【ニールセン博士のAlertbox】iPadのユーザビリティ: この1年(前編) | RBB TODAY
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【ニールセン博士のAlertbox】iPadのユーザビリティ: この1年(前編)

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USA Todayのセクションのナビゲーション。左: 1年前及び今月初旬にテストしたもの。右: Sectionsボタンが明示された新しいデザイン。
  • USA Todayのセクションのナビゲーション。左: 1年前及び今月初旬にテストしたもの。右: Sectionsボタンが明示された新しいデザイン。
要約:
iPadアプリは大幅に改善された。しかし、スワイプの曖昧さやナビゲーションの過負荷のような、新たなユーザビリティ上の問題が浮かび上がってきた。


 iPadアプリについての最初のユーザビリティ調査の後、1年で、iPadのユーザーインタフェースから明らかに奇抜さが減ってきているのは良いことである。昨年の我々の提案のいくつかがうまく取り入れられているのはさらにすばらしい。その中で、アプリに関して採用されたものは以下の通りである:

・Back(:戻る)ボタン
・検索の利用の拡大
・ホームページ
・トップページのヘッドラインにタッチすることによる、記事へのダイレクトアクセス

 それでも、今年のテスト中にも、ユーザーが誤って何かにタッチしてしまったり、出発地点への戻り方を見つけられなかったりという事例が多く見られたし、目次にアクセスするのに複数のステップが必要な雑誌アプリも見受けられた。

 昨年の一番酷かったデザインの1つはUSA Todayのセクションのナビゲーションだったが、それはそのロゴによってこういう効果がもたらされる、という知覚されたアフォーダンスがまったく欠けているにもかかわらず、ユーザーにその新聞のロゴにタッチすることを要求するものだった。今月初めに新しく実施したテストの間も、去年のテスト協力者と同じ問題で苦労しているユーザーが何人かいた。リクルートしたのは、iPadの経験をより多く持つ人々だったのだが。

 幸いにも、我々のテストセッションの数日後、USA Todayは新バージョンのアプリを公開した。そこではナビゲーションは幾分改善されていた:

 テストユーザーのうちの1人はこのアプリの日常的な利用者だった。彼は最終的には自分自身でSection のナビゲーションを見つけ出したそうだが、テストセッション中、いかにそれが見つけにくかったかということについて、愚痴をこぼしていた。ユーザーがインタラクションデザインのウィジェットの詳細を覚えていることはほとんど無い。それがユーザビリティについては、ユーザーに尋ねるのではなく、彼らを観察するほうが良いことの主な理由の1つである。このユーザーが数ヶ月後も自分が苦労したことを思い出せるという事実は、以前のナビゲーションデザインにいかにひどく悩まされていたかの証である。我々がそれについて最初に報告してから、このユーザビリティ上の欠陥を変更するのに丸1年もかかっているのにも驚かされるが。

■ユーザー調査

 通常、これほどすぐに新しく調査をすることには意味がない。ユーザビリティガイドラインの変化は非常にゆっくりとしたものだからである。その基になっているのは人間の行動であって、技術ではないからだ。しかしながら、今回の場合は、iPadの発売から1年後の今、新たに調査を実施することは理にかなっている。

 我々の最初の調査では、iPadの使用経験がないユーザーでテストせざるをえなかった。全くの未経験というのは、タブレットの典型的ユーザビリティとは明らかに違う。現在では、ウェブサイトやアプリが初めてだったユーザーですら、iPadの前にいろいろなウェブサイトを訪問することになるし、初めて新しいアプリを開く前に、多くのアプリを利用することになるからである。

 新しい調査のために我々がリクルートしたのは、自分のiPadの使用経験が少なくとも2ヶ月間あるユーザーだった。通常、我々は少なくとも1年間の経験がある人達をリクルートする。しかしながら、iPadの発売は我々の調査の1年少し前にすぎないので、丸1年の経験を持つ人というのは皆、かなり早い時期のアーリーアダプターということになる。したがって、彼らは一般的ユーザーを代表しているわけでは全くない。

 いずれにしろ、iPadの2ヶ月間の使用は、そのユーザーインタフェースの約束事を学び、タッチスクリーンアプリの利用時間をかなり積み上げるには間違いなく十分な時間である。

 2つの調査の違いの2つめは、最初の調査でテストしたのがiPad自身の発売と同じ時期に出荷された新発売のアプリケーションだったことである。したがって、そうしたアプリは、ユーザーからのフィードバックを得ることができないというAppleの強制的な秘密主義の元、隔絶された状態でのチームワークによって開発されていた。我々の最初のレポートでは、我々が証明した悪いデザインの多くが、デザイナーの質の悪さによるものではなく、非ユーザー中心型のデザインプロジェクトの結果として、避けられないものだった。

 逆に、新しい調査でテストされたアプリやサイトは、我々の最初のユーザビリティレポートと、彼ら自身がこの1年で集めたユーザーフィードバック全て、の両方からの恩恵を受けたチームによってデザインされていた。

 新しい調査では、26件のiPadアプリと、 6個のウェブサイトを体系的にテストした。また、テスト協力者が自分のiPadにインストールしてあった、それ以外のアプリについても多数テストした。しかし、こちらのテストは1件のアプリにつき1人のユーザーによって行われたものが多く、それほど体系的なものではなかった。

 合計16人のiPadユーザーが新しい調査に参加した。男女比は半々。年齢については14人のユーザーが21歳から50歳の間にかなり平均的に分布していた。さらに、50歳より上のユーザーも2人いた。職業はあらゆる領域にわたっており、パーソナルシェフから、不動産業者、人事部門担当の副社長までいた。

 iPadのユーザビリティについての我々の知見は、様々なクライアントの調査からの発見や、昨年、実施した、初回の調査での多くの要素によってももたらされており、そうした関係性は今も続いている。

※この記事はユーザビリティ研究者ヤコブ・ニールセン博士が運営するサイトuseit.comで連載中のコラム『Alertbox』の転載・翻訳記事です。
株式会社イードが運営する「U-site」では、博士からの正式な許可を得て同コラムの全編を日本語訳し公開しています。
《RBB TODAY》
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