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KDDI、トヨタなど6社。DSRCのハンドオーバ、セキュリティ面の技術開発をほぼ完了
KDDI、KDDI研究所、トヨタ自動車、NTTデータ、日本電気、日立製作所の6社が3年に渡って着手してきたDSRCの基礎研究開発が、本日付けで栃木県のKDDI施設内で公開された。
DSRCは、ITS(高度道路交通システム)における双方向ブロードバンド通信のひとつで、ETCをより高度にして双方向通信を実現したものととらえるとわかりやすい。仕組み自体はETC同様の狭域通信システムで、仕様的には直径30mのスポットで4Mbpsの通信を実現する。また、スポット内で4〜8端末が利用できる。KDDIの実験設備では、DSRC基地局が屋外に11基設置され、このうち9基が光ファイバでネットワークとして結ばれている。また、ネットワーク対応している9基のうち、7基は50m間隔で配置し、不連続なスポット環境にしたうえで、ハンドオーバの実演と決済アプリケーションの利用を実際に実演した。
多少見えにくいが、道路の右側の電柱にDSRCの基地局が設置してある。画面では4基めから6基めの電柱がみえる。いずれも自動車進行方向の前方右前から電波が発射されている。
アンテナ部分。左側がアンテナ。実験設備のため、ローテータでアンテナを回転できるようになっているため、右側にはアンテナと同じ重さの重りを設置。アンテナから上に伸びる金属は避雷針。無線機は電柱の下部にあるボックス内に設置され、光ファイバで結ばれる。
自動車の双方向通信としてDSRCが着目されている理由は、ETCと同じ周波数帯を使っているため、ETCとDSRC端末を一体化しやすいという部分にある。とくにARIB STD T-75としてETCを含めたDSRCシステムが標準化されたことで、この仕組みはがぜん現実味を帯びてきた。今回のデモにおける車載機も、すでにETCとDSRCに対応したものになっている。この延長上には、カーナビひとつでDSRC、ETC、VICSに対応する総合情報端末の姿がみえてくる。また、DSRCのエリア外では携帯電話も使って双方向ネットワークに対応するという姿になる。
デモ時の端末はARIB STD T-75に対応したETC/DSRCの使えるもの。ETCのASK変調とDSRCのQPSK変調に対応する無線機。画面はデモ車において、ETCゲートをくぐった状態。ETCであるため、ASK変調に切り換えて決済を終了させた。
KDDIを含めた6社の研究は、スマートゲートウェイシステムとよばれる。研究開発の目的は、連続しないDSRCスポットにおいてハンドオーバを確立させるとともに、セキュリティを確保したまま通信を実現することだ。ひとことにハンドオーバといっても、自動車搭載を前提としたDSRCの場合、求められるレベルが相当に高い。時速100kmで走行している自動車がDSRCスポットを通り抜ける時間はわずかに1秒である。このわずかな時間でリンクを確立し、データを送受信するためにネットワーク内にはさまざまな工夫が加えられている。基本的な仕組みは、LDAPを使い、個別端末ごとの位置情報管理をネットワークが実現することであるが、LDAPサーバをベースにさまざまなソフトウェアが連携動作する。簡単にいってしまえば、高速レスポンスとセキュリティを確保するために、サーバがリクエストのあった自動車に戻すレスポンスはすべてエージェントが管理するというが概念になっている。処理サーバはリクエスされた処理に答え、エージェントにその結果データをとにかく渡す。エージェントはデータを渡すべき端末がスポットに入ったと同時にデータを渡すという作業に専念する。つまり配達と処理を切り分けたことで、処理サーバに負担をかけないほか、即時のレスポンスを実現した。このため、エージェントは自動車の走行スピードやこれまでの圏内だったスポット位置情報から、次に圏内になるであろうスポットを予想しそこにデータを準備させる。こうした仕組みができたかこらこそ、実用にも耐えられるものができあがったといえる。さらに、デモでは基地局をグループ化し、グループ間でデータを待機させて次々にストリーミングデータを送り出すということも実現しており、研究開発はかなり進んでいるという印象を受けた。セキュリティを確保した通信も同様な仕組みで、不要な処理を端末側にさせないほか、認証情報を持ち回るような仕組みを実現することで、セキュリティを確保しながらの通信を実現した。デモでは認証情報に基づいたポイントを使ったオンラインショッピングを実現しており、自動車内での決済をして、発行されたポイントの認証情報をSDメモリカードに移動させ、PDAを使って店舗で商品を購入するといったデモまで踏み込んだ。
車中からオンライン決済の例。今回は購入して得られたポイントを仮想マネーとしてリアルなショップで少額決済した。ポイントはSDカード経由でPDAを通してやりとしたが、実際にはメディアを問わない。現実にはすべてネットワークで完結することになるだろう。
もうひとつ、スマートゲートウェイにおいては、QoSと電波干渉という比較的基礎的な技術問題を解消した。QoSは、緊急情報を最優先して通信完了させるためのもので、進行先の工事や障害情報をほかのアプリケーションに先駆けて処理できるように独自プロトコルを用いることでQoSを実現した。また、地味ではあるが電波干渉の解決に向けた開発も進んでいる。デモで実演したものは、4方向の指向性アンテナを設置し、各アンテナに状況に応じた重みをもたせて最適な受信利得を合成するというものだ。実際、電波干渉は指向性アンテナひとつだけよりも抑制されており、干渉制御をすることで移動体の中でもビット誤りを発生せずに通信を実現した。
これまでのETCでは、電波が反射しないように進行路の周りには吸収板を設置していた。しかし、DSRCでは吸収板の設置はスケールさせることを阻害する要因になる。今回デモされたような新たなアンテナの登場が必須で、電波吸収板を設置することなく基地局を配置できることを求められていた。
電波干渉を低減させるための技術。4つの指向性アンテナから、画面左のような直接波にもっと偏りのある利得が得られる。この技術により、常に直接波を最大限とらえられ、電波干渉を低減できる。
あくまでも今回のデモは実験開発の公開ではあるが、仕組み自体はスケーラビリティがあるものとなっている。DSRCネットワークを実際に構築するには、多段LDAPや多段ルータが必要となる。当然そうしたことまで含めた形でのネットワーク設計となっており、数万台規模にいきなりスケールアップしたとしても、十分に対応できるものとKDDIは自信を持つ。DSRCももはやビジネスモデルやその上で動作するアプリケーションに焦点がシフトしてきている。そのためのアプローチをする場としても、今回の公開実験は非常に価値のあるものといえる。
これまで混沌としてきた狭域通信システムであるが、DSRCが基礎研究開発をほぼ終わらせたことで、DSRCシステム自体が新たな無線通信システムの選択肢に加わった形になった。これから先、しばらくの間はそれぞれの用途や環境に合わせて、いくつもの無線通信システムが組合わさることになる。しかし、オンラインストレージに保存したMP3楽曲をPCで聞いたりときには自動車の中で聞いたりということも現実味を帯びてくる。また、車の中からファーストフードにオーダして決済をすませ、付近のファーストフード店までカーナビに誘導してもらう。あとはドライブスルーで待ち行列なしに商品を受け取るだけといった世界も身近になってきた。通信と生活、交通の融合に向けて、DSRCの上で動作する新たなアプリケーション開発は次のキーワードになったともいえそうだ。
DSRC無線基地局からは直接光ファイバがサーバルームまで引かれている。メディアコンバータを通してサーバにつながる。スケーラビリティを考慮し、贅沢に光ファイバを使っているが、現実的には複数台の基地局で光ファイバを共有することになるだろう。
(RBB TODAY 2003年1月14日 23:10)
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