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杉山淳一:武力抗争のないRTSはEスポーツになるか?
〜経営戦略ゲーム「シド・マイヤー レイルロード!」〜
2007年5月10日
■ 今回は“我田引鉄”で失礼します!
「我田引水」ということわざがある。みんなが水不足で困っているのに、自分の田んぼにだけ水を引こうとする、わがまま勝手な人のことだ。その我田引水を洒落て「我田引鉄」という言葉もある。政治家が自分の票田に無理やり鉄道路線を開通させることだ。大物代議士の影響で作られた上越新幹線や、代議士が当選するたびにその出身地の駅を迂回させられた岩手県の大船渡線が有名だ。
そして今回、私も「我田引鉄」を公然と実行する次第である。
我田引鉄となる理由は3つ。自分のコラムに自分の最上の趣味である鉄道ネタを持ってきてしまうこと。本来はHOUKOU氏の領分であるRTSの分野を侵食してしまうこと。そして、経営ゲームの対戦にスポーツ性を見いだせることだ。
題材となるゲームは、4月27日に完全日本語版が発売された『
シド・マイヤー レイルロード!
』(SMR)。そんなわけで今回は鉄道ネタだ。筆者は我田引鉄と開き直っているのであきらめてほしい(笑)。
『
シド・マイヤー レイルロード!
』の画面。
鉄道ファンに嬉しいディテール
※クリックで拡大画面を表示
■ シド・マイヤー氏は“デスマッチ”を望んだ
シド・マイヤー氏といえば『シビライゼーション』シリーズで有名な希代のゲームデザイナーだ。Windows以前の時代からPCゲームに親しんでいる人なら、彼の代表作にもう1つ『レイルロードタイクーン』という鉄道経営シミュレーションゲームがあったことを覚えていることだろう。ゲームはリアルタイムで進行するのだが、線路を敷いて列車を走らせて運賃を稼ぎ、その資金で株を買い占め、ライバルの鉄道会社をすべて買収すれば勝利というゲームだ。鉄道という題材も当時としては稀有だったが、“対戦する経営シミュレーション”としても異色だったが、このゲームは多くのファンを獲得した。マイクロプローズ(当時の発売元)は、レイルロードタイクーンの続編として、鉄道だけではなく、道路・航空機・船舶を網羅する『トランスポートタイクーン』を発表した。そしてシド・マイヤー氏は『シビライゼーション』の開発に着手。鉄道経営ゲームから遠ざかってしまった。
しかし鉄道ゲームファンや箱庭ゲームファンには『レイルロードタイクーン』の続編を望む人も多く、その要望に応える形で「トロピコ」で有名なPOPTOP社がシド・マイヤー氏の許諾を受け『レイルロードタイクーン2』(RT2)をリリースした。初代レイルロードタイクーンから8年後のことだった。グラフィックがリアルになり、緻密な輸送戦略を再現した『レイルロードタイクーン2』は大ヒットし、時をあけずに3Dグラフィックを強化した『レイルロードタイクーン3』(RT3)が作られた。
『
シド・マイヤー レイルロード!
』では、街と街を線路で繋ぎ、列車を走らせる
※クリックで拡大画面を表示
私は鉄道ファンゲーマーとして、『レイルロードタイクーン』シリーズすべての作品をプレイした。その印象は、“安心してマッタリと遊べる箱庭ゲーム”というものだった。対戦機能はあるものの、シングルプレイで充分楽しめる。対戦したとしてもプレイ時間が長い。その傾向はRT2、RT3へ進化するとさらに顕著になった。広大なマップでシナリオをクリアするだけで楽しいし、ライバルとは競合するよりも協調したほうが楽しかった。「実社会でも同じ地域に複数の鉄道会社があるからね。リアルでいいよね」と、AIのライバルに対してはその程度の認識だ。そんな調子だからオンライン対戦をする意味も見つからなかった。私も含めて、ユーザーの大多数はマッタリ系箱庭鉄道シミュレーションゲームを求めていたし、POPTOPはそのニーズにきちんと応えてくれたのである。
しかし、シド・マイヤー氏はこの流れに思うところがあったのだろう。ふたたび鉄道経営シミュレーションゲームの開発に着手した。『シド・マイヤー レイルロード!』(SMR)は、初代『レイルロード・タイクーン』から17年ぶりの後継作だともいえる。その外観はRT3に良く似ている。しかし戦略性はかなり異なる。RT3が鉄道会社の資産価値を高め、ライバルと“スコアを競う”ゲームだとするならば、SMRはとにかく稼ぎ、膨大な資金力で敵を潰して“生き残る”というゲームになった。
つまりSMRは、デスマッチだ。
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