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米光一成&荻原貴明「ゲームデザイン研究所」

第2回:ゲームのリアルって何よ!?

2006年4月3日

 ゲームのリアル
 

 「リアルなゲーム」という言い方をする。
 リアルというのは「現実」だ。
 だけど、現実に近ければ、ゲームにリアリティを感じるのか、というと、それだけじゃない。

 ゲームのリアリティは、現実に近づけることじゃない。

 今回は、そういうお話。

 自ゲ一体の境地
 

 『スーパーマリオワールド』(1990年)でのマリオの操作を思い出してほしい。
 マリオは、十字キーの左右で、左右に動く。
 Aボタンでジャンプする。
 床が途切れているところがあって、走りながらジャンプして飛び越える。ジャンプするタイミングを間違えると、穴に落ちてマリオを一人、失ってしまう。
だが、ジャンプした直後に、「あっ! タイミング失敗! マリオ戻れ!」と、思わず十字キーを逆に入れて助かることがある。
 マリオがジャンプの途中、空中で進行方向を逆向きに変えるからだ*1。
 ジャンプ中に真反対に進行方向を変えるなんてことは、現実では、ありえない。
 でも、思わず十字キーを左に入れたときのプレイヤーの気持ちと、ゲーム画面中のマリオの行動が一致した時、ゲームにリアリティが生まれる。
 思わず入れたキーに、ゲームのマリオが反応してくれる気持ちよさ。
 現実と一致することが「ゲームのリアル」じゃない*2。
 ゲームのリアルは、「プレイヤーの気持ち」が「インターフェイス」を通じて「ゲームの中」と一致することだ

 だから、ゲームのリアリティは「現実」を目指さない。プレイヤーの気持ちを目指す。

 たとえば、リアルな動きをするキャラクター。
 ボタンを押すと、剣を振る。剣を振り切るまでのモーションが遅い。いや、本当は、現実的なスピードで、実際に剣を振るスピードなのである。が、プレイヤーは、遅いと感じてしまう。
 プレイヤーは、剣を振るために、ボタンを押す。
 ボタンを押すのは一瞬の動作だ。すばやく一瞬に剣を振り切ってくれるほうがリアリティを感じる場合もある。
 もちろん、それは「インタラクティブ感の一致」だけで語れる問題ではない。「インタラクティブ感の一致」と、それ以外の要素(ルールやジレンマや世界観やグラフィックスや、ゲームのすべて!)が緊密に関連して、ゲームのおもしろさを作り上げる。それらが渾然一体となって、プレイヤーの気持ちを集中させ、ゲーム世界に惹きつけなければならない。

 ゲームを始めるときに、ぼくの気持ちは、ぼくの中にある。
 (だいたい)ワクワクしている。
 ゲームをはじめる。
 操作しているうちに、夢中になってくる。
 ぼくの気持ちが、いつの間にか、ぼくの中に、ない。
 ゲームの中に、ある。
 自分と、ゲームが、一体となって、それがすべてであるような気持ちになる。「自ゲ一体の境地」だ。
 そういったとき、ぼくは、ゲームにリアリティを感じる。
 ぼくの中にある「リアル」と、ゲームが結びついた瞬間に「ゲームのリアル」が生まれる。

 だから、ゲームのリアリティを考えるときには、現実に近づける努力じゃなくて、プレイヤーの中にあるリアリティを考えることが重要だ。

 すっげー余談
 

 「虚構と現実が混乱して」とか「虚構と現実が一緒になっている」と、テレビのコメンテータが言う。あぁ、この人は、「自ゲ一体の境地」を味わったことがないんだろうか、とぼくは思う。
 ゲームじゃなくてもいい。本でも、映画でも、風景でも。そういった、自分の外のリアルと、自分の中のリアルが一緒になった瞬間を体感していない人が、紋切り型のフレーズとして(体感のない虚構として)、「虚構と現実が混乱して」なんて言うのだろう。テレビの中のおまえのほーがぺらぺらの虚構だよ!(といってテレビのスイッチを切る)。

*1:『スーパーマリオブラザーズ』(1985年)のマリオはジャンプ中に進行方向を変えることはできないが、逆向きにキーを入れるとブレーキがかかってジャンプ距離が短くなる。

*2:まぁ、そもそもマリオが自分の身長の4倍もジャンプできて気持ちいいってのも、現実を目指してないからだよね。

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