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【GDC07】「Killer7」の須田剛一が語るゲーム哲学 ―既存のゲームの概念をブチ破れ!
3月13日
グラスホッパー・マニファクチュア 須田剛一氏
 コンソールではゲームの大作化が進み、携帯ゲーム機では知育系・ツール系が流行。個性的なゲームデザイナーにとっては「生きにくい」時代である。そんな中「シルバー事件」「Killer7」と尖った作風で知られる、グラスホッパー・マニファクチュアの須田剛一氏は、「名前で内容がわかる」数少ないゲームデザイナーの一人だろう。

 GDC最終日の9日(現地時間)、「Punk’s Not Dead」(パンクは死なない)と題して行われた講演は、須田氏のゲーム哲学を如実に示すものだった。そしてそれは「商業ゲームデザイナー」の重要性を説きつつも、作家性を失わないとする、高い志に彩られたものだった。

 長野市で生まれ育った須田氏は、高校卒業後に上京し、さまざまな職種を経験しながら、23歳でゲームメーカーのヒューマンに入社。プランナーとしてゲーム開発のキャリアをスタートさせた。98年に独立、グラスホッパー・マニファクチュアを設立後は、「シルバー事件」「花と太陽と雨と」など、独特のグラフィックセンスに彩られたアドベンチャーゲームをリリース。「Killer7」は全世界で発売され、欧米で熱烈な支持を得た。「サムライチャンプルー」などアニメ原作ゲームも開発。現在はアクションアドベンチャー「Nomore Heroes」を筆頭に、Wii用に3タイトルを開発中だ。

■ヒューマン時代
「ファイヤープロレスリング3」(PCエンジン)
「ファイヤープロレスリングスペシャル」(SFC)
「トワイライトシンドローム」(PS)
「ムーンライトシンドローム」(PS)

■グラスホッパー・マニファクチュア製作
「シルバー事件」(アスキー/PS)
「花と太陽と雨と」(ビクターインタラクティブソフトウエア/PS2)
「シャイニング・ソウル」(セガ/GBA)
「シャイニング・ソウル2」(セガ/GBA)
「ミシガン」(スパイク/PS2)
「Killer7」(カプコン/GC)
「サムライチャンプルー」(バンダイ/PS2)
「コンタクト」(マーベラスインタラクティブ/DS)
「Blood+ ワンナイトキッス」(バンダイナムコゲームス/PS2)

グラスホッパー社の理念
 グラスホッパー・マニファクチュアはディベロッパーのため、タイトルによってパブリッシャーが異なっている。共通しているのは「新規性」「オリジナル性」だ。スローガンは「コール・アンド・レスポンス」「クラッシュ・アンド・ビルド」そして「レッツ・パンク」。講演ではこのうち「レッツ・パンク」の内容について話された。

 「パンク」といえば音楽性を思い浮かべるが、須田氏に言わせれば「既存のゲームの概念をブチ破る、新しいゲームを作る姿勢」となる。コピーキャット(類似)ゲームや、暴力系ゲームばかりというのは、パンクではないというわけだ。かつては日本のゲームもパンク精神に溢れており、どんどん新しいジャンルのゲームが登場してきた。しかし、残念ながらここ数年は市場の縮小や保守化が進み、パンクには厳しい環境となっている。そこで広く世界に向けてゲームを作ることで、新しい挑戦を続けていきたい。それを通してゲーム業界に恩返ししたい。これが須田氏の考える「レッツ・パンク」だ。

 具体的なモノ作りの例では「シルバー事件」と「Killer7」の類似性について示された。前者はグラスホッパーのデビュー作。後者は初の全世界発売タイトルとなる。須田氏は海外を視野にゲームを開発する上で、「シルバー事件」のコンセプトを新しい技術で再度蘇らせた。それが「Killer7」だ。

 「シルバー事件」の12話構成と、「Killer7」の7話構成。これは共にオムニバス形式が採用された例だ。単にエピソードが繋がるだけでなく、前者では6話ずつ、表と裏のシナリオ構造が取られているのに対して、後者では表のアクション世界と裏のスクリプト世界という二重構造が採用されている。

 また既成の概念をうち破る意味では、「Killer7」の移動システムと「シルバー事件」の「Film Windows Engine」の例が上げられた。「Killer7」では、方向キーでキャラクターの移動方向を決め、Aボタンで移動する操作系になっている。これはテキストアドベンチャーの移動システムを映像で表現したもので、ゲームの操作に慣れていない人でも遊べるようにしたかったから。一方で「Film Windows Engine」は、グラフィックやテキスト、コマンド画面などを「ウィンドウ」で管理し、状況に応じてウィンドウの位置や大きさを変えたり、BGMと連動させるなどの新しいスタイルが用いられた。これには少人数でも開発しやすいシステムを作る意図によるものだった。

 他に「シルバー事件」と「Killer7」では、ともにアニメーションが多用されている。これはレンダリングムービーに限らず、あらゆる素材を再生したいという思いから。そのため前者ではアニメーションと実写映像が使われており、後者ではイギリスのアニメーションチーム「ユニットナイン」による映像が使われている。違う表現メディアと融合してモノ作りをする挑戦を通して、工程やマインドの違いなど、さまざまな事柄を学ぶことができたとした。

 開発体制については「仕様書を書かない」という、極めて日本的なスタイルを紹介。そのかわりにスタッフとブリーフィングを繰り返して、会話の中でゲームを作りあげるのが須田流だ。自ら「ドワーッとか、ビュワーっとか、擬音が多い」と自認する抽象的な指示を、チームのベテラン開発者が翻訳し、若いスタッフに伝えていく。そしてプロトタイプを作り上げ、パブリッシャー側のプロデューサーに提示。そこからさらに軌道修正を行って、次第に完成系に近づいていくという、極めて「インタラクティブ」なスタイルだ。

 このやり方を効率的に行うには、チーム間の人間関係、特にプロデューサーとの信頼関係が重要になる。社内スタッフならまだしも、社外の人間であるプロデューサーとは、寄って立つ位置が異なるからだ。それでなくともディレクターとプロデューサーは利害が対立するのが常である。そのため須田氏は会社対会社の関係ではなく、人間対人間のつきあいが最も重要だとした。

 「プロデューサーを信じることで我々はゲームを作れるし、彼らを信じることで、きっとそれは跳ね返って来るんです」(須田氏)。

 さらに須田氏は「たとえプロデューサーの言葉が会社の都合で「ねじ曲げられた」ものだったとしても、そう言ったのなら従うべき」だとする。そして「Killer7」開発時の、カプコン・三上真司プロデューサーとのエピソードを紹介しつつ、理想の関係が構築できたとした。「任天堂ハードということで、『Killer』をタイトルから外そうかと、三上さんに相談したんです。そしたら『タイトルを決めるのはディレクターの仕事だ!』と激怒された。『カプコン』や『三上慎司』という看板におもねるなって意味だったんですね。怒られたのはそれっきり。でも、とても印象に残っています」(須田氏)。

 またディレクターには「商業監督」と「作家監督」の2種類があるが、プロとしてゲームを作っていく以上、クライアントの指示を忠実に理解して作ることができる「商業監督」であるべきだとした。ただし他人の意見をそのままなぞって作るのは、ある意味で非常に楽な行為でもある。そのため商業監督に徹しながらも、それに甘えずに、作家監督の志を忘れてはいけないと強調した。「ぼくがいつも考えるのは、初期衝動に忠実にゲームを作るということなんです。最初にゲームに出会ったときのインパクトみたいなもの。その時のショックを、今でもゲームに反映させたいと思っています」(須田氏)。またディレクターは精神的にタフでなければならないとして、ユーザーから寄せられる、どんな批判も甘んじて受けとめ、吸収する姿勢が必要だとした。

新作「Nomore Heroes」(Wii)のトレーラー
 最後に須田氏は「No Game、No Life」、ゲームのない生活はつまらない、として「未来に向けてゲームを作っている姿勢」を示した。今の日本ゲーム市場は非常に保守的になっているが、これを解体して次のステップに進まなければならない。そのためにはパンクなゲーム開発が重要だ、というわけだ。さらに「シルバー事件」と携帯コンテンツの「シルバー事件25区」をニンテンドーDSに移植すること。さらにWiiで開発中の「Nomore Heroes」トレーラーを上映して締めくくった。

 須田氏の作風、さらには「パンク」と聞くと、どうしてもバイオレンスな内容や、前衛的なゲームを想像してしまうが、実際は「オリジナル」のゲーム開発という意味に近い言葉として使われている。その意味では「脳トレ」や「Wiiスポーツ」はパンクだが、後に続く無数のフォロワーはパンクではない、というわけだ。国内のディベロッパー自らがGDCで講演し、世界に向けて挑戦する姿勢を示したこともまた、非常にパンクに映ったのではないだろうか。
(小野憲史@RBB)
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