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「よいAIはゲームにフィットしたAI」IGDA日本・ゲームAI連続セミナー第1回
12月18日
三宅陽一郎氏(フロムソフトウェア)
 IGDA日本は、「ゲームAIを読み解く」と題したゲームAIに関する連続セミナーの第1回を12月16日に開催した。講師の三宅陽一郎氏(フロムソフトウェア)は、「グラフィックやメモリ管理などの技術と異なり、それぞれのゲーム性にあわせたゲームAIが求められるという特徴がある。ゲームAIについて、プログラマだけでなく企画の人間もある程度把握しておくことが必要」と述べた。

 第1回では、プレイステーション2用FPS「Killzone」(開発元Guerrilla 国内販売元SEGA)のゲームAIが講演の題材となった。KillzoneのAIは、世界表現に特徴がある。世界表現とは、「ゲームAIのプログラムコードが扱いやすいように、世界を数値化する」こと。この数値化された世界を使って、評価関数がどの選択肢が最適かを判断できる。

 FPSでは通常、NPCのコントロールのために、レベルデザイナーがマップにヒントを埋め込んだり、あるいはスクリプトで動きを書いたりするが、この場合、NPCの挙動がレベルデザイナーが想定した範囲内にとどまることや、マップが大きくなると手間がかかる。一方、KillzoneのAIは、マップをデザインすればNPCの挙動を特に設定しなくても、敵(プレイヤー)との間合いや射撃ポイントの確保、遮蔽物沿いの移動など、NPCが自ら位置取りをおこなえるように作られている。


Killzone AIについて

 ゲームAIにとって重要なのは、そのゲームのゲーム性をどのように実現するかだ。Killzoneでは、1つのマップにつき2000のウェイポイントが等間隔に配置されており、ウェイポイントがそれぞれ事前計算された8方向の可視距離をもっている(事前計算が必要なのは各ウェイポイントからの可視距離をレイキャストで算出するため。2000のウェイポイントで32KBのメモリを使用)。この可視距離情報を使って、隠蔽状況(相手から見えているか)や、相手を射撃可能かを判断する。AIは、自らの判断ロジックを逆に適用して、プレイヤーが自分に対してどう攻撃してくるかを予想もする。各ポイントの8方向の可視距離を使って不等式で判断する仕組みのため計算が軽いのが特徴で、彼我の位置が刻々変化するFPSでも非常に頭脳的な行動(相手がいそうな場所に手榴弾を投げ込む、出てきそうな場所に威嚇射撃を行うなど)をおこなえるという。


先行研究となる静的な位置検出(左)と、クロムハウンズのAIについて開発する三宅氏(右)

 KillzoneのAIには、先行研究として「静的な位置検出」があり、こちらは各ウェイポイントの地形情報を「局所的な性質」「グループとしての性質」「他のウェイポイントとの関係」「フォーカス(特定方角のみが開けているかどうかの情報)」として蓄積。狙撃ポイントに必要な情報を入れ込んだ評価関数がこれらの情報をもとにウェイポイントの評価値を算出する。この技術は重かったためFPSのリアルタイムAIとしては使用できなかったが、より軽量化した世界表現とアルゴリズムを実現することで、KillzoneのAIはPS2でも動作するようになっている。

 KillzoneのAIは、ゲーム性に根本的に関わる前提条件があり、「遮蔽物は破壊されない(破壊可能だとレイキャストをやり直す必要が出てくる)」、「敵と味方の大きさや能力が同等(能力やサイズが異なると同じ判定ロジックを逆に使って相手の行動を予測することができない)」という制限もある。

 三宅氏は、「狭めのエリアでNPCを賢く動かしたい」というコンセプトのAIを持つ「HALO2」や、「ゲームの進行に応じて変化する非常に広大なマップで、ハウンズが賢く行動させたい」クロムハウンズを比較対象として例示、Killzoneが「広大なエリアでNPCを動かす」ために適した作りであることを示した。

 ちなみに、三宅氏がAIを開発したクロムハウンズでは、マップ上の建物や橋が破壊可能な状況でハウンズを賢く行動させるため、ナビゲーションメッシュを採用。建造物が破壊されると、メモリ上のナビゲーションメッシュの状態が書き換えられ、あらたなパスが選択可能になる。クロムハウンズではマップのポリゴンデータをもとにナビゲーションメッシュを作成するプラグインを3Dツール上に開発、ポリゴンリダクションをかけたり、不具合が見つかれば手作業でポリゴンを追加したりといった調整を加えているという。

 続いて行われたディスカッションでは、AIを導入したゲームのアイディアなどが出し合われたりしたが、スクリプトとAIでどちらが低コストかは見極めが必要といった意見や、企画が求める「演出」をプログラマが提供する「AI」が必ずしも実現できないのでは、といった日本的な作り込みにおける不安も提示されていた。また三宅氏は、AIは精緻化させすぎると逆に不安定になるため、ロバストネス(堅牢性)を確保するためにはある程度おおざっぱ(Killzoneのウェイポイント「8方向」分割など)であることに意味があるとも指摘した。

 三宅氏の所属するフロムソフトウェアでは、週に1回、勉強会のようなかたちで企画やプログラマが集まり、AI活用のの可能性について討議しているという。ゲームAIは「動いて当たり前」的に扱われがちということだが、こうした会によって、企画の側のAIへの理解や、プログラマの側のAIへの企画者のニーズの理解が深まることが期待される。
(伊藤雅俊@RBB)
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