ライターの小野憲史氏は、「GDC2004いきなり総括〜ワールドワイドでの開発トレンド〜」と題した講演で、増大する開発負荷についてGDCでどのような発表がおこなわれたかを中心に発表をおこなった。
開発負荷の問題については、今年になって増加してきたトピックということで、市場の成熟と寡占、PS3やXbox2といった次世代機の登場が近いこと(2005〜6年といわれる)などをその理由としてあげた。特に次世代機については、あらたな研究開発投資が必要となり、利益率の低下につながるほか、ゲーム開発プロジェクトそのものの大規模化も進むことになる。
これに対してはミドルウェアの活用(RenderWare / CRI / Big World / XNA)によるコスト削減や、版権(映画)ゲームによる映画ファンの取り込みや、Eye Toyのような新しいプラットフォーム、モバイル(携帯)市場といった市場の拡大による対応や、ゲームのノウハウをエンターテイメント以外(社員研修や教育、福祉、医療、軍事など)に活用する「Serious Games Summit」についてもレポートした。
小野氏の見るところでは、北米市場もそろそろ厳しいということで、版権ゲームや新しいインターフェースによる新しい顧客の拡大、ツールを洗練してコスト削減、といった対応が必要だろうと指摘した。
IGDAスタッフでもある東京大学大学院学際情報学府博士課程1年の星野瑠美子氏は、GDC2004のIGDAビジネスサミットから、BioWareのRay Muzyka氏によるオープニングセッション「State of the Union」を紹介。BioWareは、バルダーズ・ゲートやネヴァーウィンター・ナイツ、Star Wars: Knights of the Old Republicなど良質のRPGを開発するカナダの開発スタジオだ。
Ray氏は、北米のゲーム業界の現状が危機であることと、デベロッパーがそれに動対応すべきかを講演。業界が成熟に向かう中で、市場の飽和と会社数の整理統合が進行しているとして、パブリッシャーやデベロッパーの階層化が進んでいるという。
パブリッシャーが巨大化していく中で、デベロッパーは下請け扱いされてきており、これにデベロッパーが対抗するには「質にこだわる」「あるジャンルのエキスパートになる」「消費者に対するブランドづくり」「ファンとの間のコミュニティ形成」などによる差別化が必要だと指摘。また、既存パブリッシャーを使わないデベロッパーからの直接販売(ダイレクトディストリビューション)の可能性もあるという。
Ray氏の発表と対極をなすようなEAの発表より。SIMSとMYSTは「広告によって売れた」という。
IGDA日本の新清士代表は、「北米オンラインゲーム市場の変動」と題した講演をおこなった。現在北米では、MMORPGへの投資意欲の減退が強まっているという。原因の一つがSims Onlineの失敗で、EA本体からの圧力で完成度の低い状態でリリースしたためプレイヤーからの支持が得られず、ユーザは当初言われていた100万人に遠く及ばない10万人前後で推移している。
そのほかのタイトルの状況として、Star Wars Galaxiesは30万人をピークに伸び悩みを見せる一方、Ultima OnlineやEverQuest、Dark Age of Camelotなどの初期タイトルが強力なコミュニティによって今も多くのユーザを維持している。
唯一会員を大幅に伸ばした新規タイトルがFinal Fantasy XIで、これはPS2のハードディスクユニットにプリインストールして出荷されたのが寄与し、北米MMORPGでは初めて50万人を突破したタイトルになった。とはいえ、100万人の大台に乗るタイトルは未だに出てきておらず、サーバ運営などコストがかかる割に儲からないMMORPG開発への投資は削減されているという。
その一方でSony Computer Entertainment America(SCEA)は、PS2向けの特殊部隊FPS「SOCOM」にネットワークユニットをバンドル、合計で260万個を販売するなど、SCEAによるPS2のオンラインゲームプラットフォーム化が本格的に進められている。上述のFFXIのHDDプリインストールについても、SCEAの“本気”を示すものということで、新氏は、E3でのオンラインもののキラータイトル登場があるのではないかと述べた。また、PCでのオンラインゲームについても、RealArcadeを例に北米ではカジュアルゲームの有料販売モデルが立ち上がってきていることを紹介。北米、日本、アジアでオンラインゲームの環境に大きな違いが出つつあると述べた。