【インタビュー】LTEとは競合しない!今後はエッジを効かせたサービスで戦う……UQコミュニケーションズ 野坂社長 | RBB TODAY
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【インタビュー】LTEとは競合しない!今後はエッジを効かせたサービスで戦う……UQコミュニケーションズ 野坂社長

エンタープライズ 企業
UQコミュニケーションズ 代表取締役社長 野坂章雄氏
  • UQコミュニケーションズ 代表取締役社長 野坂章雄氏
 RBB TODAYが実施した「モバイルアワード 2011」において、UQコミュニケーションズがモバイル通信サービス部門において最優秀賞(スピードの部、サポートの部、料金の部でそれぞれNo.1)を獲得した。現在同社では「WiMAXエリア全力宣言」を掲げ、積極的なエリア拡充と品質向上を展開している。今回は、同社の戦略およびWiMAXを取り巻く世の中の動向について、代表取締役社長である野坂章雄氏に話を聞いた。

■実効速度だけでなく実効料金と実効エリアも拡充

――モバイル通信サービス部門において最優秀賞を獲得しました。

 今回の受賞は当社にとって非常に印象深いものになります。この1年間を振り返ると、昨年12月にNTTドコモのXiサービスが始まりました。当社も今年は「モバイル元年」だと位置づけ、3月にはユーザー数80万件という大きな目標を超え、5月頃からはNTTドコモやソフトバンクモバイルなどと、三つ巴あるいは四つ巴の戦いを繰り広げてきました。2011年10月の契約者数の純増数はソフトバンクモバイルの24.7万件、KDDIの19.6万件に次いで、当社が9.5万件と第三位に入りました。データ通信専門で、ここまでこられた。そうした激戦の末の受賞だけに、感慨もひとしおですね。

――スピードの部、サポートの部、料金の部でそれぞれNo.1に輝いています。

 スピードについては、競合他社もいろいろな数字を出してアピールされていますが“実効スピード”での速度は、モバイルブロードバンドサービスにおいて最も優れているものと自負しています。今回の受賞は、お客様にも“実効スピード”という考え方が浸透してきた結果ではないでしょうか。また、12月から上り速度についても、10Mbpsから15.4Mbpsに引き上げていますので、上りの実効速度においても約7.5Mbpsまで向上します。料金についても他社の2年縛りキャンペーンで3,880円とは違って、UQは1年契約で3,880円というのは、かなり安いのではないかと考えています。絶対的な価格の高い安いという基準もありますが、スピードを勘案した“実効価格”という考え方もあると思います。

――エリアに関してはどうでしょうか?

 当社の社内的な取組みである「アクション30」というプロジェクトにおいてエリアと品質は重要事項です。カバーエリアについては、NTTドコモやKDDIと違って、当社は政令指定都市を中心に展開していくなかで、利用可能なエリアをきめ細かく広げています。具体的には、11月21日に発表させていただいた地下鉄車内での利用などが好例です。WiMAXの電波の直進性を利用して、隣り合う駅の端に基地局を設置することで、駅と駅との間もカバーできる。後日、3Gキャリア各社も同様のことをやられると発表されていましたが、当社はこうしたきめ細かいエリア拡充を率先して進めています。また地上においても、ビルの影や商店街のアーケードなど、電波の届きにくい場所に基地局を設置するなど、きめ細かなケアを実施しています。品質についても、先日発表させていただいたように、屋内での利用環境改善策やハンドオーバー時の速度劣化対策を実施します。さらに、スマートフォンの待ち受け時のバッテリー消費量削減策なども実施予定しています。

――地下鉄については、すでに都営地下鉄と東京メトロの名前が挙がっていましたが、その他の路線にも期待が高まります。

 都営地下鉄は、すでに11月28日に大手町駅で着工しました。また東京メトロとは基本合意済みですし、他の政令指定都市の地下鉄においても話を進めており、いくつかは基本合意済みのところがあります。具体的な路線名は着工次第発表できるものと考えています。このように、エリアについては、政令指定都市を中心とした都市部において、利用できない場所を極力減らす“実効エリア”を拡充していくというのが当社のスタンスです。

■LTEや固定回線とは競合でなく共存していく

――Xiはまだスタートして1年ということで人口カバー率はWiMAXに及びません。しかし、数年後には確実に競合してきます。これについてはどのようにお考えでしょうか?

 NTTドコモは、2012年3月末時点のXiの人口カバー率を25%と発表しています。当社のWiMAXは同じ3月末時点で人口カバー率80%に達するものと見込んでいます。この数字に人口の1億2700万人をかけるとおよそ1億人。そこで現在当社では「1億人突破計画」を掲げて、お客様の獲得に励んでいます。とはいえ、中長期的に見れば人口カバー率も競合してくるでしょう。当社では、Xiに対して2年程度のアドバンテージがあるのではないかと見込んでおり、その頃には、すでにWiMAX2への移行が実現、スピード面で引き離せるのではないかと考えています。Xiのような規格(LTE)でWiMAX2と同等の実効スピードを出すには、LTEの次世代規格に対応する必要があります。したがって、その時点でもWiMAXの方が一歩先んじることができるでしょう。

――2012年末にはKDDIもLTEのサービス提供を予定しています。御社の立場はどのようになりますか。

 これは以前から申し上げていますが、スマートフォンの普及により、すでにWiMAXかLTEかという論議ではなくなっています。増え続けるデータトラフィックを処理するには、3G以外のあらゆる手段を使っていかざるを得ません。したがって、LTEとWiMAXは共存していく形になるでしょう。ちょうどKDDIが提供している“+WiMAX”という端末が好例だと思います。将来的には“+WiMAX+LTE”というものが登場してもいいのかな、と思います。KDDIから発表しているハイブリッドモバイルルーター「DATA08 Wi-Fi WALKER」も同様ですね。3Gのみに対応したシングルルータと、3G+WiMAX対応のハイブリッドは互いに補完関係にあり、バッテリーの持続時間や本体の大きさ、カバーエリアなど、お客様の多様なニーズに応える選択肢が増えることになります。ただし、WiMAXの付加価値を高めるような、エッジを効かせたサービスを展開していかなければならないのは事実です。

――WiMAX対応のホームルーター「URoad-Home」が発売され、「ファミ得パック」というサービスメニューが加わりました。これにより、自宅に固定回線を引かなくても、WiMAXだけで自宅も外出先も通信環境が整います。

 これは固定回線と直接競合するのではなく、WiMAX対応のモバイルルーターを利用されているお客様に、自宅と外出先でシームレスな環境をご提供しようというものです。ところがモバイルルーターでは、建物によっては屋内で電波が入りづらいケースがある。モバイルルーターと違い、据置型なので筐体も大きくでき、アンテナ適切に配置できるほか、ACによる給電が可能なため安定した通信環境が構築できます。WiMAXはSIMカードを使わないSIMレスな通信サービスであるため、ホームルーターとモバイルルーターといった2台の機器を利用する場合にも、いちいちSIMを差し替える必要がないのもメリットだと思います。しかし、同時に2台の機器を利用するには、2回線契約が必要になり、外出中に家族が自宅でもホームルーターを利用するとなると割高になる。それを解決するのが2回線目を2,480円で契約できる「ファミ得パック」です。「ファミ得パック」については、1日のサービス提供開始と同時に、直販で80件程度のお申し込みがありました。初日が好調かどうかは1つの指針になりますが、そういう意味ではかなり好調と申し上げてよいでしょう。実際に、量販店の店頭でも好調だと聞いています。

■アジア戦略とWiMAX2のその後の動き

――7月に発表されたアジア戦略については、その後どのように展開されていますか?

 7月の時点では、いかにWiMAX連合を広げるかということでしたが、各国の状況も動いており、アライアンスの可能性がかなり高まったと感じています。まず、マレーシアですが、YTLとの提携発表後に、私もマレーシアに行ってきました。彼らは、クアラルンプールの中心地にショップなども展開し、クラウドサービスも展開しており、「YES」と呼ばれる上位サービスではEメールなども提供しています。当社とも、いろいろな面で効果的な連携ができるのではないかと期待しています。韓国では、KT、SKテレコム(SK Telecom)、LGデイコム(LG Dacom)という3つのWiMAX事業者に加え、もう2社が免許申請中だと聞き及んでいましたが、どうやら12月中にも認可されそうです。近々、第四のWiMAX事業者が誕生することになるでしょう。台湾ではビー・タイム(威達雲端電訊)とVMAXの2社が、いろいろと動いていますね。その他の地域でも、インドネシアにおいてWiMAX事業者が登場しています。

――インドはいかがでしょう。LTEに傾いているとも聞きますが。

 みなさん、そうおっしゃいますね(笑)。しかし、私はそうは考えません。インドのBSNLとMTNLといった大手2社はすでにWiMAXのサービスを展開しています。従来からあるキャリアはWiMAXを展開しており、新規参入企業がLTEを展開しようとしているため、そのように映るのではないでしょうか。おそらく、中国がWiMAXを採用していないため「アジアはLTE」というイメージがあるのかもしれませんね。

――アジア戦略という面で、そのほかに動きはありますでしょうか?

 東芝のUltrabook「R631」や、シャープのタブレット型端末「GALAPAGOS」のようなデバイスを、もっとアジア地域に充実させていきたいですね。バッテリーの持続時間とモバイルを高い次元で両立させた端末にWiMAXの通信機能を搭載させているこれらの製品は、WiMAXの普及にはずみをつけると思います。メーカーさんにとっても、メイドインジャパンのデバイスを、アジアに広めていく絶好のチャンスだと思います。

――WiMAX2の動きは、その後いかがでしょうか。

 課題は2つあり、1つは基地局やデバイス、もう1つは電波の割当てについてです。基地局やデバイスの準備については順調に進んでいます。すでにベンダーの選定にも入っていますが、WiMAX2の計画を早期に実現できるベンダーにお任せしたいと考えています。チップは、7月の時点でもご案内した通り、GCTが開発中ですが、こちらも順調に進んでいます。電波の割当てについては、順調というわけではありません。それというのも、先日の政策仕分けにおいて、電波の割り当てをオークションにすべきだという意見が出されました。しかし、オークションとなると、その準備だけで1年以上かかってしまうでしょう。しかし、既存のデータ通信だけでは、早晩帯域が逼迫することは確実です。当社としても、電波割当を一刻も早く実現して欲しいと、常々窮状を訴えており、ここにきて大きな方針転換は厳しいのが実情です。幸いにも、総務省は、そうした現状をよく理解してくださっているので、あまり心配はしていないのですが、政治の世界がどのように絡んでくるのか、慎重に見守りたいですね。
《RBB TODAY》
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