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★ Slash Gamesは、2007年6月1日より「インサイド」になりました
手作りのインタラクティブ作品あふれる、IVRC東京予選大会。1位通過作品は「まじかるSPLASH」に
9月19日
会場となった日本科学未来館。館長は宇宙飛行士の毛利衛さんだ
 今年もIVRC(International colleageate Virtual Reality Contest)の季節がやってきた。9月16日、17日と東京・日本科学未来館で開催されたIVRC東京予選大会。全国11チームが集結し、手作りのインタラクティブ作品で激突。審査日の16日は三連休の初日で晴天にも恵まれ、数多くの家族連れでにぎわった。昨年に続いて日本最大級のインタラクティブ作品展示会「インタラクティブ東京2006」も併催。研究者・作家による講演会「エンタテインメントコンピューティング2006」も行われた。

 IVRCは国際学生対抗バーチャルリアリティコンテンストの略称で、今年で第14回目を迎える、バーチャルリアリティ(VR)関連の作品コンテンストだ。テレビゲーム業界からもフロムソフトウェアが協賛している。これまでVR系やデバイス系の技術は、ゲーム業界としては業務用の大型筐体くらいしか接点がなかったが、ニンテンドーDSの大ヒットやWiiの発表で一気に身近になってきた。そもそも学生が限られた予算と期間の下、アイディアを絞って既存の技術を組み合わせ、新しい体験を提供する仕組みを作る、という行為はゲーム開発そのもの。技術と共に幅広い人材育成の苗場にもなっているのだ。

 IVRCのもう一つの特徴は世界に直結していることだ。東京予選を勝ち抜いた上位4チームは、11月に岐阜で開催される本大会に進む。そこで優勝したチームは世界最高のインタラクティブ技術展示の場、SIGGRAPH Emerging Technologiesへの出展・渡航サポートが受けられるのだ。昨年からは仏LavalVirtual学生コンテストとの交流も始まり、優秀作品の招待展示も行われている。さらに海外展示などを通して改良された作品は、翌年の「インタラクティブ東京」で凱旋展示されるのだ。学生が自分たちの作品で世界に挑戦できる、VR技術の良き登竜門だといえる。

(左)会場奥がIVRC東京予選会場。右手がインタラクティブ東京の展示スペース、(右)作品には審査ボードが設置されている。来場者は気に入った作品にシールを貼り、投票する仕組み

 IVRCの審査基準は大きく「新規性」「芸術性」「技術性」の3点。さらに伏兵となるのが「耐久性」だ。一般の芸術作品と違い、VR作品は実際に体験して鑑賞するインタラクティブアート。そのため不特定多数の鑑賞者が触っても壊れない、ある程度の耐久性が必要になる。さらに東京予選では、審査員の点数に加えて一般来場者の投票が大きな鍵を握る。子供からお年寄りまで誰もが参加でき、すぐに楽しめ、壊れない。これがどれほど大変か、モノ作りの経験者なら誰もがうなずくはずだ。今年の作品中でも残念ながら故障したり、うまく動作しないモノがあり、舞台裏でのさまざまなドラマを感じさせた(カッコ内はチーム名と学校名)。

●Planet of Grassland(Steppe/奈良先端科学技術大学院大学)

 触覚と3Dサウンドで生物の「気配」を感じ取る作品。天井からぶら下がっている紐や、床上の草デバイスをモーターで制御して揺れを表現。スピーカーから立体音響も流し、天井で何者かが動き回っているような気配を出す。モグラ叩きの感覚でうまく天井の紐を引っ張ると、目に見えない「生物」が落下し、床上を逃げ回る感覚を体験できる仕組みだ。残念ながら機械のトラブルで一部の機能が動作しなかった。

●ぐ〜るぐる(ザクノス/北陸先端科学技術大学院大学)写真05

 壺の中で棒デバイスをぐるぐるかき回すと、ビルや森林など、実際にはかき回すことができないモノをバラバラに分解し、混ぜ合わせられる。混ぜ棒は壺の中でロータリーエンコーダに繋がっており、制御基板を通してPCに回転動作を伝達。モーター制御で抗力も発生させている。スクリーン内の建造物などが破壊される様子には、AGEIAのPhysX物理エンジンが使用されており、リアルな感覚を表現している。

●あしゅら(アイアイオー/東京工業大学)

 両手・両足を使ってコントローラーを操作し、手が4本あるような体験ができる作品。コントローラーはワイヤーで空間上に配置されており、力学提示装置「SPIDAR」を通してPCに動作を入力。3D空間上での腕の動きに反映させる仕組みだ。コントローラーは移動させるだけでなく、手で握ったり、足の指で操作でき、3D空間上で物を掴んだり、受け渡しができる。脳のオーバーフロー感覚がおもしろい。

●Chew!Chew!MouthInterface(Technical Term/電気通信大学)

 チューイング(噛む)という新機軸のインターフェースを用いた作品。デバイスに設置された割り箸を歯で噛むとPCに信号が送られる。デバイス自体の動きを検知するジャイロセンサーや、両耳部分にスピーカーも設置されている。花火をモチーフにしたアプリケーションと合わせて展示されており、モニター内の獅子舞を首を振って移動させ、導火線を噛み締めると花火が打ち上がる仕組みだ。噛むというアクションがユニーク。

Planet of Grassland(Steppe/奈良先端科学技術大学院大学) ぐ〜るぐる(ザクノス/北陸先端科学技術大学院大学) あしゅら(アイアイオー/東京工業大学) Chew!Chew!MouthInterface(Technical Term/電気通信大学)
左から「Planet of Grassland」「ぐ〜るぐる」「あしゅら」「Chew!Chew!MouthInterface」

●まじかるSPLASH(水柱/北陸先端科学技術大学院大学)

 噴水を自在に操ることをモチーフとしたアート性の高い作品。5本の透明なパイプの前でセンサーバーを振ると、動きに合わせてパイプの中を水流が上下する。バーの動きは斜め上方に設置されたセンサーで認識され、PC上で動きを解析。パイプ下部に設置された噴水ユニットに信号が送られる。噴水ユニットには水中ポンプや流量調整器が設置されており、水量が調整される仕組みだ。見ていて涼しくなる夏向きの作品。

●Virtual Seesaw(SH Project/IAMAS)

 V字型に設置されたシーソーに2人でまたがると、前方のスクリーンに隣の体験者の顔が表示され、隣にいながら目の前でシーソーをしている感覚が味わえる。シーソーの前にはCCDカメラが設置され、体験者の上半身をキャプチャすると共に、背後の壁に設置されたマーカーを読みとり、位置の差分を検出してスクリーン上の背景を上下させる仕組みだ。ビルの屋上など、実際にはあり得ない状況でのシーソー遊びが楽しめる。

●らくがきえた(つーでぃー/奈良先端科学技術大学院大学)

 紙に描いた絵や模様をバーチャル空間内に表示させ、移動させたり、再び紙に取り込むなど、2Dと3Dの世界で相互に移動させられる作品。化学系塗料で紙にキャラクターなどを描いて挿入口に挿入すると、画像情報が読みとられると同時に、紫外線の働きで塗料が消え、紙から3D空間に移動した感覚が味わえる。キャラクターを紙上に戻す際も同様の手法で行うことができる。

●COGAME(MEGARAS/東京大学)

 プロジェクターを使って道のイメージを照射しながら、床の上を進むカメの模型をゴールへと導いていく。カメロボットに道を照射すると、カメは道に従って歩いていく。床の上におかれた障害物を避けながら、二人で道を繋げていく仕組みだ。床に投影された時の画面のゆがみは、プロジェクターに設置された加速度センサーで補正されている。プロジェクタはワイヤレスでPCと接続され、体験者は自由に移動できる。

まじかるSPLASH(水柱/北陸先端科学技術大学院大学) Virtual Seesaw(SH Project/IAMAS) らくがきえた(つーでぃー/奈良先端科学技術大学院大学) COGAME(MEGARAS/東京大学)
左から「まじかるSPLASH」「Virtual Seesaw」「らくがきえた」「COGAME」

●Sosiable Dining Table(I.C.D./豊橋技術課大学)

 テーブルの上に置かれたポットや皿とコミュニケーションできる作品。それぞれ下部に車輪と音センサー、ワイヤレス機能などが組み込まれ、テーブルの上をノックすると体験者の方を向いたり、移動したりする。キャリーも移動式で手を叩くと移動する仕組み。上方にはカメラが設置され、テーブル上のモノの位置関係や、ヒトの移動などをモニタリングしている。仮想的な社会をテーブル上で創出することが目的だ。

●新風感(新地下職人/京都大学)

 スクリーンに風を吹きかけることで、スクリーンに投影された月面上にバラを咲かせるという作品。水で湿らせたスクリーンに風を送ると、水分が蒸発して気化熱が発生。この温度低下をサーモグラフィで検出し、画像処理で風力と風向の算出を行う仕組みだ。単にバラを咲かせるだけでなく、風の向きで伸びる方向を変えたり、息を吹きかけてバラに色を与えることもできる。スクリーンに換気扇フィルターを使ったのがミソ。

●ビュー・ビュー・VIEW(Blue Elephant/電気通信大学)

 同じく画面に向かって風を送り、バーチャル世界とインタラクションできる作品。スクリーンには小さな穴が空いており、風が送られると背後にある風力計測ユニットが検知する。その情報をPCに送って3D世界を動かし、スクリーンに投影する仕組み。画面内には白い立方体が多数配置されており、風や息で吹き飛ばすことができる。スクリーン背後から風が体験者に吹き出すなどのリアクションもある。

Sosiable Dining Table(I.C.D./豊橋技術課大学) 新風感(新地下職人/京都大学) ビュー・ビュー・VIEW(Blue Elephant/電気通信大学)
左から「Sosiable Dining Table」「新風感」「ビュー・ビュー・VIEW」

 インタラクティブ作品はゲームと同じく触ってナンボなので、なかなか画像だけでは伝わらないと思うが、雰囲気は感じてもらえただろうか。個人的な印象では「まじかるSPLASH」が完成度で抜きんでいた。5本といわず100本くらい噴水ユニットを並べて、指揮者よろしく噴水のオーケストラを奏でてみたいと思ったほどだ。今年は新たに「風」を取り入れた作品が2つあったのも驚き。息を使った操作はDSやPSPのマイクデバイスですぐにでも実装可能だろう。ゲームと同じくVR作品においても、新しいインターフェースが新しい表現領域を開拓していくのである。

 IVRCでは昨年度から団体部門に加えて個人部門も復活した。昨年は2作品が岐阜本選で展示されたのみだったが、今年は東京予選で6作品も出展され、層の広がりを感じさせた。第1次審査のプレゼンテーション審査で惜しくも落選した作品も含まれている。もっとも、出展された作品は敗者復活とは呼べない、秀逸なモノばかりだった。

●KITAKAZE(小坂崇之/金沢工業大学)

 イソップ童話の「北風と太陽」をモチーフにした作品。体験者の頭の周囲にはぐるりとファンが設置されている。3D空間内でキャラクターを移動させると、キャラクターの向きや位置情報がPCを通してファンに送られ、常に背後から風が吹き付ける仕組み。キャラクターの位置によって波の音が聞こえてくる、などの仕様もある。

●CREATUREs:Tabby(植木淳朗/慶應義塾大学SFC)

 癒し系のさわれる照明器具。毛皮で覆われた風船状の物質の中にライトとファンが設置され、まるで呼吸しているように緩やかに膨らんだり、縮んだりしている。体験者は作品に触ったり、なでたり、押したりして楽しめるほか、部屋において照明器具として利用できる。ハイテクなことを何もしていないのがミソ。

●PhysicalTaligraphy(横山圭/岐阜県立情報科学芸術大学院大学)

 ディスプレイ上に直接タブレットペンで入力することで、花火のようなパーティクルを作成できる作品。画面をペンでなぞると、軌跡に従ってパーティクルが発生し、平面と空間の狭間で遊んでいるような体験ができる。ペンの圧力の強さで色が変わったり、手首につけたセンサーで仮想世界自体を左右に移動させられる。

●Crossing Colorful(小岩亮太/関西学院大学)

 テーブルの三方に設置されたマイクで声を入力すると、スクリーン中央に向かってさまざまな軌跡の模様が描き出される。模様同士が衝突すると新たな模様が発生したり、サウンドが鳴ったりと、万華鏡的な変化を見せる。音の大小で模様が変わるなど、音を光に変えた新しいコミュニケーションが展開される。

●百色園〜Variegarden(黒田利/多摩大学)

 デジタル枯山水。木箱の中には砂と水が入った浅い水槽があり、ここに石を載せると電磁石の働きで、水槽上にさまざまな砂模様が発生する。また石の位置はカメラで認識され、PCのモニター上に山水画として表現される。残念ながら電磁石関係にトラブルがあり、うまく作動できなかった。

●Empty Box(竹谷康彦/岐阜大学)

 デジタルのぞき箱。タブレットPCとCCDカメラが組み込まれた木箱を通して周囲を見渡すと、アイテムの色や形がトリガーとなって、さまざまなアクションが画面上に発生。見慣れた光景が変わって見える仕掛け。木箱を持って会場内を散策するなどの展示方法も考えられたが、規定によりテーブル上での展示に留まった。

KITAKAZE(小坂崇之/金沢工業大学) CREATUREs:Tabby(植木淳朗/慶應義塾大学SFC) PhysicalTaligraphy(横山圭/岐阜県立情報科学芸術大学院大学)
左から「KITAKAZE」「CREATUREs:Tabby」「PhysicalTaligraphy」

Crossing Colorful(小岩亮太/関西学院大学) 百色園〜Variegarden(黒田利/多摩大学) Empty Box(竹谷康彦/岐阜大学)
左から「Crossing Colorful」「百色園〜Variegarden」「Empty Box」

 ちなみに来場者の支持を最も集めたのは、個人部門の2作品だった。小岩氏制作の「Crossing Colorful」と、植木氏制作の「CREATUREs:Tabby」である。共にコンセプトの鮮やかさとパッケージングの巧さ、総合的な完成度で群を抜いており、体験者の波が途切れることはなかった。個人的にも「CREATUREs:Tabby」の、ハイテクなことをしていないという意外性にうならされた。複雑な機構を盛り込むのは簡単だが、コストがかさみ、壊れやすくなる。テレビゲーム的に言えば、足し算だけではなく引き算のデザインも重視したいところだ。審査員の目にはどのように映ったのだろうか。

 冒頭に述べたように、東京予選大会では最先端のインタラクティブ作品を集めた展示会「インタラクティブ東京2006」も併催された。昨年度の20作品に対して今年は全27作品と増加。IVRC2005で総合優勝し、SIGGRAPH Emerging Technologies 2006に出展された「bubble cosmos」と、岐阜VR大賞に輝いた「Powder Screen」(旧:Splash Fishing)も凱旋展示。実はSIGGRAPH Emerging Technologiesで入選するインタラクティブ作品の大半は、日本の企業や大学で制作されている。そのためここに来れば、わざわざSIGGRAPHに渡航しなくても同じ作品が鑑賞できるという、VR大国・日本ならではの展示だった。ここでは主な作品を紹介しよう。

●bubble cosmos(筑波大学)

 昨年度のIVRC総合優勝作品。シャボン玉の中に煙を入れ、CG映像の投影を可能にしている。シャボン玉を割ると画像認識で反応し、綺麗なサウンドが流れる仕組み。シャボン玉の発生頻度など細部に改良が加えられ、より安定して動作するようになった。

●Power Screen(東京工業大学)

 微少なパウダービーンズを床上のプールに敷き詰めた、CGスクリーンによる魚釣りゲーム。魚が釣れるとビーンズの中から魚の模型が飛び出してくる。模型の移動や釣り竿のラインなどには「あしゅら」と同じSPIDERが使われている。

●Morphovision(東京大学・NHK)

 高速回転する家の模型に、プロジェクターから照射されるスリット光を連続照射することで目の錯覚を呼び、堅い物体を柔らかく変化させたり、バラバラにして表示させる。スリットの形状を変えることで、さまざまな変化が楽しめる。

●Sharelog〜Suicaを用いたDigital Public Artにおけるインタラクション(東京大学)

 JR東日本で使用されているSUICAのデータを呼び出し、来場者の経路情報をディスプレイ上に表示する。多くの来場者が使用する駅はマーカーが大きくなる仕組み。SUICAの読みとり器には市販品が使われている。アイディアと組み合わせと見せ方の勝利。

●Imcompatible Block(九州大学)

 3Dによる積み木ソフトウェアだが、エッシャー風の騙し絵要素が自動的に加わる点がミソ。簡単操作でよく見ればちょっと不思議な世界が作れてしまう。独自の物理エンジンが実装されており、ワンクリックで積み木が崩れる点もおもしろい。

●Freqtric Drums(九州大学)

 複数の体験者をドラムセットを構成する各楽器に見立てて、相手の手や肌を叩いて音を鳴らすデジタル楽器。人体を流れる微弱な電流を利用し、有線の指輪センサーで機材と接続する。聴覚と触覚を同時に使い、演奏者と聴衆で新たな関係性を提供する。

bubble cosmos(筑波大学) Power Screen(東京工業大学) Morphovision(東京大学・NHK)
左から「bubble cosmos」「Power Screen」「Morphovision」

Sharelog〜Suicaを用いたDigital Public Artにおけるインタラクション Imcompatible Block(九州大学) Freqtric Drums(九州大学)
左から「Sharelog〜Suicaを用いたDigital Public Artにおけるインタラクション」「Imcompatible Block」「Freqtric Drums」

 それでは予選通過作品と順位を紹介していこう。予選審査は各審査員が5点満点で採点した得点数と、来場者による投票シールの合計点をベースに、全審査員の討議で決定される。審査のポイントはざっくりと言って「新規性」「技術性」「芸術性」の三角関数で、審査員はみなVR作品に一家言ある人ばかり。厳正なる協議の結果、「まじかるSPLASH」以下4作品が予選通過を果たした。また惜しくも予選通過はならなかったが、特別賞として明和電器賞に「新風感」が、フロムソフトウェア賞には「Chew!Chew!MouthInterface」が受賞。個人部門では最優秀賞はなしという結果になったが、芸術賞に「CREATUREs:Tabby」、技術賞に「Empty Box」が輝いた。

IVRC2006 東京予選 

チーム部門

■予選通過
1位:まじかるSPLASH/水柱/北陸先端科学技術大学院大学
2位:ビュー・ビュー・VIEW/Blue Elephant/電気通信大学
3位:COGAME/MEGARAS/東京大学
4位:ぐ〜るぐる/ザクノス/北陸先端科学技術大学院大学

■明和電気賞
新風感/新地下職人/京都大学

■フロムソフトウェア賞
Chew!Chew!MouthInterface/Technical Term/電気通信大学

個人部門

■最優秀賞
なし

■芸術賞
CREATUREs:Tabby/植木淳朗/慶應義塾大学SFC

■技術賞
Empty Box/竹谷康彦/岐阜大学

 今年の東京予選は個人部門作品のがんばりが印象的だった。日本VR学会の岸野文郎会長(大阪大)は、芸術賞を受賞した「CREATUREs:Tabby」を「(照明器具だが、生物的な要素もあるということで)現実の中にバーチャルな要素が入っている。どの程度VR的な技術が盛り込まれているかはわからないが、人の心を癒す良い作品だ」と高く評価した。逆に一番人気となりながら無冠に終わった「Crossing Colorful」は、完成度は高かったが新規性が薄かった、というところだろうか。しかし映画「ポケモン」シリーズのように、ヒットする作品ほど評論家は辛いのが常。なにより来場者の評価が作品の質を物語っているはずだ。

 一方で団体部門については、過去2年で見られたような企画のキレが若干乏しかった、かもしれない。予選通過できなかった作品の中には、コンセプトを絞りきれなかったり、アイディアを盛り込みすぎて制作時間が不足した物も多かったようだ。例年のことだが、IVRCで上位を狙うには(そしてヒットするゲームを開発するには)優れた進捗管理が不可欠だ。このことは予選を通過した4作品にも当てはまる。2ヶ月後の岐阜本選に向けて、東京予選で浮かんだ課題をどのように整理し、作品を改良できるか。東京予選と岐阜本選では毎年順位が大きく変動する。総合優勝そしてSIGGRAPHに向けて、ぜひとも頑張っていただきたい。

●まじかるSPLASH 柿原利政氏コメント

 予選で終わるだろうと思って全力疾走したので困りました(笑)。改良の余地はたくさんあります。ほとんどプロトタイプで持ってきたようなものですから。制作中はパイプから水が漏れたりして苦労しました。本選に向けては、来場者からの要望で多かった色の変化と、展示スペースの関係でできなかった、パイプの本数の追加したいですね。あとサウンド関係で厳しい指摘もありました。もう少し改良しなければならない部分です。ただ制作中にいろんな要素を付け加えてみたんですが、逆にマイナスに感じられたことも多くて、だんだん制作をしながら昔に戻っていった感じです。今のシンプルな良さを失わずに、どうやって改良できるかが難しいですね。本選でも優勝できるように頑張ります。

1位通過に輝いた「まじかるSPLASH」チーム水柱リーダー・柿原利政氏

●IVRC副審査委員長・武田博直氏(株式会社セガ)に聞く、東京予選の総括

−−審査の様子はどうでしたか?

武田:今年は上位4チームはすんなりと決まりました。ほとんど審査員の投票順で、大きな変動はありませんでした。1位で通過した「まじかるSPLASH」については、メンバーからもう限界でのびしろがない、なんて声も出ていましたが、ぜひ本選に向けてがんばってほしいですね。逆に予選通過できなかった作品は、特徴が出し切れていなかったものもありました。そんな中で明和電気さんとフロムソフトウェアさんが、特別賞でうまく作品を救ってくれたので、全体としては良かったんじゃないでしょうか。

−−個人部門が充実していたのが印象的でした。

武田:今年は告知期間が長かったので、良い作品が多く集まって良かったです。芸術賞については「CREATUREs:Tabby」ですんなり決まりました。もめたのは技術賞かな。どれもすばらしい作品ばかりでしたが、もうひとひねり欲しいという声が多かったですね。その中でも「Empty Box」が、バーチャルリアリティからミックスドリアリティ(複合現実感)といった、ネクストリアリティを示す作品として評価されました。会場内を歩いて体感する、という本来の意図が実現できなかった点も考慮された点です。

−−昨年と違い、一部で動作しなかった作品があったのは残念でした。

武田:技術レベル的に高い水準の物を狙ったため、逆にほころびが出てしまった、という感じでしょうか。その意味でも、ここ数年でずいぶん作品のレベルは向上してきました。下位に沈んだ作品の中にも、以前なら予選を通過していたと思われる作品もありましたし。やっぱりコンテストですから、目標の設定だけでなく、期間内でどれだけ作り込めるか、いわゆるプロダクトマネジメントが大切です。VR技術者の即戦力を養成するという、良い教育の機会になっていると思います。

−−ありがとうございました。

総評を述べるIVRC副審査委員長・武田博直氏(株式会社セガ)

(小野憲史@RBB)
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