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【ニュース解説】通信と放送の融合が意味するもの

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通信・放送法制の抜本的再編
  • 通信・放送法制の抜本的再編
 6日、総務省は「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」の報告書を発表した。この報告書は、放送や通信をネットワークや物理的メディアによって区別するのではなく、その情報が社会に与える影響力に視点をおくことで、ウェブ上の情報にもテレビ放送のような一定の法的整備の必要性や課題をまとめたものだ。

 すでにいくつかの媒体が報じているが、単純にはインターネット上に発信される情報に規制をかけるというものだ。この部分の報道だけ読むと、単純にインターネットの違法コンテンツや違法行為が社会問題化しているので、それを規制する法律を作ろうという研究会が報告書を作ったという理解が先行しがちだが、そもそもこの研究会が発足し、審議を重ねていた発端は、インターネットやサービス技術の発達により、放送と通信の境界があいまいになり、電気通信事業法や放送法といったメディア形態や業者による縦割り法制では、現実のサービスとの乖離が大きくなりつつある現状を、どのように整理し、技術革新や経済発展を阻害しないしくみを作ろうというものだ。

 報告書では、現状にそぐわない縦割りの通信関係の法律と放送関係の法律を情報通信法として再編、一本化することを提言している。情報通信法では、(メディアや伝送技術など)手段を問わず、情報の流通を「コンテンツ」「プラットフォーム」「伝送インフラ」とレイヤによって分類し、そのレイヤごとに法整備をするとしている。この目的は、情報を規制することではなく、ボトルネックとなる特定事業者の寡占を排したり、サービス内容によってメディアやネットワークを横断的に活用できるようにすることだ。

 しかし、同時に、社会インフラとしてサービスの偏りや不公平、ディジタルディバイドなどの問題が起きないような事業者へのサービス保障義務や、テレビがそうであるように、放送内容が社会に与える影響に応じた規制(報告書では規律と表現している)も不可欠である。一般のテレビ放送では、本や雑誌で許容される性的表現が規制されるのと同様に、未成年への影響や公共の福祉をないがしろにできないことはあまり異論はないだろう。放送と通信の融合を叫ぶなら、同様な社会的責任も発生するはずだ。一般のブロガーやウェブ上の情報発信者が、メディアとしての力を自認するなら、その責任も負う覚悟が必要な段階にきたということだ。

 ただ、そうはいっても、すべてをひとまとめに規制するのは明らかに行きすぎだ。報告書でも、表現の自由は守らねばならないとして、ネットワーク上のコンテンツを「特別メディア」「一般メディア」「オープンメディア」と3段階に分類している。特別メディアは、現行の地上波テレビと同等なサービスによるコンテンツとして、相応の規律を求めている。一般メディアは、現行の放送規制を緩和したものが適当としている。オープンメディアは、現状のインターネット上の規律(プロバイダ責任法やフィルタリングサービスなど)を踏襲しつつ、違法情報を行政期間が関与しない形で排除、対応できるしくみが必要としている。

 報告書は、表現の自由と技術革新、経済発展のどれも阻害しないように求めているが、2010年の法案提出に向けて、政府、総務省の判断が注目される。インターネットにおける社会問題の数々に対応しないわけにはいかないが、既得権保護や規制や罰則ありきの法案になると、経済発展や国際競争力の点で致命的なマイナスとなる。ひいては中国では行われているような検閲に根拠を与えてしまう可能性さえある。放送と通信の融合とは、単に技術やビジネスの話ではないということだ。そして、ウェブがだれでも情報発信ができる市民のメディアというのであれば、その責任は一般ユーザーにもなんらかの影響を与えるということだ。
《中尾真二》
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