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★ Slash Gamesは、2007年6月1日より「インサイド」になりました
Shoot it! - #030 バーチャルスポーツの時代が来る?
5月17日
 アジア室内競技大会はEスポーツの種目として、自動車レース、サッカー、バスケットボールゲームを選んだ。何度も書いたことだが、これはEスポーツ文化にとって大きな転機だと言える。Eスポーツ文化の発祥となった射撃系ゲーム、格闘ゲーム、戦略RTSなどの戦闘系ゲームではなく、現存するスポーツのコンピュータ版がEスポーツとして広まる可能性が高まってきたからだ。この現存するスポーツのコンピュータ版を私は“バーチャルスポーツ”と呼んでいる。アジア室内競技大会の種目はバーチャルスポーツである。オリンピック委員会は暴力的な種目を協議とは認めない方針だからである。

 バーチャルスポーツは実際のスポーツ競技をコンピュータで表現したゲームだから解りやすく、世界市場の浸透もしやすいため、ゲームメーカーがタイトルごとに独自に国内大会や世界大会を開催した例もある。しかし、なぜかそこにはEスポーツとしての文化が育たなかった。メーカーが主催するファン感謝イベント、新作発売イベントという形式のため、メーカーとユーザーの親和性は高まっても、プレイヤー同士の交流へと発展していなかったように思う。Eスポーツ文化はプレイヤーの盛り上がりが生み出しているのに、それが発生しなかったとはもったいない。

 コミュニティの盛り上がりは戦闘系ゲームほどではないにしても、バーチャルスポーツは世界のEスポーツ史にきちんと刻まれている。韓国発祥のワールト・サイバー・ゲームズ(WCG)は2001年からエレクトロニックアーツのサッカーゲーム“FIFA”シリーズを採用している。ステージの上では1対1の戦いだが、画面上では11人同士で戦っているところは、チーム戦なのか個人戦なのかややこしいが、世界一のタイトルを賭けた真剣勝負だ。

 プレイヤーが真剣というのは当然として、FIFAの試合は観客も真剣だ。なにしろ本物のサッカースタジアムのごとく観客たちが国旗を振り、手拍子を送る。試合前とハーフタイムには観客たちがウェーブを作る。たいてい仕掛け人はヨーロッパから来た他の種目の代表選手たちだ。これはひいきのチームに関係なく、観客同士の一体感が楽しめる。WCGで観客がもっとも盛り上がるゲームがFIFAだといっていい。もちろんこれは、サッカーやバスケットボールなどのゲームは選手視点ではなく、観客の視点で作られているというゲームデザインの影響も大きい。プレイ中の画面はグランドスタンドから観戦している視点だし、コーナーキックではテレビ中継のようなフィールド脇の視点になる。ゲームプレイヤーよりも観客との親和性が高いゲームと言える。

 しかし、その一方で疑問も生まれる。チーム球技系のスポーツゲームは、Eスポーツタイトルとして適しているだろうか。球技系スポーツゲームはチームの複数プレイヤーをひとりで操作する。レーサーの視点のモータースポーツに比べると、かなりムリをしているような気がするのだ。野球ならピッチャーとバッターの1対1の構図があるからまだ解りやすい。しかし、サッカーやバスケットボール、ラグビー、バレーボールなどはどうだろう。これらのゲームはボールを追っている選手だけ操作可能で、他の選手はAIで動いている。AIの仲間と戦うチームプレイは公正なスポーツだと言えるのだろうか。

 実は筆者は、その部分で違和感を感じてチーム球技スポーツを敬遠していた。しかし、それから長い時間が経っており、ゲーム自体の表現や操作も進化しているかもしれないと思い、今回あらためて検証してみた。プレイしたゲームはコナミが海外向けに販売しているPC版の『Pro Evolution Soccer 6』。日本では家庭用ゲーム機向けに『ウイニングイレブン』として販売されている。これは今年のアジア室内競技大会の種目として採用されているゲームでもあり、アジアオリンピック評議会が認めたスポーツゲームというわけだ。

 ここから先はサッカーゲームどころかサッカーそのものにも疎い私の体験だ。そこを割り引いて読んで頂くとして、結論から言うと、やはりゲームとしては優れているけれど、スポーツと呼ぶには難しいと感じた。その理由をひとことで言うと、操作に直接感がない。勝敗に自分の意思やテクニックが正しく反映されていない気がする。これが意外と小さなストレスとなり、プレイ中に積み重なってくる。

 直接感がないもっとも大きな理由は、操作したい選手を自由に選べないことだ。ゲーム自体はとても親切に作られており、プレイヤーは11人の選手のうち、自分の意思で動かせる選手はひとりだけ。ただし、ゲーム中はボールにいちばん近い選手に自動的に切り替わるから、結果的に11人全部を操作できることになる。この「自動的に」という部分が自分の意思に反しているように感じた。プレイヤーはもっともボールに近い選手を常に操作したいわけではない。

 とくに私のような反射神経の鈍いプレイヤーは、乱戦の中、別の選手にフォーカスされても間に合わない。ライバルチームがドリブルで突っ込んでくるときは、隣でマークしている味方よりも、少しゴール側に下がった選手を前に出したい。ライバルがシュートしようとするなら、ディフェンスよりもキーパーを動かしたいのだ。なぜか私のチームはキーパーが前に出すぎる。もっとゴールに張り付いてもらいたい。こういったプレイヤーの好みを反映した切替が行われない。

 Pro Evolution Soccer 6の場合は、自動的に切り替わった選手が不服の場合、Qキーで選手を切り替えられる。これは親切に見えるけれど、やはり意中の選手に当たってくれる可能性は高くない。何度もQキーを押しているうちに時間は経ち、ボールはどんどん押し込まれる。選手のポジションは試合前や試合中に変更できるけれど、意中の選手が動かなければ試合への効果は間接的だ。これはとてもストレスのたまる状態である。

 しかし、ゲームとしては面白い。画面はきれいだし臨場感もある。慣れてくればボールの動きも追えるし、選手たちの動かし方もコツがつかめる。サッカー好きな人にとっては、観客の視点でフィールドを眺めつつ、選手の動きに関与できる感覚が楽しいに違いない。意外なところで味方がパスを受けてくれると嬉しいし、思ったところに味方がいないと悔しい。その嬉しさも悔しさも楽しさを盛り上げる要素だ。そこは理解できる。操作のダイレクト感は薄まるが、チームプレイをしていれば相手が常に思い通りに動くことはないわけで、むしろリアリティを高めていると言えるだろう。

 操作のダイレクト感が無くてストレスがたまる理由は、やはり射撃ゲーム(FPS)やリアルタイムストラテジー(RTS)に慣れてしまったからだと思う。射撃ゲームは自分の思い通りの位置に照準が動くし、リアルタイムストラテジーの兵隊たちは司令官に忠実である。Eスポーツは自分の動きや意思をデジタル化して交信し競技する。だからゲームのキャラクターたちはプレイヤーの操作に忠実であってほしい。AIの選手たちは、Eスポーツにとっては公平性を欠く存在になるかもしれない。この考え方は間違っているだろうか。

 もし、サッカーやバスケットボールをEスポーツにするなら、ひとりのプレイヤーがひとりのキャラクターのみ操作できるようにすることが理想だろう。サッカーなら1チーム11人で22人対戦、バスケットボールなら1チーム5人のプレイヤーが必要なゲームにする。ひとりで操作するゲームにするなら、フィールドを俯瞰して、マウスで一人ひとりの選手を操作できるRTSのスタイルがいい。シュートやパスのタイミングが重要な要素なら、ボールを持つキャラクター専門のプレイヤーと他のチームメンバーをRTS風に操作するプレイヤーの2名ひと組でチームを組む。つまり、すべてのチームメイトが人の意思で動く。これがEスポーツのあるべき姿だ。

 かつて「ZERO CUP」というサッカーゲームがあった。1チーム11人の22人同時対戦を実現したタイトルだ。いつのまにかサービスを終了してしまったようだが、まさにそれこそがEスポーツのあるべき姿だ。たぶんあれは時期尚早だった。バトルフィールドの32人対32人の対戦が日常的に行われるようになった今なら、11人対11人のゲームにだってチャンスはあるはずだ。クリエイターの皆さん、もう一度トライしてもらえないだろうか。世界的なEスポーツ文化の普及期に間に合えばビッグヒットのチャンスかもしれないぞ。

Pro Evolution Soccer 6のプレイ画像
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(杉山淳一@RBB)
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