウトプットまでのワークフローを会社としてチャレンジしているところ」。
藤本氏は、「7・8年前にMP3が登場し、WMA、AACが出てきた。そこで、音質がMP3から大きく上がったかというと、そんなに変わっていない。各メーカーがCDクオリティで書いてあったがCDと違うと思っていた。だが、1昨年あたりからロスレス圧縮が登場し、CDと同じ音が出ている。これが音楽配信になればいい。そうすると、24ビット/96kHzのマスターの音を聴いてみたくなる。CDや音楽配信、SACD、DVDオーディオという形はわからないが、そんなものがでてくるとワクワクする」とコメント。
●音楽環境とアーティスト HD Soundで目指すべき未来
小室氏は、「従来は、ソフトによって、ズレているところをピッチコントロールで直すことで何とか商品として成立したが、HD Soundにより少しのミスでもごまかせず、悪いところがすぐに伝わってしまう」という。これが、「アーティストのプロフェッショナル化の向上心には間違いなくつながる」と説明した。
最後に、小室氏は「究極の情報量はアナログ曲線である。その曲線をデジタルにし、細かく見るとスクエアになってしまう。あるメーカーは352kHzまできており、限りなく曲線の波形に近づいている。デジタルの数値を上げると、機械の音になるのではない。アナログの生の音(やさしさ・温かさ)に近づくことだと感じている」と力説した。
また、前田氏は「エイベックスは、携帯や持ち運べる気持ち良さと、耳を奪われるようないい音楽(HD Sound)の両方に挑戦していきたい」とパネルディスカッションを締めくくった。
(高柳政弘@RBB 2005年6月21日 08:24)
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