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【コラム】パンドラの箱を開けたドコモ
2007年7月18日、NTTドコモはワイヤレスジャパンの会場で、「DoCoMo 2.0」という新しいキャッチフレーズを発表した。その後、HTC端末の販売、3G回線のMVNOへの開放、iPhoneキャリアへの意欲を見せるなど、派手さはないが着実に変化をしつつあるドコモ。
(いまのところの)極めつけは、Googleとの提携によるiモードの開放だろう。ただし、この提携は1月3日現在、ドコモもGoogleも公式に発表したものではないが、事実であれば、通信回線のインフラから音声以外のサービスまでも公式メニューという形で囲い込むビジネススキームの転換ということになる。日本の携帯電話市場は、キャリアが端末やサービスの商品戦略もコントロールすることで、インフラや端末の品質を維持していた側面があるが、ほぼ国内市場の飽和が見えてきたことで、現状のビジネスモデルが崩れてきたため、戦略の転換を余技なくされたという見方も可能だ。
国内市場については、高齢者、企業ユーザー、小中学生といった市場の開拓が十分でないという意見もあるかもしれないが、「ショルダーフォン」サービス開始から計算すれば20年以上経過している携帯電話は、とくに施策を打たなくても高齢者の所有比率は高まってきており、今後は自然に年齢層がシフトしていく方向だ。企業ユーザーやセカンド端末市場も、すでに会社支給の端末と個人所有の端末を持っているビジネスマンが珍しくない状況で新規の開拓はそれほど多くないかもしれない。小中学生層はしばらく有望な市場だが、少子化という根本的な問題があるかぎり限界は近い可能性がある。かといって海外市場は、上記のような日本特有のシステムのおかげで国際競争力は低いといわざるを得ない。世界の端末シェアでは、松下やNECはノキアやサムスンにかなわないのが現実だ。
モバイル市場が活発であり各社が期待を寄せているのは、実は携帯キャリアよりもウェブ以外からの流入が期待できるインターネット側の企業なのかもしれない。とくに、ウェブ側から見るとケータイ市場が魅力なのは、そのユーザー数だけでなく、課金ビジネスが成功しているという点だ。また、ユーザーはPCは買い換えなくてもケータイはよく買い換えてくれる。
それでも、ドコモがiPhone販売に意欲を見せたりGoogleとの提携を考えざるを得ないのは、海外市場でも競争力をつけるため、国内でもMNPなどでシェアの維持も以前より厳しくなっている状況(一般論としてシェア1位の企業は顧客流出の確率はシェアの低い、つまり顧客の少ない企業より高いはず)などが考えられる。環境の変化によって、これまでのクローズ戦略からオープンな戦略に舵取りをしたとしても不思議はない。
これは、企業としては正しい選択だろうし、合理的な判断だといえるが、それでいて同時に注意しなければならないのは、この戦略転換が、ドコモにとって「パンドラの箱」を開けたことになるかもしれないことだ。どういうことかというと、まず、オープンな戦略は今後の生き残りに必須だとしても、いままでのキャリア主導の「帝国の崩壊」を意味するのではないか。たとえば、公式メニュー以外にGoogle経由でウェブのサービスが自由に使えるようになると、これまでのように「公式」という付加価値や特権が消失するかもしれない。プロバイダも制約が多くコストもかかる公式サイトのうま味を感じにくくなる。結果として、ドコモのプロバイダに対する影響力が低くなるリスクを背負うことになる。
また、iPhoneの販売ライセンスをドコモが契約するとして、果たしてアップルは日本特有の販売契約で合意するだろうか? iPod touch発売時にiPhone端末の定価を200ドルも簡単に下げてしまうメーカーと、商品開発や発売時期まで制御している日本のメーカーとのバランスはとれるのだろうかといらぬ心配までしてしまう。もっとも、それ以前に2007年秋に発表された905シリーズで、3G、3.5Gの主だった機能がすべての機種に搭載されるなど、端末のハードウェア的な機能がとりあえず出尽くしてしまった感がある。だとするとドコモが端末の開発まで制御することが、今後はただの「リスク」でしかなくなってくる可能性がある。むしろ、メーカーの裁量にまかせて機能から価格帯までバリエーションを増やしていったほうが得策かもしれない。が、これもキャリアの影響力を下げる方向に働くだろう。
もうひとつ、キャリアがオープンな戦略をとるときに考えなければならないのはトラフィックの問題だ。ドコモがMVNOに安易に回線を開放しなかった理由のひとつに、制御できないトラフィックによる既存ユーザーへのサービス品質の影響というのがある。パケットの定額制と端末の高性能化は、インターネットへの接続によりトラフィックのバーストや輻輳のリスク(呼着率の低下、回線実効速度の低下)を高めるだろう。インフラ整備とサービス制限による調整とバランスは非常に難しい問題だ。
2008年は、ドコモに限らず(日本の)ケータイ市場全体のパラダイムシフトが始まる年になるだろう。KDDIはIP化による音声、ネット、サービスの集約とWiMAXを含む新サービスの開拓を進めるだろう。ソフトバンクは、業界3位のシェアであるがゆえ市場拡大の「伸びしろ」は最大である。拡大路線が経営面でも有効に働くフェーズでもあり、ディズニー携帯なども控えている。各社の動きに注目だ。
(中尾真二@RBB 2008年1月4日 12:00)
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