接続サービス事業から中小法人向け“Web Solutions Provider”へ──フュージョン・ネットワークサービス | RBB TODAY
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接続サービス事業から中小法人向け“Web Solutions Provider”へ──フュージョン・ネットワークサービス

エンタープライズ その他
フュージョン・ネットワークサービス株式会社 代表取締役社長 鎌田武志氏
  • フュージョン・ネットワークサービス株式会社 代表取締役社長 鎌田武志氏
  • フュージョン・ネットワークサービス株式会社 代表取締役社長 鎌田武志氏
  • 外国人ファミリを対象にした日本初のSNS「Piqniq(ピクニック)」
  • 在日中国人向けのSNS「成就網(じょうじゅもう)」
  • Webデスクトップ「StartForce(スタートフォース)」
 総務省の「平成19年版 情報通信白書」によると、2006年度末の国内ISP数は9,983社。ブロードバンドの普及に伴い、接続サービス事業からの脱却を図るべく新たな市場への参入を目指すISPも多い。そうした流れのなか、1994年以来13年にわたって接続サービスを提供してきている「FUSION GOL(フュージョン ジーオーエル)」のフュージョン・ネットワークサービス株式会社 代表取締役社長 鎌田武志 氏に、同社のISP事業と今後の展開についてお話をうかがった。

──フュージョン・ネットワークサービスおよび「FUSION GOL」サービスの成り立ちについてご説明ください。

フュージョン・ネットワークサービスは、フュージョン・コミュニケーションズが手がける中継系IP電話サービスのコストセンター部隊として、2001年に設立されました。その一方、当社の現在の主力事業となっているISP業務「FUSION GOL」は、インターネットの黎明期であった1994年、カナダ人ロジャー・ボワベール氏が設立した「グローバル・オンライン・ジャパン(GOL)」が母体となっています。

このGOLは紆余曲折を経ていまして、1999年、米国のエクソダス・コミュニケーションズ社が、データセンター事業での日本市場参入の足がかりとしてGOLを吸収しました。その後、エクソダス社が米国で破産法の適用を申請し、英国のケーブル・アンド・ワイヤレス社が日本法人も含めたエクソダス社を買収しました。ところが法人に特化したサービス展開を目指していたケーブル・アンド・ワイヤレス社は、GOLが当時在日外国人を主要顧客していたという方向性の違いから、GOL事業売却の検討に入りました。

ちょうどその頃フュージョン・コミュニケーションズは、ブロードバンドを足回りとしたIP電話の必要性を強く感じ、「050」のIP電話サービスをスタートさせようとしていました。そこで子会社のフュージョン・ネットワークサービスが2003年にGOL事業を譲り受け、GOLを「FUSION GOL」と改称、以降は親会社の“IP電話サービスの足回りとしてのブロードバンド回線”という位置付けで、FUSION GOLは接続サービスを中心に展開してきました。

──他社から安価な接続サービスが次々に登場していますが、そうしたサービスとFUSION GOLを差別化するものは何ですか?

お客様は利用用途に合ったISPを選択されていると思います。我々の特長は、現在ターゲットとしている中小法人のお客様に適したWebホスティング、CMS、SEO、ビジネスブログやホームページの制作といったサービスメニューをご用意し、接続サービスも含めたワンストップサービスを提供できることです。

そしてもう1つの特長は、当社の社員のほとんどがバイリンガルであることです。1994年以来、顧客サポートもバイリンガルでご提供していますし、お客様の要望によっては多言語のWebサイト構築にも対応できます。こうしたサービスに価値を感じてくださるお客様に向けて、我々の特長を生かしたサービスを提供していくことに注力しています。

──ISPが接続サービス事業からの脱却を図ろうとする流れのなか、FUSION GOLもビジネスの転換を考えていますか?

NTTが2010年までに3,000万世帯へ光ファイバをひくことを目指していることに乗じて、ISP事業の伸びしろはまだあると思います。しかし普及後に備えて、接続サービスからより高位レイヤへビジネスをシフトしていく必要があると考えています。

ブロードバンドがライフラインになったとして、では“水道”に水を通したら終わりかというとそうではありません。規模は小さいながらも“ホース”というビジネスが生まれますし、その先には“シャワーノズル”のビジネスが生まれる、というように、インフラの上で大きく発展する高位レイヤのビジネスがあると我々は認識しています。ですから現在は、当社の軸足をそちらに傾けつつあります。

──FUSION GOLの新たなビジネスとはどのようなものですか?

当社の接続サービスに変わる新たなビジネスの方向性については、去年、社内ワークショップなどを通じて社員全員で検討を重ねました。そのなかで確立したスローガンが“Web Solutions Provider(WSP)”です。この言葉には、最適なウェブビジネスを支援する会社へと進化したいという我々の思いが込められています。

先ほど言及したホスティングサービスも、Webをソリューションするという、我々の主軸となるビジネスに成長しつつありますし、さらに次のサービスとして、我々は中小法人向けのSNS構築、Webデスクトップの提供を目指しています。今年から来年にかけては、こうしたプロダクトを育てる時期と考え、ノウハウの蓄積に取り組んでいるところです。

──中小法人向けのSNS構築に向けた具体的な取り組みについて教えてください。

2つありまして、まず1つが英語を母国語とする外国人ファミリーを対象にした日本初のSNS「Piqniq(ピクニック)」です。昨年2006年10月から開始しました。日本で長く生活する外国人が困るのは、子育てや学校、病院などの情報をどこで入手すればよいかわからないということです。Piqniqでは、そうした情報をリスト化して提供し、またユーザー自身が情報を追加、コメントできる仕組みを持たせてあります。

もう1つが、今年3月から開始した在日中国人向けのSNS「成就網(じょうじゅもう)」です。メール、日記、掲示板、コミュニティの機能を備えた本格的なSNSで、言語も簡体中国語、繁体中国語、日本語に対応しています。

──ビジネス向けSNS構築を目指して、コンシューマ向けSNSを運用している狙いはどこにありますか?

Piqniqも成就網も、現時点では収益を生むことが目的ではありません。現在はほとんど広告を載せていませんし、会員も無料で利用できます。我々がこれらのSNSでやりたいことは、SNSにおけるものの考え方や運用方法といった“ノウハウを積む”ことです。「B-to-C」のサービスを通して「B-to-B-to-C」のビジネスモデルを開拓したいのです。

2つのSNSともニッチなマーケットですが、バイリンガルという我々の強みを生かし、また各言語圏の方々の特性をしっかり掴んでいく場としても活用できると考えています。

──Webデスクトップ「StartForce(スタートフォース)」提供の経緯と今後の展開について教えてください。

StartForceは、米国のStartForce社がAjaxベースで開発したWeb2.0の新しいソリューションです。我々は同社との業務提携により、昨年2006年5月から無料公開しています。文書や表計算ファイルの編集、画像ビューア、メッセンジャー、ファイル共有、さらにはストレージなどの機能を備えています。

StartForce社のCEO、チャン・ジン・コウ氏は、「日本はブロードバンド環境が優れている国であり、国民はブロードバンドサービスに辛口だ。Webデスクトップのプロダクトをよりよいものにするためには、まず日本市場で勝負したい」と考え、米国ではなく日本でのStartFroce提供を選択しました。

将来的には、法人向けにストレージ機能を生かしたシンクライアント利用や、アプリケーション開発によるグループウェアとして活用できるプロダクトに成長させたいですね。従来のアプリケーションは、5人が使う場合は5つ購入する必要がありますが、StartFroceの場合は、同時接続数や使用期間で課金するモデルも可能です。ここ1年から1年半、遅くとも2年以内にはそうしたモデルを確立したいと考えています。

──Webデスクトップも大手の参入で競合が激化しつつありますが、StartForceはどのような差別化を図っていくのですか?

我々は50人に満たない小さな会社ですから、大手と対等に勝負するのではなく、Webデスクトップの分野でもニッチでリッチなところを目指したいと思っています。競合がたくさん出てくるということは、それだけ市場が活性するということですので、我々としては大手さんの参入は歓迎しています。

──フュージョン・ネットワークサービスはSaaS展開を目指していますか?

我々は、通常のSaaSとは違う方向へ向かうべきなのでは、と考えています。アプリケーションやサービスが必ずしもインターネット上にある必要はなくて、我々がキーポイントと思っているのは、デスクトップのスタート画面になることです。我々がターゲットとする中小法人のお客様のケースで考えれば、例えばイントラネットサーバにインストールされるアプリケーションとしてよいものを作り、社員の方が毎日最初に見る画面になることを目指せばいい。ですからSaaSにこだわる必要はなく、ガジェットだろうがウィジェットだろうが、お客様の用途に沿ったものでスタート画面になることが重要と考えています。

──回線接続からホスティング、SNS・ブログ、Webデスクトップと、さまざまなサービスのつながりが、FUSION GOLの今後の強みとなりそうですね。

サービスのつながりは大事にしたいと考えています。実は、親会社がSkypeとアライアンスを組んでいることもあり、Skypeを我々のソリューションの一部にうまく組み込みたいと考えています。例えばWebホスティングの中のSNSの1画面に組み込むなど、他のコミュニケーションのツールと1つの画面にまとめることができれば、先ほどお話したスタート画面になれるかもしれません。

もう1つ、我々は現在、法人向けにカスタマイズしたメールサービスの開発を進めています。それがどのサービスとつながるものになるかは現時点ではお話できませんが、今年度内には発表できる予定です。

我々は、接続サービス業者から、今まさにWeb Solutions Providerとしての道を切り開こうとしています。今後は先ほどのStartForceに代表されるような、我々のサービスが窓口となって展開できるアプリケーションとの提携も含め、中小法人のお客様に特化したWebのソリューションを提供できる企業へ進化してきます。
《RBB TODAY》
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