大学・大学院で仏教文献学の研究をしていた頃、寝ても覚めてもひたすら写経をしていた。といっても、般若心経などを筆と墨で一文字一文字書き写していく、古典的な写経ではない。PCに向かってキーボードをタイピングしていく、デジタルな写経である。
仏教が誕生した約二千五百年前というのは、ハードディスクはおろか、紙などの記憶媒体もない時代である。初期の仏教は、ひたすら人間の脳の記憶によって伝承されてきた。