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★ Slash Gamesは、2007年6月1日より「インサイド」になりました
【GDC07】指向で異なる「PKの許容性」
3月9日
ソウル中央大学・魏晶玄教授
2004年のE3レポートで筆者は併設のパネルディスカッションを取り上げ、欧米と中韓のオンラインゲームパブリッシャーには共通の問題意識があることをレポートした。互いにお互いの市場で成功しづらいという点である。
その理由としてあげられたのが、ビジネスモデルとファンポイントの違いだった。ファンポイントとはゲームのどこに面白さを感じるかという概念。オンラインゲームにおけるファンポイントの違いとは、言い換えればユーザーニーズの違いだといえる。
その上で筆者は全世界でヒットする初のオンラインゲームが「ファイナルファンタジー(FF)XI」か、鳴り物入りでNCソフトに移籍した、リチャード・ギャリオット氏による「タブラ・ラサ」ではないかと推測した。しかし約3年が経過した今、「FF XI」はアジア圏でサービスしておらず、「タブラ・ラサ」に至ってはアメリカ市場を前提に再開発が進められている。実際に東洋と西洋の両方でヒットした初めての、そして今のところ唯一のタイトルは「World of Warcraft(WoW)」だった。
米サンフランシスコで開催中のGDCで7日(現地時間)、ソウル中央大学の魏晶玄教授が行った講演「虎の尾を捕まえる:なぜ韓国オンラインゲームはアジア市場で成功しているのか」も、「WoW」以外の欧米オンラインゲームがアジア圏で不発に終わっている理由を分析する内容だった。魏氏は中・米におけるユーザーニーズの違いを独自の研究調査を元に説明し、欧米パブリッシャーがアジア地域で成功するには、現地ニーズに適した開発を行うことが重要だと指摘した。
魏氏は2月に東京で開催された「アジアオンラインゲームカンファレンス(AOGC)東京2007」でも、前章的な内容の講演「なぜ欧米のオンラインゲームはアジア市場で沈没したのか」を行っている。こちらは「WoWが中・韓で成功した理由については、GDCでお話ししましょう」と締めくくられ、本講演でも前半部分はAOGCと重複する形で行われた。
AOGCでの詳細は過去のレポートを参照してほしいが、簡単にまとめると欧米のオンラインゲームが中韓で失敗したのは、両市場でのユーザーニーズが異なるにもかかわらず、欧米側がアジアのニーズに関心が乏しかったから、ということになる。「過程指向」の欧米に対して、中韓は「結果指向」であり、それを端的に物語るのがPKの許容性の違いというわけだ。
(左)米国人気ゲームランキング。日米3本のタイトルがランクイン、(中)韓国人気ゲームランキング。欧米産は「WoW」が3位にランクインしたのみ、(右)中国人気ゲームランキング。こちらは「WoW」が6位にランクイン
魏氏は中・米で行った調査研究に基づき、この根拠を明らかにしていった。ここでざっと紹介してみよう。まずPKの許容性については、中国ユーザーの91.3%が肯定的なのに対して、米国ユーザーでは65.3%が否定的。ゲーム選択の理由については、米国ユーザーがグラフィックとクエスト量を重視するのに対して、中国ではキャラクターやアイテムの多様性を重視すること。コミュニティ形成の理由については、中国ではゲームを有利に進められるからに対して、米国では友人作りが主な理由であること、などだ。
(左)PKの許容度。中・米の違いが明確化、(中)米ユーザーのゲーム選択理由、(右)中ユーザーのゲーム選択理由
またアイテム獲得の理由とBOTの利用頻度について、中国ユーザーの認識についても紹介された。前者については「レベルアップのため」と答えたユーザーが全体の7割近くを占め、後者については「常に使う」「よく使う」と答えたユーザーが6割近くに上る。BOTの許容性についても、「自由に使えるべき」「アカウント削除の理由にすべきでない」と考えるユーザーが6割に上るとした。こうした調査結果は西洋の関係者には非常に新鮮に映ったようだ。
(左)ユーザーの嗜好パターン。中米で両極化、(右)コミュニティに属する理由
またヒットゲームの理由については、AOGC同様にFPS「Special Force」と、バスケットゲームの「フリースタイル」について紹介。どちらも単純なFPSやカジュアルゲームではなく、階級やチーム要素をはじめ、コミュニティ性を重視したゲームシステムになっていることを示した。
話はここで「WoW」に移る。魏氏は「WoW」が唯一、中・韓で成功した理由について、こうしたアジア圏のユーザーニーズをつぶさに調査し、ゲームシステムに巧みに取り入れた結果だと指摘した。
コミュニティ性とレベルアップの競争性、クエスト重視とPK重視、パーティプレイとソロプレイといった、互いに矛盾する要素をうまく融合させただけでなく、「リネージュII」のペットシステムや、攻城戦・大規模戦争などの要素も取り入れ、うまくまとめ上げた。これがアジア圏でも受け入れられた理由というわけだ。開発元のブリザードが「ディアブロ」「スタークラフト」などの成功から、アジア圏のユーザーニーズを重要視し、つぶさに研究した結果だという。
魏氏は今後の可能性として、欧米ではコンソール市場が強いこともあって、今後はコンソール主導のオンラインゲームが拡大する可能性が強いが、PCに慣れたアジア圏では、今後もPCオンラインゲーム市場が中心となること。MMORPGや既存のカジュアルゲームに収まらない、新しいジャンルのゲームが登場するであろうこと。そして日本のアニメーションがディズニースタイルを念頭におきつつも、経済的な理由などから独自のリミテッドスタイルを作り上げたように、アジア圏でも独自のグラフィックスタイルなどをはじめ、ユニークな進化が期待できることなどを述べた。
(左)中ユーザーのアイテム獲得の主な理由、(中)中ユーザーのBOT利用頻度、(右)中ユーザーのBOTに対する許容度
その後、日本でもサービスが行われているMMORPG「熱血江湖オンライン」について、韓国エムゲームのディション・シン氏がプレゼンテーションを行った。「熱血江湖オンライン」は武侠をテーマにしたアクション風味のMMORPGで、アイテム課金のビジネスモデルを採用している。2004年11月から正式サービスがはじまり、現在では韓・中・日をはじめアジア10カ国で運営中。アニメ調のグラフィックテイストや、武器・コスチュームを初めとしたさまざまな種類のアイテム、「喜怒哀楽」などのキャラクターの感情が漢字ではっきりと表示された演出スタイルなどが特徴だ。
魏氏は「グラフィックやゲームシステムの点では欧米のゲームに見劣りするが、世界観やコスチューム、アイテムなどでは優れている」と述べ、これがアジア圏で広く受け入れられている理由とした。またアジア圏には独自の文化尊重に対するニーズが高いと述べ、欧米のオンラインゲームメーカーがアジア市場で成功するためには、アジアのディベロッパーを開発チームの一員に加えることも一つの方法だと示唆した。
(左)エムゲーム・ディション・シン氏、(右)「熱血江湖オンライン」ムービー
(小野憲史@RBB)
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