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回収なくして、売上なし

ビジネス 経営
北岡修一(東京メトロポリタン税理士法人 統括代表)
  • 北岡修一(東京メトロポリタン税理士法人 統括代表)
「回収なくして、売上なし」と言われるように、最終的に現金を回収してはじめて本当の売上と言える。営業マンは売っただけでだめで、回収まで責任を持ってこそ本物である。

 ただ、そうはわかっていても、時には回収できないこともある。先方の業績が急激に悪化してしまったり、場合によっては悪意があってもなくてもクレーム等で支払ってくれない、減額されることもある。

 回収で苦しむ顧問先もたくさん見てきたが、まったく貸倒れを起こさない会社もあった。その会社が、なぜ貸倒れを起こさないのか、是非、紹介してみたい。

 その会社は、ファッション業界専門の人材派遣を業としている。ブティックなどへ販売員などを人材派遣している会社だ。設立6~7年の会社だが、今までに一度も売掛金の貸し倒れがない。ファッション業界なので、景気や流行の波があったり、派遣先には小さいお店などもあったりで、決して安定した優良企業が相手ではないのに、である。

 なぜ、貸倒れ、回収不能が1件もないのか。それには秘訣がある。

 まず、当初に契約をしっかり結ぶ。当然、そこには派遣料の支払日が記載されている。毎月何日締め、何日払いというように書かれている。これは、どんな会社でも当然、記載される内容である。

 しかし、その契約が常に守られるかというと、なかには守れない得意先も出てくる。経理がルーズであったり、月によっては資金繰りが厳しかったり、理由はいろいろあるだろう。

 多くの会社の場合は、多少遅れても、「何らかの理由があるのだろう」と待ってくれる。だが、その会社は支払日に入金がないと、即その日のうちに営業担当者が得意先に連絡を入れることになっている。そして、事情は聞くがすぐに払っていただくように依頼するのだ。

 最初の電話は、事務のミスということもあるだろうから柔らかいトーンでかけるが、数日中に支払いがない場合は再度連絡し、今度は多少きついトーンで、いつ支払うかを約束してもらう。

 その支払日に振込みがあればいいが、なければ訪問してでも集金をしてくる。集金するまでは担当者は帰って来られないという厳しさだ。そこまでやって、売掛金を回収している。回収については一切妥協しない姿勢を貫いているからこそ、貸し倒れがゼロなのである。

 支払うほうの立場に立てば、うるさく厳しく言ってくるところには、優先して支払ってしまうものだ。資金繰りが苦しくて、全部を支払えない場合は、どうしてもそうなる。優先して支払ってもらえる相手先になっておくことが、貸し倒れを起こさないためにはとても重要なことなのだ。

 以上であれば、厳しく取り立てろ、ということかと思われるだろうが、実はそれだけでない。むしろ、それ以外のことが重要なのである。

 この会社は、得意先から入金していただくと、そのすべてに営業担当者がお礼の電話をかけるのだ。毎月毎月、「ありがとうございます。」と、お礼の電話をするのだ。すべてに。だからこそ、たまに遅れたときに催促の電話があっても、快く応じてすぐに払ってくれる。

 これはもう、「さすが!」としか言いようがない。メリハリがはっきりしていて、徹底しているところがすごい。このような会社の姿勢を、得意先の方も十分理解しているのだろう。

 これであれば、貸し倒れがゼロというのも頷ける。付け足しだが、入金のお礼の電話をしたときに、追加オーダーをいただくことが何度もあるそうだ。

 この会社は、何かとても難しいことをしているわけでも、誰もやっていないような特別なことをしているわけでもない。入金があってもなくても、その日のうちに電話一本を忘れずに入れることを徹底しているだけだ。

 真似することはやさしいように思えるかも知れないが、これを徹底して1件の例外もなく行うことは、実はそう簡単ではないはずだ。

 貸し倒れを起こしたくなければ、是非、あなたの会社でも実践してみてほしい。果たして徹底できるかどうか・・・。


●北岡修一(きたおかしゅういち)
東京メトロポリタン税理士法人 統括代表。25歳で独立以来、税務会計業務を基本としつつも、経営診断、人事制度の構築支援、システム導入支援などコンサルティング業務にも携わってきた。現在は「会計理念経営」を掲げ、「会計を良くすると、会社が良くなる!」をモットーに、誠心誠意、中小企業を支援している。主な著作に『社長の「闘う財務」ノート ~ 社長の数字力が会社を鍛える』(プレジデント社)がある。
《北岡修一》
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